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本編
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もう話し合いの余地はない。
このまま行けばディエス・イレは確実に起こり、世界は滅びる。
紘ちゃんを止めれば、紘ちゃんだけが消えて、私たちは生き残ることができる。
(でも……)
摂理なんて怖くない。運命なんて関係ない。
そんな実態のないものに縛られているわけじゃない。
「でもね、爽君。私……」
爽君の手が肩に回り、優しく抱き寄せられた。
「私……紘ちゃんを……」
言葉の代わりに涙が溢れ、私は嗚咽していた。
爽君は私の背中をさすり、「うん、うん」と何度も頷いた。
まるで私の言わんとしていることを汲み取ったかのように。
私は紘ちゃんを殺せない。殺したくない。
まるで駄々っ子だ。でも、何度心の中を探しても、それ以外に言葉が見つからなかった。
(大切な幼馴染なの。ずっと一緒にいたの。たとえ紘ちゃんを止めることが、世界を救うことだとしても……)
爽君の温かい、優しい手がぽんぽんと背中を叩き、頭を撫で、しっかりと抱きしめられる。
世界一安心で安全なこの場所で、私はしばらく声もなく思う存分泣いた。
ようやく泣き止むと、涙と鼻水で顔ががぴがぴだった。
でも、今度は爽君は笑わなかった。
「俺はお前に、お前のままでいてほしい」
ハンカチを取り出して、私の顔を拭いながら言う。
「お前が紘二を止めないというなら、俺はそれを受け入れる。ディエス・イレのことだけじゃない。今までもこれか
らも、舞がするどんな選択も支持するよ」
いつもの憎まれ口を叩き、不敵に笑う爽君とは別の、大人の男の人の顔だった。
(私……この人と結婚するんだ)
先日プロポーズされたときは実感が湧かなかったけれど、今になって急に現実味を帯びて感じられた。
何だかとても気恥ずかしくて、でもとても嬉しい。
「それが俺の答えだ」
「爽君、ありがとう」
私は爽君の手を両手で取って、握りしめた。
この人と一緒に生きていきたい。
何よりも強く、強くそう思った。
――それが、私の答えだった。
このまま行けばディエス・イレは確実に起こり、世界は滅びる。
紘ちゃんを止めれば、紘ちゃんだけが消えて、私たちは生き残ることができる。
(でも……)
摂理なんて怖くない。運命なんて関係ない。
そんな実態のないものに縛られているわけじゃない。
「でもね、爽君。私……」
爽君の手が肩に回り、優しく抱き寄せられた。
「私……紘ちゃんを……」
言葉の代わりに涙が溢れ、私は嗚咽していた。
爽君は私の背中をさすり、「うん、うん」と何度も頷いた。
まるで私の言わんとしていることを汲み取ったかのように。
私は紘ちゃんを殺せない。殺したくない。
まるで駄々っ子だ。でも、何度心の中を探しても、それ以外に言葉が見つからなかった。
(大切な幼馴染なの。ずっと一緒にいたの。たとえ紘ちゃんを止めることが、世界を救うことだとしても……)
爽君の温かい、優しい手がぽんぽんと背中を叩き、頭を撫で、しっかりと抱きしめられる。
世界一安心で安全なこの場所で、私はしばらく声もなく思う存分泣いた。
ようやく泣き止むと、涙と鼻水で顔ががぴがぴだった。
でも、今度は爽君は笑わなかった。
「俺はお前に、お前のままでいてほしい」
ハンカチを取り出して、私の顔を拭いながら言う。
「お前が紘二を止めないというなら、俺はそれを受け入れる。ディエス・イレのことだけじゃない。今までもこれか
らも、舞がするどんな選択も支持するよ」
いつもの憎まれ口を叩き、不敵に笑う爽君とは別の、大人の男の人の顔だった。
(私……この人と結婚するんだ)
先日プロポーズされたときは実感が湧かなかったけれど、今になって急に現実味を帯びて感じられた。
何だかとても気恥ずかしくて、でもとても嬉しい。
「それが俺の答えだ」
「爽君、ありがとう」
私は爽君の手を両手で取って、握りしめた。
この人と一緒に生きていきたい。
何よりも強く、強くそう思った。
――それが、私の答えだった。
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