紡がれし罪の血

風花薫

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第1章

罪びとになった秋

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風が吹いていた。

遠くから、人々の呼ぶ声が聞こえる。


風に靡くススキの遥か遠くから、富士の山が大地に横たわる私を見下ろしている。

まるで何事もなかったかのように悠然と、優しく…


「このまま、土に埋もれて大地と同化出来ればいいのに…」


ふとそんな誘惑に駆られる。


冷たい風がスカートをめくり露わな尻を撫で、大地の上を通り過ぎていく。


あれは、20年前・・・


私は、静岡の片田舎に住んでいた。

東京からの転向生。


父の転勤の時、ここに連れて来られた。


学校は富士の裾野にある女子校で男子禁制。

厳格なカソリックとして洗練も受けさせられた。


この事件の後、母が家を出てから、私は、父の手を離れ寄宿舎に入寮することになった。


毎日の日課は、礼拝。

厳かなチャペルの雰囲気が私は好きだった。


神父様に従い、お祈りを捧げた後、シスターの奏でるオルガンに合わせて、響く讃美歌の合唱も…

ステンドグラスの彼方にある希望の未来を指し示すかのように、すべてが美しく、私の心を高揚させていた。


あの週末・・・


久々の休校で、自宅に戻ったとき、

私の希望の光が、一瞬にして闇に閉ざされるまでは…


「肉屋の子分、ハル」


その青年は、食肉センターに勤めていたが、取引先の肉屋さんに可愛がられており、仕事や配送をマメに手伝っていたことから、近所では、そう呼ばれていた。

行動が乱暴で、とにかく無口。

ろくに挨拶もしないことから、評判は極めて悪かったが、引っ越してきた当初から孤独な私には親切に接してくれた。


新しい土地の生活に戸惑う当時の私には、ハルは、頼りがいのある優しい兄のような存在だった。


「来ちゃいかん!」

「動かにゃあでそこにおれ❣」


何時ものように、敢えて玄関を通らず、自宅の庭から家に入ろうとした時、縁側に立っていたハルが私を制した。


閉ざされた障子越しに聞きなれた母のくぐもった声が聞こえる…


苦しそうなその喘ぎ声に不安感を抑えきれず、私は、制止しようとするハルの肩越しから薄暗い部屋の中に目を凝らし、僅かに開いた障子の隙間にその悍ましい光景を垣間見てしまったのだ。


「おう、おお、、もっと吸え!」

母の尻を平手で叩きながら、男がうめき声をあげている。


醜い男・・・


思わず声をあげそうになる私の口をハルの手が塞ぐ。


「見ちゃいかん、見ちゃいかんてぇ~」


その醜悪な光景に吐き気を催しながら、私は、ハルの肩に爪をたて、その悍ましさに吸い込まれそうな自分を感じていた。


頭の禿げあがったその男の股間に顔を埋める母。


一糸纏わぬその白い身体には麻縄がかけられ、打たれた尻を赤く染めながら男の股間で頭を振る母。


「美味しいわ」


母のその言葉を聴いた時、私は、耳を疑った。


まさか・・・


てっきり男に襲われて、無理矢理こんなことをさせられているのかと思っていた私には、その言葉は意外だった。


そして、母が、自ら男に抱きつき、その悍ましい肉の塊を自分に導く姿を見た時。

私の心を、言い知れぬ絶望感が突き抜けたのだ。


「姦淫の罪」


私の心の中を覆い尽くす黒い雲を振り払うかのように

母は、必死で腰を振っている。


「いやああぁ、もっとぉ・・・」


あの時の声は、今でも頭の中に残っている。

まるで、自分の罪を振り払い私に罪を被せるかのような不吉な叫び。


「なんで、なんでよぉ~」


ハルの肩に必死でしがみつき、不条理な思いに身を震わせながら、私は、涙の向こうで繰り広げられる罪の宴に目を凝らしていたのです。


「奥さん、尻を出せ。」


男の言葉に、尻を掲げながら母は嘲るように笑った。


「今日もお尻を責めるのですね。」


男は、母の尻を平手でピシャリと打ち付け


「奥さんの尻は絶品だからな・・・」

と言うと、母の尻にその醜い肉の塊を突き立てたのだ。


それ以降のことは、何も覚えていない。


気が付くと、ハルに手を引かれ走り出していた。


頭が白くなったまま、逃げるようにハルの手に縋り、懸命に走っていた。


玄関先に停まっている肉屋の軽四輪。

垣間見た醜い肉体の正体が、鮮明な映像に変貌し私を追いかけて来る。


まざまざと浮かび上がるおぞましい光景…


母の死にそうな断末魔のうめきと喜悦の嬌声が入り混じって、見るに堪えなかった情景だけが記憶に残って離れない。


姦淫・・・・


情欲を抱くものの罪・・・


押し寄せる恐ろしい妄想の中で、周りの景色が、真っ白な炎に包まれ、消えていくのを遠のく意識の向こうに感じていた・・







遠い空の向こうから私を呼ぶ声が聞こえる。


「大丈夫か?」


倒れこむ私を抱き起してくれたのは、ハルだった。


彼の逞しい腕に縋りついて私は泣きじゃくった。


見たもの、聞いたもの、そのすべてを消し去りたい!

