ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

文字の大きさ
4 / 133
本編

3

しおりを挟む
「今日帰国されたの?」

「ううん、昨日。今日は一日お休みで、晩ご飯一緒に食べる約束してるの」

「そう。よかったね」

と言うと、友子は私の箒を取り上げた。

「ごみ片づけとくから、もう行っていいよ」

「友子……ありがとう~!」

思わず抱きつくと、友子は「きゃっ」と身をすくませた。

周りにいたクラスメイトたちが、ぎょっとした顔でこっちを見ている。

「もう、舞ったら!」

腕を放すと、友子は真っ赤になっていた。

そんな様子が可愛らしくて、私はにやにや笑う。

「また明日ね」

「うん、お疲れさまー」

下校時刻を少し過ぎた時間帯で、まだ廊下や校舎内には生徒の姿も多い。

人波をすり抜けるようにして、私は階段を降り、昇降口に向かった。

「うわぁ……」

思わず声を上げて立ち止まる。

満開の桜が風に舞い散り、薄紅色の花弁が空中に優雅な軌道を描いている。

西の空には暮れなずむ茜色の光と、夜を予感させる紫の光が淡く溶け合い、幻想的な光景が広がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

トランスファは何個前? Watch your step.

梅室しば
キャラ文芸
【たった一つの窓に映る彗星を巡り、利玖と古の神々の思惑が交錯する。】 熊野史岐が見つけた湖畔のカフェ「喫茶ウェスタ」には美しい彗星の絵が飾られていた。後日、佐倉川利玖とともに店を訪れた史岐は、店主の千堂峰一に「明日なら彗星の実物が見られる」と告げられる。彗星接近のニュースなど見当たらない中、半信半疑で店を再訪した二人は、曇り空にもかかわらず天窓に映った巨大な彗星を目の当たりにする──。 ※本作はホームページ及び「pixiv」「カクヨム」「アルファポリス」「エブリスタ」「小説家になろう」「Tales」で掲載しています。

優秀過ぎてSSランク冒険者に任命された少女、仕事したくないから男装して学園に入学する。

コヨコヨ
ファンタジー
 キアスは優秀過ぎる女冒険者として二年間のあいだ休みなく働く日々を送っていた。そんな中、魔王の調査と王国初となるSSランク昇格の話が……。  どうしても働きたくなかったキアスはギルドマスターを脅迫し、三年間の休暇を得る。  心のバイブルである男と男のラブロマンスを書きたくて仕方がなかったから、男装して男子しかいない学園に入学した。ついでに、師匠との鍛練と仕事で失われた平穏な日々を過ごしたい。

エレメンタル・アカデミア 〜星詠みの教室〜

佐那ともたろう
ファンタジー
魔法と科学が融合した近未来都市に存在する、選ばれし若者が集う学園「星詠みのアカデミア」。そこでは、古代から伝わる「星詠みの力」を現代の技術と組み合わせ、「元素魔法」として扱う方法を学んでいた。主人公、ソラは、幼い頃に両親を謎の事故で失い、星詠みの力は全く開花しない落ちこぼれとしてアカデミアに入学する。しかし、入学式の夜、学園の地下深くで起こった異変をきっかけに、彼の中に眠る未知の力が覚醒し始める。それは、既存の元素魔法とは全く異なる、世界の理を覆す可能性を秘めた力だった。

夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。 ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。 翻弄される結城あゆみ。 そんな凌には誰にも言えない秘密があった。 あゆみの運命は……

ふわふわタンポポ少女を救いたい!

true177
恋愛
『生きとし生けるもの、全部一生懸命生きてるんだよ?』  自暴自棄でタンポポに八つ当たりしていた航生(こうき)は、優希(ゆき)の言葉で我に返った。  彼女の純粋さは、全世界の誰にも負けない。そう確信した航生は、タンポポ大好き少女の優希を守るために日々奔走することになり……? ※毎日連載です。内部進行完結済です。 ※小説家になろうでも同一作品を投稿しています。

〔完結済み〕カエルの大学 ✕ 世界のマホウ

弥良ぱるぱ
ライト文芸
『学徒の自由な学びには、“自分探し”が付き物だ』 ――世界魔法 それは世界と繋がることで、あらゆる願いも現実化する便利な代物。 しかし発動に具体性が欠けた場合は“失敗”する危険も孕んでいた。 そんな魔法を教え授ける大学街ルパラクルにやってきた主人公、コルダ。 彼女の夢はいつしか独自魔法を創造し、卒業することだった。 学徒生活を謳歌していたある日のこと、不意に訪れた図書館内で“生の人皮装本”に呼び止められる。 『大切な人を探して欲しい』と。 怪しい本の懇願に初めは抵抗するコルダだったが、体の自由を奪われてしまい止む無く手伝わされる羽目に。 とはいえ、やっていることはただの“窃盗”。 それも“絶禁本の窃盗”である。 発覚すれば学徒の立場はおろか、大学街から追放されてもおかしくはない。 コルダは果たして無事に卒業することが出来るのだろうか……。

「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、魔力を持たないという理由で、夫である侯爵エドガーから無能な妻と蔑まれる日々を送っていた。 魔力至上主義の貴族社会で価値を見いだされないことに絶望したアリアンナは、ついに離婚を決断。 多額の慰謝料と引き換えに、無能な妻という足枷を捨て、自由な平民として辺境へと旅立つ。

処理中です...