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第3部 仇(あだ)
9:オトラル戦6: 次子チャアダイのオトラル指揮官任命の理由
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人物紹介
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
チャアダイ:同上の第2子
オゴデイ:同上の第3子
トゥルイ:同上の第4子。
ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。
人物紹介終わり
チンギスは他の者に図ることなく、チャアダイとオゴデイにオトラル攻めを委ねることを決めておった。
特にチャアダイについては理由があった。
ただし、それをチャアダイ本人に言うことはなく、またトゥルイにもそしてボオルチュにさえも言うことはなかった。
つまり、それだけこのことは微妙な事柄、
――チャアダイの指揮官としての資質に関わる事柄であった。
チンギスの見るところ、チャアダイにとっての戦は懲罰に他ならなかった。
モンゴルに従わぬ者、その支配や権威に服さぬ者に対する懲罰。
この考え自体は、敵対勢力や反乱勢力に対する宣戦の際に公式に布告されるものであり、批判されるべきものではない。
しかし融通の利かぬチャアダイは、余りにこのことを額面通りに受け取っておるように想えてならなかった。
そして敵を懲罰せんとの想いが強すぎる余り、チンギスの最も嫌うところの戦い方、兵の犠牲をいとわぬ戦い方をしがちであった。
とはいえモンゴルにおいては、軍事は支配層にとって何より優先すべき義務に他ならず、更にはその支配層の序列がそのまま軍の序列となる。
ゆえにチャアダイを外すという選択肢はなかった。
旗下にいかに多くの忠誠篤く有能な武将を抱えておってもである。
チャアダイは戦における押し引きを知らず、
――本来であれば敵に降伏をうながし自軍の損害を最小限に抑えるべき状況でも、強攻一辺倒であった。
しかし、そのようなチャアダイの戦い方も、今回のオトラル攻めに限っては、目的にかなったものと言えた。
虐殺された隊商の仇を果たすためのものであり、その張本人たるイナルチュクを罰するための戦であった。
途中で降伏を勧告する必要のない、
――というより、してはならぬ戦いであり、
――武力により敵を殲滅すべき戦いであった。
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
チャアダイ:同上の第2子
オゴデイ:同上の第3子
トゥルイ:同上の第4子。
ボオルチュ:チンギス筆頭の家臣。アルラト氏族。四駿(馬)の一人。
人物紹介終わり
チンギスは他の者に図ることなく、チャアダイとオゴデイにオトラル攻めを委ねることを決めておった。
特にチャアダイについては理由があった。
ただし、それをチャアダイ本人に言うことはなく、またトゥルイにもそしてボオルチュにさえも言うことはなかった。
つまり、それだけこのことは微妙な事柄、
――チャアダイの指揮官としての資質に関わる事柄であった。
チンギスの見るところ、チャアダイにとっての戦は懲罰に他ならなかった。
モンゴルに従わぬ者、その支配や権威に服さぬ者に対する懲罰。
この考え自体は、敵対勢力や反乱勢力に対する宣戦の際に公式に布告されるものであり、批判されるべきものではない。
しかし融通の利かぬチャアダイは、余りにこのことを額面通りに受け取っておるように想えてならなかった。
そして敵を懲罰せんとの想いが強すぎる余り、チンギスの最も嫌うところの戦い方、兵の犠牲をいとわぬ戦い方をしがちであった。
とはいえモンゴルにおいては、軍事は支配層にとって何より優先すべき義務に他ならず、更にはその支配層の序列がそのまま軍の序列となる。
ゆえにチャアダイを外すという選択肢はなかった。
旗下にいかに多くの忠誠篤く有能な武将を抱えておってもである。
チャアダイは戦における押し引きを知らず、
――本来であれば敵に降伏をうながし自軍の損害を最小限に抑えるべき状況でも、強攻一辺倒であった。
しかし、そのようなチャアダイの戦い方も、今回のオトラル攻めに限っては、目的にかなったものと言えた。
虐殺された隊商の仇を果たすためのものであり、その張本人たるイナルチュクを罰するための戦であった。
途中で降伏を勧告する必要のない、
――というより、してはならぬ戦いであり、
――武力により敵を殲滅すべき戦いであった。
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