ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

99

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「ねえ、さっきの話……どこから聞いてたの?」

「いちいち聞かなくても、何を話してたかは分かる。由記もディエス・イレには詳しいからな」

(やっぱり本当なんだ……)

ただ、摂理というのが気になった。

「でも、どうして人は滅びなくちゃならないの?それに前世ってことは、私たちはディエス・イレを経験したことがあるってことだよね?一度だけじゃなく、二度もディエス・イレを起こす必要があるって」

「一度や二度じゃない。今まで数え切れないほど、この世界は滅びと再生を繰り返してきた。そのたびに、お前や紘二のような人間がいて、役割を果たしてきた」

「役割?」

「そう。鍵と、それを封じる者」

聞き覚えのある単語に、耳がぴくりと動いた。

そのまましばらくの間、爽君は黙っていた。

「爽君……?」

(眠っちゃったのかな)

仕方がない。大変な一日だったのだから。

「否定しないんだな」

突然、声が聞こえてきて、私はつんのめった。

「起きてたの」

「起きてるよ。この状況で寝れるかっつーの」

ぼそりと爽君は呟き、私の体を引き寄せた。

胸に顔を押し当てると、体温と鼓動がはっきりと感じられる。

「痛くない……?」

「痛くない痛くない」

安心させるように言われ、私は息をついた。

傷はきっと深いだろう。体の傷よりも、多分、心の傷が。

「今日はもう休んだら?明日またお話しようよ」

「……まだ信じられないんだよ。お前が」

息を継いで、うめくように爽君は言った。

「前世のことを、ディエス・イレのことを、俺の言葉を信じてくれるのが」

鋭い痛みが胸を貫き、私は言葉を失った。
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