19 / 61
【#19 ガチギレで救出されました】
しおりを挟む
私はオスカーの体の上にうつ伏せの体勢でいたので、抱きかかえられてようやく気づいた。
「アキト……!」
アキトだ。助けに来てくれたのね。
その顔を見た瞬間、自分でもびっくりするぐらいほっとした。
でも、アキトは私の顔を見ず、鋭い語調で問いかけた。
「これは一体どういうことですか。オスカー・ロミオ・ヴィクター・ジョージ・ウェンゼル公爵子息殿」
オスカーの顔色が変わった。
この世界――リアンダー王国では、身分が下の者から上の者に話しかけることは許されない。
その上、長ったらしい正式名称、つまり相手の本名を呼んでいいのも目上の者だけだ。
これは私でも知ってるぐらい常識で、アキトは今めちゃくちゃ失礼なことをしているのだ。
「ちょっとアキト」
お姫様抱っこの状態のまま、慌ててアキトの袖を引いたが、彼は見向きもしない。
「貴様こそどういうつもりだ」
オスカーは手近にあったサーベルを手に、オスカーに正対した。
やばい、アキトが殺される!!
「やめて、オスカー!」
私は叫んだ。
「この方はプリスタイン公爵令嬢です。許しもなくさらうことなど言語道断。あなたを敵として排除いたします」
アキトは一歩も引かない。黒縁眼鏡の奥の、紫の瞳が怒りに燃えている。
こんな顔、十六年間見たことない。アキトが我を忘れて怒るなんて。
「黙れ執事風情が。ティアメイと俺は結婚を約束した間柄だ。貴様ごとき平民に口出しされるいわれはない!」
「いや、してないしてない!」
これ以上、話がややこしくなるのはごめんだ。
私はおろしてもらおうと身じろぎしたが、アキトはわざと力を込めて離さない。
仕方ないので、お姫様抱っこされた状態のまま言った。
「オスカー、執事の非礼はわたくしの責任です。お詫びいたします」
「ティアメイ様……!」
アキトが傷ついたように表情を歪める。
「ここであなたが暴走すれば、私もあなたもプリスタイン公爵家も不利になるだけよ。お願い、冷静になって」
私は聞き取れるぎりぎりの小声で、早口で言った。
その言葉に、アキトの腕にこもっていた力がわずかに緩む。
「ただ、今日のところは一旦おいとまさせていただきます。あなたが先ほど言ったとおり、わたくしも争いを望んではいません。双方にとって一番よい道を探りましょう」
「駄目だ。おい、誰か!! 花嫁を守れ、逃がすな」
オスカーが声を張り上げた瞬間、ぞろぞろと数人の執事が現れた。
彼らを見て、アキトが臨戦態勢になる。
「アキト、お願い。私を眼鏡科まで連れて帰って」
「かしこまりました。今度こそ、命に代えてもお守りいたします」
痛いぐらいに、アキトは私の体を強く抱きしめた。
「アキト……!」
アキトだ。助けに来てくれたのね。
その顔を見た瞬間、自分でもびっくりするぐらいほっとした。
でも、アキトは私の顔を見ず、鋭い語調で問いかけた。
「これは一体どういうことですか。オスカー・ロミオ・ヴィクター・ジョージ・ウェンゼル公爵子息殿」
オスカーの顔色が変わった。
この世界――リアンダー王国では、身分が下の者から上の者に話しかけることは許されない。
その上、長ったらしい正式名称、つまり相手の本名を呼んでいいのも目上の者だけだ。
これは私でも知ってるぐらい常識で、アキトは今めちゃくちゃ失礼なことをしているのだ。
「ちょっとアキト」
お姫様抱っこの状態のまま、慌ててアキトの袖を引いたが、彼は見向きもしない。
「貴様こそどういうつもりだ」
オスカーは手近にあったサーベルを手に、オスカーに正対した。
やばい、アキトが殺される!!
「やめて、オスカー!」
私は叫んだ。
「この方はプリスタイン公爵令嬢です。許しもなくさらうことなど言語道断。あなたを敵として排除いたします」
アキトは一歩も引かない。黒縁眼鏡の奥の、紫の瞳が怒りに燃えている。
こんな顔、十六年間見たことない。アキトが我を忘れて怒るなんて。
「黙れ執事風情が。ティアメイと俺は結婚を約束した間柄だ。貴様ごとき平民に口出しされるいわれはない!」
「いや、してないしてない!」
これ以上、話がややこしくなるのはごめんだ。
私はおろしてもらおうと身じろぎしたが、アキトはわざと力を込めて離さない。
仕方ないので、お姫様抱っこされた状態のまま言った。
「オスカー、執事の非礼はわたくしの責任です。お詫びいたします」
「ティアメイ様……!」
アキトが傷ついたように表情を歪める。
「ここであなたが暴走すれば、私もあなたもプリスタイン公爵家も不利になるだけよ。お願い、冷静になって」
私は聞き取れるぎりぎりの小声で、早口で言った。
その言葉に、アキトの腕にこもっていた力がわずかに緩む。
「ただ、今日のところは一旦おいとまさせていただきます。あなたが先ほど言ったとおり、わたくしも争いを望んではいません。双方にとって一番よい道を探りましょう」
「駄目だ。おい、誰か!! 花嫁を守れ、逃がすな」
オスカーが声を張り上げた瞬間、ぞろぞろと数人の執事が現れた。
彼らを見て、アキトが臨戦態勢になる。
「アキト、お願い。私を眼鏡科まで連れて帰って」
「かしこまりました。今度こそ、命に代えてもお守りいたします」
痛いぐらいに、アキトは私の体を強く抱きしめた。
0
あなたにおすすめの小説
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
転生ガチャで悪役令嬢になりました
みおな
恋愛
前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。
なんていうのが、一般的だと思うのだけど。
気がついたら、神様の前に立っていました。
神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。
初めて聞きました、そんなこと。
で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?
断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜
白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。
私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。
けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?
関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。
竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。
『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』
❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。
*乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。
*表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。
*いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。
*他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる