ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

128

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もう話し合いの余地はない。

このまま行けばディエス・イレは確実に起こり、世界は滅びる。

紘ちゃんを止めれば、紘ちゃんだけが消えて、私たちは生き残ることができる。

(でも……)

摂理なんて怖くない。運命なんて関係ない。

そんな実態のないものに縛られているわけじゃない。

「でもね、爽君。私……」

爽君の手が肩に回り、優しく抱き寄せられた。

「私……紘ちゃんを……」

言葉の代わりに涙が溢れ、私は嗚咽していた。

爽君は私の背中をさすり、「うん、うん」と何度も頷いた。

まるで私の言わんとしていることを汲み取ったかのように。

私は紘ちゃんを殺せない。殺したくない。

まるで駄々っ子だ。でも、何度心の中を探しても、それ以外に言葉が見つからなかった。

(大切な幼馴染なの。ずっと一緒にいたの。たとえ紘ちゃんを止めることが、世界を救うことだとしても……)

爽君の温かい、優しい手がぽんぽんと背中を叩き、頭を撫で、しっかりと抱きしめられる。

世界一安心で安全なこの場所で、私はしばらく声もなく思う存分泣いた。

ようやく泣き止むと、涙と鼻水で顔ががぴがぴだった。

でも、今度は爽君は笑わなかった。

「俺はお前に、お前のままでいてほしい」

ハンカチを取り出して、私の顔を拭いながら言う。

「お前が紘二を止めないというなら、俺はそれを受け入れる。ディエス・イレのことだけじゃない。今までもこれか
らも、舞がするどんな選択も支持するよ」

いつもの憎まれ口を叩き、不敵に笑う爽君とは別の、大人の男の人の顔だった。

(私……この人と結婚するんだ)

先日プロポーズされたときは実感が湧かなかったけれど、今になって急に現実味を帯びて感じられた。

何だかとても気恥ずかしくて、でもとても嬉しい。

「それが俺の答えだ」

「爽君、ありがとう」

私は爽君の手を両手で取って、握りしめた。

この人と一緒に生きていきたい。

何よりも強く、強くそう思った。

――それが、私の答えだった。











































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