ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

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連れていかれたのは、高級ホテルの上層階にあるフレンチレストランだった。

「こんなとこ来るんだったら、先に教えてよ……! もっとちゃんとした格好してきたのに」

「大丈夫、大丈夫。誰もお前のことなんか見てねーから」

爽君は私の頭をぽんぽんと手のひらで叩く。

私はむっとしてそれを払いのけた。

紘ちゃんは緊張よりも好奇心が勝ったのか、物珍しそうに店内を見回している。

案内されたのは窓際の、夜景がよく見える席だった。

ネオンが宝石の粒のように輝く夜の街。流れる川と、桜が煙るように咲いているのが見渡せる。

「綺麗……」

ウェイターが「お飲み物は何になさいますか」と尋ねてくると、爽君は「ワインを」と言い、リストを見ながら慣れた様子で決めていく。

私はグレープフルーツジュースを、紘ちゃんはミネラルウォーターを頼んだ。

「そうか。お前ら、まだ未成年だったな」

「そうだよ」

「紘二、お前誕生日いつだった」

「七月二十四日」

爽君の目が鋭く細められる。

彼から紘ちゃんに声をかけるのは、この会話が初めてではないだろうか?

「私はこの間だったよ、四月五日」

「……何だよその手は」

爽君は嫌そうに眉を寄せる。

私はにっこり笑うと、再び手を差し出した。

「プレゼント」

「飯連れてきてやったろ?」

「このディナーは七年ぶりの再会のお祝いだもん。私の誕生日のお祝いとは別でしょ?」

「ガキのくせに憎まれ口だけは一人前だな」

「それはこっちの台詞。爽君だって背だけ伸びたくせに、中身コドモのまんまじゃん」

「何だと? お前このハンサムでクールな大人の男性に向かって――」

「まあまあ。二人ともその辺にしない? 前菜来たみたいだよ」

私たちの言い合いをよそに、ウェイターは業務用の笑顔を浮かべたまま給仕を行う。

気恥ずかしさで顔が赤くなった。
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