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第一章
格闘家と言霊使い
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森のなかにひっそりと立っている木造の小屋。そこから二人の姉弟が、忍び足で出てくる。姉の方は長い髪を後ろでくくり、白い胴着を来ている。弟の方は髪は短く、黒いマスクで口を隠している。
「ルル、今よ」
姉の方が背後を確認し、弟の背中を押して走らせる。その後を姉も追う、が突然止まった弟にぶつかりそうになる。
「どうしたの…って、あ!」
弟の目の前で大きな蛇が舌を鳴らしていた。
「まぁた、逃げ出しちゃって。懲りないわね」
紫色で鱗模様のピッタリとしたワンピースを着た、女が小屋から出てきた。
「来ないで」
女から弟を庇うように立って叫ぶ。
「バカね。邪蛇羅から逃げられないのはわかってるくせに」
邪蛇羅とは女の召喚する魔神で、弟の目の前で舌を鳴らしている蛇のことである。
二人の姉弟は背中を合わせながら、手を握りあって合図を送りあった。そして、ルルと呼ばれる弟はマスクをずらして邪蛇羅に向かい、大声を浴びせた。
「ウ・ゴ・ク・ナ」
すると、邪蛇羅の動きが一瞬止まる。まるで石化したように動かなくなった。その隙に、姉は弟を抱えて蛇を踏み台にして跳ぶ。その勢いで離れていく。
ルルが使ったのは、言霊と言う魔術。発した言葉に魔力を込めて、届けた相手の脳に届ける。すると、発した通りに動かすことができる。その効果は相手との魔力差などにより異なる。
「まったく、面倒ね……さっさと動きなさいよ、邪蛇羅」
止まっていた邪蛇羅は動きだし、その長い体をくねらせながら二人を追いかける。
姉とルルの二人は必死に走って逃げていたが、その足を止めてしまう。今度は背の高い男が二人の行く道を遮った。ヴィオラだ。
「何を逃げようとしてる」
羽根つき帽子を右手で回しながら二人に近づいていくヴィオラ。二人はそれを睨み付けている、
「ヴィオラ様! お帰りになったのですね」
邪蛇羅みたいに体をくねらせながら、甘い声を出している女。
「シャージャ、ちゃんと見ておけと言っただろ」
「大丈夫ですよ。この子達、毎日のように逃げ出そうとしてるんです。邪蛇羅から逃げるなんてできないくせにねぇ」
立ち止まってる二人のそばまで、邪蛇羅は近づいていた。今すぐにでも飲み込めるほどの距離で、舌を鳴らしている。
「ふん、本来はお仕置きのところだがな。オレは逃げ出してきて疲れた。さっさと小屋に戻れ。そしたら、今日は許してやる。それより、酒だ。タオ、酒を用意してくれ。返事は?」
「わ…かりました。ヴィオラ様」
姉の方が悔しそうな顔を浮かべながら、返事した。
「まったく、オレが拾ってやったから生きてられてることに感謝しろよ」
二人は捨て子だった。そして実は血が繋がっていない。それぞれの親が離婚して、父の方に引き取られたタオと、母の方に引き取られたルルはその二人の再婚により姉弟となった。が、すぐに山に捨てられた。山のなかでまだ六歳だったタオと四歳だったルルはほとんど無力だった。そんな二人を拾ったのがヴィオラだった。
二人に寝る場所と仕事を与え、奴隷のようにヴイォラは使った。それでも、タオとルルにとってはありがたかった。そして、生き残るための力をつけていくなか、タオは格闘術、ルルは言霊を体得し始めた。格闘術は体内でエネルギーを自在に操り、自身の肉体的パワーを引き上げて戦うものである。そして言霊は魔術のなかで唯一、魔術具を使わずにできるもので生まれもって持つ力とも言われている。なお、ルルの着けているマスクは普段の会話のなかで言霊の力を封じ込めるもので、町中で盗んだものだった。
小屋に戻らされたタオは酒の準備をしたあと、ルルと二人で小さな肉を分けあい、満たされない腹に気づかないうちに眠りにつこうとしていた。誰か、助けが来てくれることを願って。
「ヴィオラ様が捕まるなんて珍しいですね」
「油断していたのさ。あの小僧、次あったら思い知らせてやる」
シャージャとヴィオラは酒と料理を楽しみながら話していた。
「影の五人衆のところには戻らなくてよいのですか?」
「あんなとこ、オレには向いてなかった」
一方同時刻、暗くなった森のなかを歩く二人と一匹がいた。
「マジめんどくさい。マジめんどくさい。マジめんどくさい……」
天然パーマの男はぶつぶつと呟いている。
