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第一章
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真啓が牌を切ろうとしたとき、ひときわ甲高い悲鳴が上がり、店内がにわかに色めき立つ。
何事かと首だけで振り向いた真啓は、目をはっと見開いた。
わなわなと手を震わせ、髪は怒りに逆立っている。それでも、彼女がかわいらしいことに変わりはない。
レースとフリルがふんだんに使われた制服、薄く塗られたリップ。
「お姉ちゃんっ!!!」
鼓膜が破けそうなくらいの大声で叫んだのは、北王子里香その人だった。
一斉に不審と好奇の目が注がれる。真啓は慌てて席を立った。
「里香ちゃん。どうしてここに?」
だが、里香は真啓など目にも入らない様子でずかずかと雀卓に近寄り、
「久しぶりにラインくれたと思ったら……またこんな廃人の吹きだまりで時間潰して!」
廃人と評された面々が、不穏な感じでこちらを睨みつける。
この子の空気の読めなさは天才的だ。真啓は意味もなくへこへこと頭を下げた。
「すみませんすみません!うるさくしちゃってホント申し訳ない」
「おおーやっと来たか、里香」
公香は里香の肩を軽くたたいた。
「後はお前に任せた。私は先に帰るから」
「ちょっと待った!どういうことだよ、公香。約束が違うぞ」
真啓が食い下がったが、公香はものともしない。
「勝てたらって話だろ。今のお前じゃ私には勝てないよ」
真啓の点数棒も削りに削られて1万点ちょっとしかない。
「そうだけど……オーラスまでやってみないと分かんないだろ。っていうか、そういう話じゃなくて!!」
論旨をすり替えられている場合じゃない。真啓が口を開こうとすると、
「やめだやめだ」
三着の男がそっくり返って伸びをする。
「なめた真似しやがって。ふざけんじゃねえぞ」
四着の男も剣呑な顔つきで息巻いている。
公香はふっと鼻先で笑うと、
「逃げんのか?ま、よかったじゃねえか。真啓以下のお前らじゃ、私には絶対に勝てないだろうからな」
真啓は青ざめた。また挑発するようなことを言って!
「何だと?」
「事実を言ったまでだ。お前らごときじゃ私には勝てない。だから、代打ちに替わってやるって言ってるんだよ。お前らにとっちゃ好都合だろうが」
だがな、と眼光鋭く公香は言い足した。
「こいつは強いぞ。私以上に容赦がない。女子高生だと思ってなめてかかると痛い目見るぞ。……ま、私には及ばないけどな」
鞄を持って席代を置くと、公香は軽やかに歩き去っていく。
「お姉ちゃん。あたし受験生なんだよ。それを、こんなところに呼びつけて」
恨みがましく里香は言った。だが、もう卓の前に座っている。
やれやれと真啓は溜息をついた。
「悪い里香。後は頼んだ」
「仕方ないなあ」
里香は肩をすくめ、ウェーブのかかった髪をかきあげた。
「じゃあ、とっととすませちゃおっか。ね、有澤さん?」
「……何か俺、最高に嫌な予感するんですけど」
寒気がして全身が総毛立つ。
結局、勝負は里香の大三元で終局したのだった。
何事かと首だけで振り向いた真啓は、目をはっと見開いた。
わなわなと手を震わせ、髪は怒りに逆立っている。それでも、彼女がかわいらしいことに変わりはない。
レースとフリルがふんだんに使われた制服、薄く塗られたリップ。
「お姉ちゃんっ!!!」
鼓膜が破けそうなくらいの大声で叫んだのは、北王子里香その人だった。
一斉に不審と好奇の目が注がれる。真啓は慌てて席を立った。
「里香ちゃん。どうしてここに?」
だが、里香は真啓など目にも入らない様子でずかずかと雀卓に近寄り、
「久しぶりにラインくれたと思ったら……またこんな廃人の吹きだまりで時間潰して!」
廃人と評された面々が、不穏な感じでこちらを睨みつける。
この子の空気の読めなさは天才的だ。真啓は意味もなくへこへこと頭を下げた。
「すみませんすみません!うるさくしちゃってホント申し訳ない」
「おおーやっと来たか、里香」
公香は里香の肩を軽くたたいた。
「後はお前に任せた。私は先に帰るから」
「ちょっと待った!どういうことだよ、公香。約束が違うぞ」
真啓が食い下がったが、公香はものともしない。
「勝てたらって話だろ。今のお前じゃ私には勝てないよ」
真啓の点数棒も削りに削られて1万点ちょっとしかない。
「そうだけど……オーラスまでやってみないと分かんないだろ。っていうか、そういう話じゃなくて!!」
論旨をすり替えられている場合じゃない。真啓が口を開こうとすると、
「やめだやめだ」
三着の男がそっくり返って伸びをする。
「なめた真似しやがって。ふざけんじゃねえぞ」
四着の男も剣呑な顔つきで息巻いている。
公香はふっと鼻先で笑うと、
「逃げんのか?ま、よかったじゃねえか。真啓以下のお前らじゃ、私には絶対に勝てないだろうからな」
真啓は青ざめた。また挑発するようなことを言って!
「何だと?」
「事実を言ったまでだ。お前らごときじゃ私には勝てない。だから、代打ちに替わってやるって言ってるんだよ。お前らにとっちゃ好都合だろうが」
だがな、と眼光鋭く公香は言い足した。
「こいつは強いぞ。私以上に容赦がない。女子高生だと思ってなめてかかると痛い目見るぞ。……ま、私には及ばないけどな」
鞄を持って席代を置くと、公香は軽やかに歩き去っていく。
「お姉ちゃん。あたし受験生なんだよ。それを、こんなところに呼びつけて」
恨みがましく里香は言った。だが、もう卓の前に座っている。
やれやれと真啓は溜息をついた。
「悪い里香。後は頼んだ」
「仕方ないなあ」
里香は肩をすくめ、ウェーブのかかった髪をかきあげた。
「じゃあ、とっととすませちゃおっか。ね、有澤さん?」
「……何か俺、最高に嫌な予感するんですけど」
寒気がして全身が総毛立つ。
結局、勝負は里香の大三元で終局したのだった。
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