女子高生占い師の事件簿

【２】リロケーション

40

恵果が鞄から取り出したのは、円に近い形が描かれ、それが等間隔に十二に区切られた面妖な用紙だった。

「はい。じゃあ生年月日と、産まれた時間と場所、どうぞ」

律が実家に電話して時間を聞き、恵果に告げた。

期待半分、疑い半分といった顔だ。

恵果はそれを聞くと、猛烈な集中力で何やらグラフを書き出した。

ぶつぶつと計算しては、線を引き、手を休めようともしない。

「凄ぇな」

こんな恵果の姿を、かつて見たことがあっただろうか。

霊をその身に降ろす巫女が、こういう表情をするのではないだろうか、と律は思った。

「俺も、間近で見るのは初めてだよ」

比呂も感心したように腕を組み、じっと恵果を見つめている。

信じられないことに、二時間が経過するまで、恵果は一言も発さず描き続けた。

「はい、終わり」

恵果は顔を上げ、窓の外の雲が薄紫に染まっていくのを見つめた。もう深夜というよりは黎明だ。

比呂は眠たげにスマホをいじっていたが、すぐに気づいて手を止めた。

「できたのか？サンキュな」

「どういたしまして」

恵果は立ち上がり、コップにウーロン茶を注いで一気飲みした。

あのとき二人が感じた、一種神秘的な雰囲気が雲散霧消している。

占いに関わっていないときは、恵果は本当に普通の少女だった。