女子高生占い師の事件簿

【１】ハーモニクス アストロジー

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そのとき、近くで悲鳴が上がった。

「誰か、誰か来て！警察を呼んで！！」

男の後ろで、誰かが金切り声で人を呼んでいた。

逆光で顔は見えなかったけれど、美蘭はすぐに誰だか分かった。

男はしばらく硬直していたが、舌打ちをして走り去っていった。

美蘭はそのまま、汚い地面にへたりこむように腰を下ろした。視界が変な具合にかすんでいる。

「大丈夫ですか？」

泣いているのだと気づいたのは、冷たい滴が頬を滑ったからだった。

膝をつき、美蘭の両肩を支えて、恵果が心配そうに見上げてくる。

柔らかな腕に抱きしめられ、美蘭は本当に久しぶりに声を出して泣いた。

悲しいのか、怒っているのか、嬉しいのかさえ分からなかった。

しばらくそうしていた後、美蘭は身じろぎして恵果の腕から離れた。

化粧は涙で崩れ、顔には痣。髪はぐちゃぐちゃに乱れ、服は土と血でさんざん汚れている。

我ながら悲惨だな、と思ったら逆に笑えてきた。

「ひどい顔でしょう」

美蘭は鼻声で言った。笑ってもいいわよ、と強がりで付け足す。

「いいえ」

恵果は温かく微笑んで首を振った。

握られた手から心が伝わる。

「美蘭さん、今までで一番、綺麗です」

美蘭は恵果の後ろに光が見えた気がして、目を細めた。

それは、美蘭の折れない誇りを守り、弱さや迷いさえ全て包みこむような、未来を照らす光だった。