15 / 66
始まり
貴賓室にて2
しおりを挟む
ゼスオジは上座に座り、改めてみんなでご飯を食べながらお話をしていた。
と言ってもくそぽっちゃりはおじいちゃんが来たにも関わらず、見向きもせずにずっと食べ続けている。
私はゴルデスマンさんにあんなのと同じくらいだと思われていたのね……さっきまでだけだと思いたい。
そのゴルデスマンさんは部屋の隅で立ったままじっと待機をしていた。
小声で「アナスタシア……」と何度も呟いていたのは聞かなかったことにしておくよ。
話の内容は全て私のことで、記憶喪失と言うことになっているので記憶がある部分のこと……洞窟内のことやエルとの出会い、どうして耳と尻尾が生えているのか、プリティラビットとどのようにして戦ったか、事細かに訊ねられた。
途中で人間だと知らずに刺してしまったことを謝られたが、王様にそこまでされるとは思っていなかったので驚いた。
なので話題を戻し、今はプリティラビットの話をしている。
「ふむ。その歳でプリティラビットに二撃も与えられるとは中々のものじゃ」
「ど、どうも」
結局は倒せなかったから褒められたものじゃない。
でも普段から余り褒められていない私は少し嬉しくなり自分の後頭部を擦りながらペコペコと頭を下げる。
「どうじゃ、グラダラスの騎士になるつもりはないか?」
嬉々としてゼスオジは私に勧誘をしてきた。
断ったら怒ったりするんだろうな。
嫌だなー、入りたくないよー。
「おじいちゃん! マリアは女の子です! 騎士団に入れるだなんて許されませんよ!!!」
どう返事をしたものか悩んでると、エルが大声を出し怒鳴り散らかしていた。
今の見た目は十四、五歳ほどなので女の子って言われるとちょっと嬉しい。
大学生になった途端、高校生からはオバサン扱いだったからね。
「ちょいとした冗談じゃ。にしてもエルはマリアのことを随分気に入ったようじゃな」
ガハハ、と最後には高笑いを追加していた。
それを言われてエルは頬を赤らめた。
恋愛感情はないと思うけど、そう弄られると恥ずかしいお年頃だよね。
「にしても獣術とな……聞いたことがないのぉ」
「マリアが実際にこうなっているのは失った魔法が復活したからだと思うんです。おじいちゃん、どなたか獣術を使わせても問題のないお方はおりませんか?」
ゼスオジは過去の記憶を遡っているのか、顎に手を当て目を瞑り左右に首を傾げながら唸るように喋っていた。
エルが畳み掛けるかのように訊ねると更に渋い顔へと変貌する。
「と言われてものぉ…………居った!」
「どなたですか!?」
ゼスオジは目と口を開き嬉しそうになっていた。
「宮廷魔術師のヒックじゃ。彼なら魔獣と契約もしておるし、うちの者でもない。使って戻れなくても問題ないじゃろ」
「本当ですか! マリア!」
「うん! 食べ終わったら案内してね?」
エルはとっても嬉しがり、私を見て私の名前を叫んでいた。
かく言う私も嬉しい。これで少し進歩した訳だ。
でも戻れなくても問題ない、とかその発言自体問題なのではなかろうか。
それにしても宮廷魔術師かぁ。
助けてもらったんだしお礼も言いたかったので一度は会いたかった。
ヒックさん……どんな人なんだろう。
ゼスオジが彼って言ってたからきっと男の人だと思うけど、怖い人じゃないといいね。
ついでに解き方も分かれば教えて欲しい。
そんな淡い期待と不安を胸に私は自分の空腹を満たすのであった。
「ふむ」
食事をしながらゼスオジは私を見て何やら何度も頷いていたのがとても印象的だった。
と言ってもくそぽっちゃりはおじいちゃんが来たにも関わらず、見向きもせずにずっと食べ続けている。
私はゴルデスマンさんにあんなのと同じくらいだと思われていたのね……さっきまでだけだと思いたい。
そのゴルデスマンさんは部屋の隅で立ったままじっと待機をしていた。
小声で「アナスタシア……」と何度も呟いていたのは聞かなかったことにしておくよ。
話の内容は全て私のことで、記憶喪失と言うことになっているので記憶がある部分のこと……洞窟内のことやエルとの出会い、どうして耳と尻尾が生えているのか、プリティラビットとどのようにして戦ったか、事細かに訊ねられた。
途中で人間だと知らずに刺してしまったことを謝られたが、王様にそこまでされるとは思っていなかったので驚いた。
なので話題を戻し、今はプリティラビットの話をしている。
「ふむ。その歳でプリティラビットに二撃も与えられるとは中々のものじゃ」
「ど、どうも」
結局は倒せなかったから褒められたものじゃない。
でも普段から余り褒められていない私は少し嬉しくなり自分の後頭部を擦りながらペコペコと頭を下げる。
「どうじゃ、グラダラスの騎士になるつもりはないか?」
嬉々としてゼスオジは私に勧誘をしてきた。
断ったら怒ったりするんだろうな。
嫌だなー、入りたくないよー。
「おじいちゃん! マリアは女の子です! 騎士団に入れるだなんて許されませんよ!!!」
どう返事をしたものか悩んでると、エルが大声を出し怒鳴り散らかしていた。
今の見た目は十四、五歳ほどなので女の子って言われるとちょっと嬉しい。
大学生になった途端、高校生からはオバサン扱いだったからね。
「ちょいとした冗談じゃ。にしてもエルはマリアのことを随分気に入ったようじゃな」
ガハハ、と最後には高笑いを追加していた。
それを言われてエルは頬を赤らめた。
恋愛感情はないと思うけど、そう弄られると恥ずかしいお年頃だよね。
「にしても獣術とな……聞いたことがないのぉ」
「マリアが実際にこうなっているのは失った魔法が復活したからだと思うんです。おじいちゃん、どなたか獣術を使わせても問題のないお方はおりませんか?」
ゼスオジは過去の記憶を遡っているのか、顎に手を当て目を瞑り左右に首を傾げながら唸るように喋っていた。
エルが畳み掛けるかのように訊ねると更に渋い顔へと変貌する。
「と言われてものぉ…………居った!」
「どなたですか!?」
ゼスオジは目と口を開き嬉しそうになっていた。
「宮廷魔術師のヒックじゃ。彼なら魔獣と契約もしておるし、うちの者でもない。使って戻れなくても問題ないじゃろ」
「本当ですか! マリア!」
「うん! 食べ終わったら案内してね?」
エルはとっても嬉しがり、私を見て私の名前を叫んでいた。
かく言う私も嬉しい。これで少し進歩した訳だ。
でも戻れなくても問題ない、とかその発言自体問題なのではなかろうか。
それにしても宮廷魔術師かぁ。
助けてもらったんだしお礼も言いたかったので一度は会いたかった。
ヒックさん……どんな人なんだろう。
ゼスオジが彼って言ってたからきっと男の人だと思うけど、怖い人じゃないといいね。
ついでに解き方も分かれば教えて欲しい。
そんな淡い期待と不安を胸に私は自分の空腹を満たすのであった。
「ふむ」
食事をしながらゼスオジは私を見て何やら何度も頷いていたのがとても印象的だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる