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第一章
ヴィオラ脱走
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右、左、上、下、次々とカイトに斬りかかっていくのは、モーリー。それをカイトは素早く避けている。
「それで本気なのか」
交わすのを途端に止めて、カイトはモーリーの腹に蹴りを入れた。飛ばされるモーリー。
「そこまで」
グラスが二人の間に入って合図する。何故こんなことになっているのか、遡ること一時間前。
カイト達三人が、ポイズンスパイダーの巣の駆除へ出ていった後、モーリーはユアナから昨日のカイトの活躍を聞いていた。綾目のことを伏せつつ、興奮気味にユアナは説明していた。
「なんだよそれ。本当なのか」
「あれは凄かった。ボクは弟子にしてもらうつもりだぞ」
話を聞いていたルーアが口を挟む。
「弟子?」
「そうさ。ボクは忍者になるんだ」
短い髪を一生懸命に流して、片目を隠そうとするルーア。だが長さが足りず、カイトのようにはならない。
「おい、ルーア。俺を越える勇者になるって言ってたじゃないか。目標は俺だろ?」
「あれはモーリー兄ちゃんよりも強い。なんなら、グラス兄さんよりもな。だから、ボクはカイト様を師匠にするんだ」
敬称の違いからも、自分が一番下に見られてることを知るモーリー。その嫉妬心に火が付き始めた。
「俺より強いのか、後ではっきりさせてやる」
「あっ、帰ってきたみたいよ」
「は!? もう帰ってきたのか?早すぎだろ。くそ、勝負だ!」
そして、今に至るのだ。
「残念だけど、こういうことよね」
「おい、今の手抜いてだろ」
ルーアがカイトに向かって訴える。確かに、カイトは綾目を使っていないため、昨日よりかは本気を出していなかった。
「手抜いたって程ではない」
「まぁ、どっちにしたってモーリー兄ちゃんの方が弱いことははっきりした」
「ルーア、言い過ぎ……」
ユアナが注意しようとしたが、その口を止めた。突き飛ばされて倒れていたモーリーが、立ち上がってカイトの前で頭を下げたのだ。
「俺を弟子にしてくれ、俺も忍者になる」
「はぁ?」
呆れ顔になったカイト。空を飛ぶ鳥もアホーと鳴いている。
「盛り上がっているところ、すいません」
そこに、モカとロードがやって来た。さっきまで、モカは遠隔会話で、エドルフ王にカイトのクエスト終了を報告していた。
「どうかしたのですか?」
「あなた方が捕獲してくださったヴィオラが、王国への連行中に逃走しました」
ユアナたちは、信じられないといった顔をしている。
「どうして? 魔術具も取り上げていたはずなのに」
「それが、隠し持っていたのか、魔術を使って錯乱させたようです」
皆、驚きを隠せないようだった。魔術具なしでの魔法など本来あり得ないからだ。
「ロード、お前もなにか伝えにきたのじゃろう」
ずっと黙っていた村長が口を開けた。覚悟を決めているような表情をしている。
「はい。重大な神からの伝言を受けたのでお伝えに来ました。この国、この世界に良からぬ兆しが出ています。そして、それは四年前から始まっていた、ということです」
四年前という言葉に、カイトの脳は反応した。四年前、それはあの事件が起こった年。カイトの兄シグレが一族を殺した、あの夢に見た事件の年。そして、シグレが姿を消した年だったのだ。
「それで本気なのか」
交わすのを途端に止めて、カイトはモーリーの腹に蹴りを入れた。飛ばされるモーリー。
「そこまで」
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話を聞いていたルーアが口を挟む。
「弟子?」
「そうさ。ボクは忍者になるんだ」
短い髪を一生懸命に流して、片目を隠そうとするルーア。だが長さが足りず、カイトのようにはならない。
「おい、ルーア。俺を越える勇者になるって言ってたじゃないか。目標は俺だろ?」
「あれはモーリー兄ちゃんよりも強い。なんなら、グラス兄さんよりもな。だから、ボクはカイト様を師匠にするんだ」
敬称の違いからも、自分が一番下に見られてることを知るモーリー。その嫉妬心に火が付き始めた。
「俺より強いのか、後ではっきりさせてやる」
「あっ、帰ってきたみたいよ」
「は!? もう帰ってきたのか?早すぎだろ。くそ、勝負だ!」
そして、今に至るのだ。
「残念だけど、こういうことよね」
「おい、今の手抜いてだろ」
ルーアがカイトに向かって訴える。確かに、カイトは綾目を使っていないため、昨日よりかは本気を出していなかった。
「手抜いたって程ではない」
「まぁ、どっちにしたってモーリー兄ちゃんの方が弱いことははっきりした」
「ルーア、言い過ぎ……」
ユアナが注意しようとしたが、その口を止めた。突き飛ばされて倒れていたモーリーが、立ち上がってカイトの前で頭を下げたのだ。
「俺を弟子にしてくれ、俺も忍者になる」
「はぁ?」
呆れ顔になったカイト。空を飛ぶ鳥もアホーと鳴いている。
「盛り上がっているところ、すいません」
そこに、モカとロードがやって来た。さっきまで、モカは遠隔会話で、エドルフ王にカイトのクエスト終了を報告していた。
「どうかしたのですか?」
「あなた方が捕獲してくださったヴィオラが、王国への連行中に逃走しました」
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「どうして? 魔術具も取り上げていたはずなのに」
「それが、隠し持っていたのか、魔術を使って錯乱させたようです」
皆、驚きを隠せないようだった。魔術具なしでの魔法など本来あり得ないからだ。
「ロード、お前もなにか伝えにきたのじゃろう」
ずっと黙っていた村長が口を開けた。覚悟を決めているような表情をしている。
「はい。重大な神からの伝言を受けたのでお伝えに来ました。この国、この世界に良からぬ兆しが出ています。そして、それは四年前から始まっていた、ということです」
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