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第一章

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頬を赤らめ、何か言いかけた女性を遮り、真啓は急いで言った。

「あ、じゃあ俺たちはここで!気をつけてくださいね。ほら、行くぞ」

若者の背中を押して強引にうながし、逃げるように改札を出た。

名残惜しそうにこちらを見つめていた女性は、再び深く頭を下げると、ホームの方向へ歩き去っていった。

今、超絶人気の若手俳優に雰囲気が似ている――特に凛々しい部分を切りとったような姿の若者を横目で見ると、真啓は小さく毒づいた。

「……女の敵」

すかさず首にしなやかな腕が回され、ぐいぐいとねじ上げられる。

「んー?何か言ったか?」

真啓は絡みついた腕と格闘してほどきながら、

「別に何も!」

と言い返す。

そのとき、腰のあたりに何かがぶつかって跳ね返り、たたらを踏んだ。

「うおっと」

下を見ると、色白な顔をした子どもが、黒目がちな瞳で見上げてくる。
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