女子高生占い師の事件簿

【５】イベントチャート

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比呂は目を細めた。

佐伯恵果という少女の前に広がる、孤独な道が見える気がした。

その細腕で数えきれないほど多くの人を救う、本物の占い師。

だが彼女は、彼女自身を救うことは決してできないのだ。

「あなたとお芝居するの、なかなか楽しかったわ」

恵果の言葉に邪気はない。

だが、もう比呂の名を呼ぶことはないのだろう。

マンションを訪れ、恵果の顔をみたあの瞬間、比呂は確信していた。

「俺もだよ」

寂しいような、懐かしいような、不思議な感情が比呂を満たしていた。

騙していたにも関わらず、責めもしない恵果が、自分は愛おしいのかもしれなかった。

「じゃあね」

背を向けた恵果に、比呂は反射的に言った。

「一つ聞いていいかな」

恵果は足を止める。寒空に鳥が甲高くさえずっているのを見上げながら。

比呂は息を吸って尋ねる。自分でも驚くくらい穏やかな声が出た。

「もし、叔母とか甥とか関係なく、普通に出会ってたら……俺たち、恋人になってたと思う？友達になってたと思う？」

比呂らしくない発言に、恵果は目を細めた。

比呂は、『もし』なんていう、不確かな言葉は使わない人間だった。

答えてくれなくても構わない。比呂は思った。

自分が、どんな答えが返ってくるのを期待しているのかさえ分からなかった。

再び振り向いた恵果は、静かに首を横に振った。どちらでもない、と言うように。

その表情は、微笑んでいるのに切なく、息を飲むほど鮮やかだった。

比呂が今まで見た中で、最も恵果を美しいと感じた瞬間だった。

優しい声が、風に乗って比呂の耳に届く。

「……やっぱり、敵になってたと思うわ」