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本編
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「ディエス・イレを起こせなかった『鍵』は、消滅してしまうんでしょう?そしてディエス・イレを起こせたとしても、役割を終えて死んでしまう。だから、紘ちゃんは何も選ばずに摂理の言いなりになってる」
でもね、と私は言い置いて、顔を上げた。
「本当は選べるんだと思うの。自分の道を、自分の意志で。それを私に教えてくれたのは、爽君だよ」
爽君は目をみはった。
「爽君は、カウンセラーになることを選んだじゃない。自分の前世と向き合って、今を変えていこうとしたじゃない。私、毎晩ディエス・イレの夢を見たり、声が聞こえるのが怖かった。でも爽君のおかげで、自分を取り戻すことができたの。前世と同じ道を辿る必要はないって思えたんだよ」
「……俺は前世に囚われてたよ。今だって、ディエス・イレが怖い。お前を失うのが怖い」
「でも、ちゃんと好きになれたでしょ?マイアじゃなくて、私を」
そう言うと、爽君の耳が赤く染まった。
「何馬鹿なこと言ってんだ、お前」
「爽君がカウンセラーを選んだのは、前世から解放されたかったからだよ。前世と同じ道を辿ろうとしたなら、王様らしく起業とかしてたんじゃない?」
そう言われて、爽君ははっとしたようだった。
「……そうかもな」
「私も、ちゃんと爽君のこと好きになったよ。だから、もし紘ちゃんが私を殺そうとしても、大人しく殺されたりしない。ただ、もう一度会って話したいの」
じっと爽君の瞳を見つめ、十秒ぐらい沈黙すると、爽君は突然手を振った。
「あーやめろやめろ!その目で見つめてくんな。お前、俺がそれに弱いと思ってやってんだろ」
「あ、ばれた?」
えへへと笑うと、頭を優しく叩かれた。
「……仕方ねーな」
爽君は溜息をつくと、顔を上げてきっぱりと言った。
「分かったよ。ただし、条件がある」
「何?」
「俺も一緒に行く」
私は微笑み、爽君の手をつないだ。
「うん」
でもね、と私は言い置いて、顔を上げた。
「本当は選べるんだと思うの。自分の道を、自分の意志で。それを私に教えてくれたのは、爽君だよ」
爽君は目をみはった。
「爽君は、カウンセラーになることを選んだじゃない。自分の前世と向き合って、今を変えていこうとしたじゃない。私、毎晩ディエス・イレの夢を見たり、声が聞こえるのが怖かった。でも爽君のおかげで、自分を取り戻すことができたの。前世と同じ道を辿る必要はないって思えたんだよ」
「……俺は前世に囚われてたよ。今だって、ディエス・イレが怖い。お前を失うのが怖い」
「でも、ちゃんと好きになれたでしょ?マイアじゃなくて、私を」
そう言うと、爽君の耳が赤く染まった。
「何馬鹿なこと言ってんだ、お前」
「爽君がカウンセラーを選んだのは、前世から解放されたかったからだよ。前世と同じ道を辿ろうとしたなら、王様らしく起業とかしてたんじゃない?」
そう言われて、爽君ははっとしたようだった。
「……そうかもな」
「私も、ちゃんと爽君のこと好きになったよ。だから、もし紘ちゃんが私を殺そうとしても、大人しく殺されたりしない。ただ、もう一度会って話したいの」
じっと爽君の瞳を見つめ、十秒ぐらい沈黙すると、爽君は突然手を振った。
「あーやめろやめろ!その目で見つめてくんな。お前、俺がそれに弱いと思ってやってんだろ」
「あ、ばれた?」
えへへと笑うと、頭を優しく叩かれた。
「……仕方ねーな」
爽君は溜息をつくと、顔を上げてきっぱりと言った。
「分かったよ。ただし、条件がある」
「何?」
「俺も一緒に行く」
私は微笑み、爽君の手をつないだ。
「うん」
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