「もう、ミカゲはいつまで言ってるんだよ」
両手に数珠を持った男は笑っている。
「ワンワン」
真っ黒な犬が行くべき方向を伝えている。
「見えてきたみたいだよ」
彼らは木の陰から目的地を覗き見る。それは、ヴイォラたちがいる小屋だ。
「ルル、今よ」
姉の方が背後を確認し、弟の背中を押して走らせる。その後を姉も追う、が突然止まった弟にぶつかりそうになる。
「どうしたの…って、あ!」
弟の目の前で大きな蛇が舌を鳴らしていた。
「まぁた、逃げ出しちゃって。懲りないわね」
紫色で鱗模様のピッタリとしたワンピースを着た、女が小屋から出てきた。
「来ないで」
女から弟を庇うように立って叫ぶ。
「バカね。邪蛇羅から逃げられないのはわかってるくせに」
邪蛇羅とは女の召喚する魔神で、弟の目の前で舌を鳴らしている蛇のことである。
二人の姉弟は背中を合わせながら、手を握りあって合図を送りあった。そして、ルルと呼ばれる弟はマスクをずらして邪蛇羅に向かい、大声を浴びせた。
「ウ・ゴ・ク・ナ」
すると、邪蛇羅の動きが一瞬止まる。まるで石化したように動かなくなった。その隙に、姉は弟を抱えて蛇を踏み台にして跳ぶ。その勢いで離れていく。
ルルが使ったのは、言霊と言う魔術。発した言葉に魔力を込めて、届けた相手の脳に届ける。すると、発した通りに動かすことができる。その効果は相手との魔力差などにより異なる。
「まったく、面倒ね……さっさと動きなさいよ、邪蛇羅」
止まっていた邪蛇羅は動きだし、その長い体をくねらせながら二人を追いかける。
姉とルルの二人は必死に走って逃げていたが、その足を止めてしまう。今度は背の高い男が二人の行く道を遮った。ヴィオラだ。
「何を逃げようとしてる」
羽根つき帽子を右手で回しながら二人に近づいていくヴィオラ。二人はそれを睨み付けている、
「ヴィオラ様! お帰りになったのですね」
邪蛇羅みたいに体をくねらせながら、甘い声を出している女。
「シャージャ、ちゃんと見ておけと言っただろ」
「大丈夫ですよ。この子達、毎日のように逃げ出そうとしてるんです。邪蛇羅から逃げるなんてできないくせにねぇ」
立ち止まってる二人のそばまで、邪蛇羅は近づいていた。今すぐにでも飲み込めるほどの距離で、舌を鳴らしている。
「ふん、本来はお仕置きのところだがな。オレは逃げ出してきて疲れた。さっさと小屋に戻れ。そしたら、今日は許してやる。それより、酒だ。タオ、酒を用意してくれ。返事は?」
「わ…かりました。ヴィオラ様」
姉の方が悔しそうな顔を浮かべながら、返事した。
「まったく、オレが拾ってやったから生きてられてることに感謝しろよ」
二人は捨て子だった。そして実は血が繋がっていない。それぞれの親が離婚して、父の方に引き取られたタオと、母の方に引き取られたルルはその二人の再婚により姉弟となった。が、すぐに山に捨てられた。山のなかでまだ六歳だったタオと四歳だったルルはほとんど無力だった。そんな二人を拾ったのがヴィオラだった。
二人に寝る場所と仕事を与え、奴隷のようにヴイォラは使った。それでも、タオとルルにとってはありがたかった。そして、生き残るための力をつけていくなか、タオは格闘術、ルルは言霊を体得し始めた。格闘術は体内でエネルギーを自在に操り、自身の肉体的パワーを引き上げて戦うものである。そして言霊は魔術のなかで唯一、魔術具を使わずにできるもので生まれもって持つ力とも言われている。なお、ルルの着けているマスクは普段の会話のなかで言霊の力を封じ込めるもので、町中で盗んだものだった。
小屋に戻らされたタオは酒の準備をしたあと、ルルと二人で小さな肉を分けあい、満たされない腹に気づかないうちに眠りにつこうとしていた。誰か、助けが来てくれることを願って。
「ヴィオラ様が捕まるなんて珍しいですね」
「油断していたのさ。あの小僧、次あったら思い知らせてやる」
シャージャとヴィオラは酒と料理を楽しみながら話していた。
「影の五人衆のところには戻らなくてよいのですか?」
「あんなとこ、オレには向いてなかった」
一方同時刻、暗くなった森のなかを歩く二人と一匹がいた。
「マジめんどくさい。マジめんどくさい。マジめんどくさい……」
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両手に数珠を持った男は笑っている。
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