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本編
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一日が過ぎ、二日が過ぎ、一週間が過ぎ、二週間が過ぎた。
私から連絡することはできない。
その間も、何度かあの夢を見ることがあった。
作り物のように美しい世界の、夢。
――ディエス・イレが近い。
何度も声が呼びかけてくる。
でも、それが誰なのか、何を意味しているのかは分からない。
相談したくても、爽君のカウンセリングはもう受けられない。
「暑っついね~」
「ねー、もう半袖でよくない?」
昇降口のところで、女子生徒たちが話す声が耳に入り、私は空を見上げた。
ピンク色の桜並木は、エメラルドグリーンの新緑に着がえている。
汗ばんだシャツが体に張りつく。
確かに、今日は蒸し暑い。
もう五月も残り数日、湿った空気は梅雨の訪れを知らせようとしていた。
【舞、元気? どうしてるかなと思って連絡したよ】
紘ちゃんからのラインだった。
私は紘ちゃんとも連絡を絶っていた。
別に紘ちゃんと気まずくなったわけではないけれど、何となく、そうしたほうがいい気がしたのだ。
【元気だよ。ありがとう。紘ちゃん、怪我の具合はどう?】
【俺も元気だよ~ やっと包帯も取れたし】
【そっか、よかった】
スタンプを送ろうとする指が止まる。
(爽君が紘ちゃんを殺そうとした……)
多分まだ、紘ちゃんは警察に通報していない。
大好きな幼馴染である爽君が、逮捕されるのを見たくないのだろう。
(私は、どうするべきなんだろう)
警察に通報する?爽君から話を聞く?
それとも、紘ちゃんの話だけを信じて、爽君と距離を置く?
(全部嫌だ)
どの選択肢を選んでも、納得できそうもない。
私から連絡することはできない。
その間も、何度かあの夢を見ることがあった。
作り物のように美しい世界の、夢。
――ディエス・イレが近い。
何度も声が呼びかけてくる。
でも、それが誰なのか、何を意味しているのかは分からない。
相談したくても、爽君のカウンセリングはもう受けられない。
「暑っついね~」
「ねー、もう半袖でよくない?」
昇降口のところで、女子生徒たちが話す声が耳に入り、私は空を見上げた。
ピンク色の桜並木は、エメラルドグリーンの新緑に着がえている。
汗ばんだシャツが体に張りつく。
確かに、今日は蒸し暑い。
もう五月も残り数日、湿った空気は梅雨の訪れを知らせようとしていた。
【舞、元気? どうしてるかなと思って連絡したよ】
紘ちゃんからのラインだった。
私は紘ちゃんとも連絡を絶っていた。
別に紘ちゃんと気まずくなったわけではないけれど、何となく、そうしたほうがいい気がしたのだ。
【元気だよ。ありがとう。紘ちゃん、怪我の具合はどう?】
【俺も元気だよ~ やっと包帯も取れたし】
【そっか、よかった】
スタンプを送ろうとする指が止まる。
(爽君が紘ちゃんを殺そうとした……)
多分まだ、紘ちゃんは警察に通報していない。
大好きな幼馴染である爽君が、逮捕されるのを見たくないのだろう。
(私は、どうするべきなんだろう)
警察に通報する?爽君から話を聞く?
それとも、紘ちゃんの話だけを信じて、爽君と距離を置く?
(全部嫌だ)
どの選択肢を選んでも、納得できそうもない。
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