女子高生占い師の事件簿

【２】リロケーション

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「何やってたんだ？こんな時間に」

穏やかに言ったつもりだったが、亜子は肩をびくりと震わせた。

その瞳に涙が浮かぶのが分かって、律は天を仰いだ。

昔からこうだ。亜子と話していると、小さな子供をいじめているような気分になる。

――恵果とは大違いだな。

胸の中で呟き、しわのない制服を着た華奢な体を見つめる。

年の頃は恵果と同じだ。たしか誕生日は六月だから、十六になったばかりだ。

それなのに、亜子はいつまでもなよなよしていて、怖がりで、泣き虫で。

律は亜子の相手をすることが、正直、苦手だった。

「学校で何かあったのか？」

亜子は激しく左右に首を振る。

「ごめんなさい。もう、二度と、しない、から……」

喉の奥で詰まったような泣き声が室内を満たした。

「二度としないって、俺をつけ回したこと？」

「……」

亜子はひっく、ひっくと泣き続けている。

律は頭をかいた。ともかく、宥めることが必要だった。話はそれからだ。

「なあ、亜子。怒ってないから、ゆっくりでいいから話してみな？泣いてるだけじゃ分からないだろ。お前のことが心配なんだよ」

律は辛抱強く言った。

尾行していた云々はともかく、女子高育ちのお嬢様が夜に制服姿で出歩くのはよくない。

亜子は顔を上げた。頬には涙の筋がきらきら光っている。

美蘭を見慣れているせいか、化粧っ気のない亜子の顔は新鮮だった。