女子高生占い師の事件簿

凪子

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【5】イベントチャート

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そのメールを見るやいなや、律はスマホと財布だけをポケットに突っ込んで、手ぶらで家を出た。

電車を使うことすらわずらわしく、タクシーを拾って大通りまで行く。

喫茶【オリオン】の前からガラス越しに店内を伺うと、ぼんやりと淡い照明の下、座っている恵果の姿があった。

「何だよ。いきなり呼び出しやがって」

律はあえて平静を装い、ぶっきらぼうな口調で言った。

随分久しぶりに見る恵果も、振り返っていつもどおりにっこりと笑う。

店内には律と恵果しかいない。

静寂は律にとってお馴染みの、心地のよいものだった。

恵果は絶対に適当な言葉や投げやりな相づちを使わない。いつだって丁寧に言葉を選ぶ。

口数が少ないというわけではないけれど、そのせいで会話に間が生まれることはしょっちゅうだ。

最初は随分と気まずく感じたものだが、今では恵果が口を開くのを待つだけの心の余裕ができた。

「叔母さんと加奈子に、何かあったのか?」

恵果はかぶりを振った。

「お願いがあるの、りっちゃん」

恵果はいつになく真摯な眼差しを投げかける。

「りっちゃんが、ここの用心棒を買って出てくれたとき、嬉しかった。お金で用心棒を雇っても、それ以上のお金を積まれれば寝返るのが人間よ。なのにりっちゃんは裏切らなかった。約束を守ってくれた」

律は苦笑した。

「言ってる意味が分からん。ゆっくり話してみな」

恵果に近づき、その顔を覗きこんで、そして言葉を失った。

自分の動揺が顔に出て、その自分の顔を見た恵果にもはっきりと伝わったことが分かった。

恵果は、何もかもを取り払った、年相応の顔を見せていた。

不安げで、頼りなげで、自信など欠片ほどもない顔を。こんな顔をした恵果を、律は初めて見た。

「これまでのことで分かった。りっちゃんは人を守るための嘘はついても、人を傷つける嘘はつかない人だって」

「嘘はつかないんじゃなくて、つけないんだよ」

まぎれもない本音を言っただけだが、それを聞いた恵果の顔が泣きそうに歪むのを見て、心底うろたえた。

これは誰だ?

誰かの支えがなければ立っていられないほど弱い、この少女は一体誰なのか。

「お兄ちゃんは、自分の身は自分で守れる。だから、りっちゃんに頼みたいの。
これから、何があってもずっと、みどりさんと加奈ちゃんを守ってほしいの。この店を見ていてあげてほしいの。
藤森と無関係な、第三者のあなただからこそ頼めるの」
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