ウェルテルの陰謀 -美少女と美少年(?)に囲まれた俺の運命やいかに?ー

凪子

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第二章

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その夜、真啓は香田昇と名乗った若者に電話をかけていた。

昇は電話に出るなり、ぶっきらぼうに、

「君には会わないことにするよ」

不機嫌さを隠そうともしない声だった。

あれほど礼儀正しく、連絡をくれと懇願していた人物と同一とは思えなかった。

困惑したが、ここで引き下がるわけにはいかない。

「どうしてですか?あの手紙、やはりあなたが公香に送ったからですか」

「違うよ。不愉快だからだ。君のやり方が」

真啓は眉根を寄せた。

「やり方?どういうことですか」

「白々しい。弟を使って僕をこそこそ付け回すなんて。僕を疑ってるなら、堂々とそう言えばいい」

「弟?」

一瞬、不自然な間が生まれる。

「……とぼけようったって無駄だよ」

話がうまく噛み合わず、上滑りする。何ともいえず不気味な感じがした。

「何の話か分かりません。詳しく説明していただけませんか」

「説明も何も、僕の後ろをずっとついてきたんだよ」

「誰が?」

「だから、君の弟が。尋ねたら、お兄ちゃんに頼まれてやったと泣き出したよ」

「泣いた?」

真啓の脳裏に、弟の姿が浮かぶ。

由孝が?ありえない。

そもそも、弟と昇の接点など一切ない。

「君は一体何なんだ」

怒りのこもった言葉に、真啓は言い返した。

「待ってください。そいつ……俺の弟は何歳くらいでした?」

「今さら何を、」

「答えてください」

真啓の勢いに気圧されたのか、彼は渋々言った。

「小学生くらいだったよ。目が大きくて、大人しそうな」

耳が痛くなるほどの静寂が落ちた。

先ほどよりずっと重く長い沈黙に、ようやく疑問に思ったのだろうか、受話器の向こうでたじろぐ気配がした。

「俺には、」

声が上ずるのが隠せなかった。

「俺には弟がいます。けど、あいつは埼玉の実家に住んでて、当然あなたのことは知らない。それに、高校一年生です」

息を呑む音。

「何だって?じゃあ、あれは」

言葉はぶつりと途切れた。

真啓は背筋を這い上がる不気味な気配を感じ、思わず窓の外を見る。

そこは、底知れぬ闇に包まれていた。










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