出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

文字の大きさ
14 / 66
始まり

貴賓室にて1

しおりを挟む
 最後の晩餐を彷彿とさせるテーブルがある部屋に戻ってきた。
 どうやらここは貴賓室らしく今更だが貴賓の低い私がここに居ていいのだろうか。
 否! 間違えて刺され痛い思いをしたのだ、いいに決まってる。

 昔ながらの古き良きロングスカートのメイド服に身をまとったメイドさんがテーブルにこれでもかと豪勢な料理を運んできてくれた。
 でも私を見る目は少し嫌な目をしていたのを一生忘れないからね。
 だけどこれ程までの美味しそうなご馳走を目の前にしているのですぐに忘れそう。

「遠慮しないで食べてくださいね」
「いただきます!」

 テーブルマナーがあるのかもしれないが、それより空腹が我慢出来ない。
 エルに促されるとすぐにフォークとナイフを手にして目の前にある料理をにがっついた。

「すごい食欲だな。これはアル坊に匹敵するぞ」

 などと私の食べっぷりを見てゴルデスマンさんが驚いていたが、今の私には関係ない。
 自分のお腹の中に眠っていた獅子が満足するまで喰らい続ける。
 くそぽっちゃりだって必死に食べ続けてるし。

 考えてみればここに来てからまともな食事をしていなかった。
 口に入れるどれもが美味しく、どれもが私を幸福にさせてくれる。

「こんなに美味しいご飯は生まれて初めて」
「気に入って頂けたようで嬉しいです」

 舌鼓を打つと、エルは安堵している。
 もしかしたら、口に合わないかもしれないと心配していたのかな。
 こんなご馳走、不味いと言う方がおかしい。

「エル様──」

 もえぎ色をしたショートヘアのメイドさんがエルに近寄り、耳元で何かを話しかけている。

「ええっ!?」

 それを聞いてエルは偉く驚いた。
 初めて私を見た時よりも驚いてるような気がするんだけど。

「どうしふぁの?」
「おじいちゃんがここに来るそうです」

 口に食べ物を入れたまま訊ねると、エルは返答し次第に顔が青ざめていくのが見てわかる。

「そんなに驚くことなの?」

 おじいちゃんが孫を見に来るくらい普通にあることなのではなかろうか?
 私の家も私が幼稚園に上がる前はよくおじいちゃんとおばあちゃんが来てくれたものだ。
 うちに上がる時は決まって「真理愛、お腹は空いてないかい?」と言ってコンビニで買ってきたものを持ってきてくれていた。

 おじいちゃんとおじいちゃん、元気にしてるかな。

「おじいちゃんは獣人が大の嫌いです。マリアは獣人ではないと伝えても耳と尻尾があるからここには来ないと思っていたのですが──」
「エル! エルは居るか!」

 そわそわしているエルの言葉を遮るかのように扉の外からエルを呼ぶ大きな声がする。
 その声だけで貫禄のある親父を想像させられるのだ。
 この場合は親父ではなさそうなのだけど。

「お、おじいちゃん!? は、はひ! 今行きます!」

 バネのように飛び上がり、扉の元へと小走りで向かっていく。
 一体、エルのおじいちゃんとやらはどんな人なのだろうか。
 
 自然と唾を飲んで身構える。

「ガハハ。久しいな、エル。元気にしとったか?」
「えぇ、まぁ……」

 扉が開き、廊下には私の二倍はある横幅、背丈も二倍はあるかもしれない……髪の毛は存在しなくツルツルで、その代わりに顎にはそれはそれは大層なお髭がお生えになすっていた。
 エルと少し似てて同じ青く澄んだ瞳。
 如何にも王様って感じの赤いマントに茶色のズボンと白いワイシャツ。
 体型はくそぽっちゃりに似てる。

 これがエルとアルフレッドのおじいちゃんね。
 獣人が大の嫌いと言うくらいだから怖い人かと思えば何とも優しい見た目をしていること。

「むっ、貴様が獣人モドキだな?」

 楽しそうに孫と戯れているかと思えば、その光景を見ていた私を睨むような目で見つめ始め、近寄ってくる。

 モドキって……確かにモドキだけどさぁ。
 私はちゃんとした人間にモドリたいよ!

「初めまして、マリア・スメラギです」

 食事中と言えど、流石に立ち上がり私は王様に頭を下げた。
 淑女の場合、スカートの裾を摘んで頭を下げるべきだったかな?

「ゴルデスマンから話を聞いておったが、何ともまぁ礼儀正しい子じゃないか。ワシの名前はゼス・ガナファーじゃ」

 髭を摩り何ともにこやかや笑顔を見せる。
 ゼスオジと略させてもらおう。

「詳しい話を聞こうではないか」

 ゼスオジは何やら更にニヤリも笑い、私はその笑顔に少し恐怖した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...