そんな思いで胸の中が一杯だった。


ハルに抱きかかえられるようにして私は家を後にした。


途中すれ違った農家のおばあちゃんが怪訝そうな顔で私たちに行き先を訊ねた。


「ちょっくら、休ましてやるら」


ハルは、そう言うと、私を抱きかかえるように裏山の公園に連れて行った。


誰もいない寂れた公園の片隅…


私は、初めて、ハルに唇を奪われた。


不思議なことに私には抵抗する気力が全くなかった。


ハルの思いのまま身をゆだね気のすむままに唇を吸われた。


「問題なけりゃあ・・・」


ハルは、私を抱き寄せると耳もと息を吹き込むように囁いた。


「気持ちいいこと、たんとさせたる」


ハルはそういうと人が変わったような凶暴な眼差しになり両手で私の頬を包むように強く抑えつけスカートの下に乱暴に手をいれて来たのだ。


「いやああ、何するの? やめてぇ~」


下着をおろされる恥ずかしさに狼狽え、抵抗する私をハルは強引に押し倒した。


「心配するな、傷つけにゃあよ」

「今に、かあちゃんみたゃあに、気持ちよくなるら」


ハルに、スカートを捲られ尻を撫でられながら私は、言い知れぬ、恍惚感に酔いしれていた…


「こんなに、たんと濡らしおって」

「感じとるんじゃにゃあか?」


ハルは、私に、醜くいきり立つ自分自身の肉の塊を握らせると、股間を開くように命じ、乱暴にそれを刺し込んで来た。


「いやあああああ、、」

「い、痛いよぅううう」


私の中に、初めての男が入って来る。


その悍ましい感覚と引き裂かれるような激痛に耐えきれず、私は悲鳴を上げ、ハルにしがみついていた。


「大丈夫、がまんしぃよ、そのうち気持ち良くなるで・・・」


ハルは、そう言いながら、容赦なく私の身体を貫き、ゆっくりと、激しく出し入れを始めるのだった。


股間が裂けるピリピリとした軋むような感覚が襲うと、やがて痛みが薄れ、僅かばかりの快感めいたものが込み上げて来るのが解る。

でも、それを気持ち良いと感じる余裕は、当時の私には無かった。


「どうなるんだろう?」

「私は一体何をしてるんだろう?」


そんな戸惑いの中で、私を突き上げる悍ましい感覚に思わず腰を振ってしまう自分が惨めだった。


「ほら、気持ち良くなってきたら」

「やっぱ、おみゃーも好きモンだなぁ~」


ハルの言葉に抗うようにかぶりを振るが、突き上げられると嗚咽が漏れる。


「いやああぁ、も、もうよして・・・」


まるで、ハルの肉塊に支配されてしまったよう…


突き上げられては、腰を振り、嗚咽を漏らす。

踊らされている自分があまりにも惨めだった。


その惨めさから逃れたい一心で懇願する私。


ハルに許しを請い

神に懺悔する・・・


「もう、私は、罪人。」

「姦淫の大罪を犯す罪人なのです・・・」


そう思った瞬間!


私の身体を支配していた肉塊は引き抜かれ、身体中に、白い液体を塗りこめながら私の口を蹂躙したのだ。


口の中に広がる生臭い肉塊にむしゃぶりつきながら、頭の中を、母のあられもない姿が駆け巡る。


やがて、注ぎ込まれた白濁液を飲み干しながらハルに、熱くなった下半身を弄られると、青空に吸い込まれるように全身からスウッと力が抜けていく。


「こらゃぁあ、いったゃあ、そんなとこで何しとるんだ!」


遠くから、人々の呼ぶ声が聞こえる。


私は、大地にへばりつき、慌てて走り去っていくハルの足先を眺めていた。


このまま土に埋もれて大地と同化出来ればいいのに...


ふとそんな誘惑に駆られる。


冷たい風がスカートをめくり露わな尻を撫で大地の上を通り過ぎていく。


私が罪人になった日…


雄大な富士の山が私を見下ろしていた。


まるで何事もなかったかのように


悠然と、優しく・・・







あの日、私は処女を失った。


性行為がどういうものかは知っていたし、気持ちが良くなる感覚も本を読みながら何度も自慰を重ねる中で体験的に感じていた。


でも、現実は、決して気持ち良いものでは無かったし最後まで感じることも無かった。


当時の私は、処女を失うことに大きな抵抗は無く、捧げる相手も決めていなかった。


特に、ハルのことが嫌いな訳でも無かったから、彼に抱かれ処女を捧げたことに何の後悔もしなかった。


でも、全てが終わった後、そこには、ひとかけらの愛も快感も残らなかった。


残ったのは、果てしない虚しさだけ…


私の母は肉屋に抱かれ、娘の私は、その肉屋の子分ハルに処女を捧げたんだわ。


母を軽蔑しながら自分も同類なのだと思うと、悲しい訳では無いのに自然に涙が溢れて来た。


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