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始まり
メイドさんと大浴場
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ヒックさんと別れを告げ、私は宛てがわれていた部屋へ、その他の人達はどこかへ行ってしまった。
ヒックさんは何日かはグラダラスに滞在するようで暇だったらまた会いに来て欲しい、と言ってくれた。
出来れば魔法の基礎的なものを教えて欲しいのでまた会いに行きたいね。
「失礼します」
ベッドで横になり寛いでいると、ノックをしてメイドさんが入ってくる。
見た目は若く、背丈なんかも私より少し高いくらいで、もえぎ色のショートヘアにもえぎ色の瞳……それから昔ながらのロングスカートのメイド服……確かエルにおじいちゃんが来ることを教えてた人だよね。
「本日より、マリア様のお世話をさせて頂く、ルナと申します。以後お見知りおきを」
彼女は深く頭を下げた。
丁寧に挨拶をしているのだが、感情が篭っておらず定型文というかマニュアル通りというか……私を見る目は氷のように冷たく、それでいて鋭い。
「あ、どうも。マリア・スメラギです」
ベッドから立ち上がり頭を下げる。
寛いでいるのは絶対に許さない、そんな雰囲気を感じ取ってしまった。
無理もない。今私はこの国の脛を齧って生きているような状態。
そんなのをこの国の王様に仕えるメイドさんは快く思わないだろう。
「お時間は少々早いですが、お風呂をご用意させて頂きました。どうなさいますか?」
首を傾げ、右の頬には右の人差し指を当てちゃったりして訊ねられる。
仕草は可愛いのだが、つんざく視線が全然可愛くない。
これは遠回しに「臭いから風呂入れ」って言ってるんだよね。
もう何日もお風呂に入っていないし、私もそろそろ入りたいと思っていた。
でも膝丈の川に入るだけで溺れかけていた私は湯船に使っても大丈夫なのだろうか。
「お、お願いします」
不安を胸に秘めたまま恐る恐る頷いた。
「では案内致します。着いてきてください」
私は彼女に着いていき、そのまま大浴場へと案内されるのだった。
☆
「うわ、でっっっっか!」
私は只今絶賛全裸である。
それは大浴場に居るからである。
でも流石にバスタオルは巻いている。
大浴場はオレンジ色というかピンクというか暖かなイメージがするタイルと壁が使われている場所で、よくある四角い温泉があり、絶えずお湯が流れている。
源泉かけ流し、とか言うやつだろうか。
今ここを利用しているのは私しかおらず、このバカでかい大浴場を一人で使えるとはとても贅沢だ。
普段はあのメイドさんも利用しているのかな?
「マリア様、お身体を流させてい頂きます」
「うわぁ!? ど、どうしてここに居るの? しかも、その服のままで!?」
耳に息が当たるくらい近くで、ルナさんはさも当然と言うばかりに音もなく、いつのまにか私の隣に存在していた。
ビックリしたなぁ、もう……。
「何をそんなに驚いておらっしゃるのですか? メイドは普通、背中を流すものですが」
「そ、そうだったんですね。記憶喪失なものでそういう常識みたいなものは忘れてしまっているんですよね。あはは……」
驚いているのを不思議がり、ただ淡々と普通を喋るだけ。
私はその普通を知らない。なので苦笑いをしながら自分の後頭部を手でを抑える。
「それは大変失礼致しました。もし、よろしければ常識をお教え致しますが、どうなさいますか?」
「本当ですか! 是非、お願いしたいです!」
棘のある言い方だけど、この世界の常識を知らない私にとっては嬉しい提案だった。
私は二つ返事でお願いする。
「分かりました。では明日からみっちりとお教え致しますので、そのつもりで」
「え、あ、いやっ。みっちりじゃなくて、それとなーく教えてくれれば大丈夫です」
二つ返事をする私の姿勢がルナさんの中に眠る何かを目覚めさせてしまったのか、静かに闘志を燃やしてしまった。
私は慌てて手をバタバタさせ、みっちりでなくても大丈夫なことを伝える。
「いえ。グラダラスに仕えるメイドとしてみっちりガッチリとお教え致します」
「な、何か増えてる気がするんですけど……」
だがその行為は逆効果になってしまい、ガッチリも追加されてしまった。
「何も増えては御座いません。ささっ、お背中お流し致します。こちらへどうぞ」
そう言うと私の肩を掴み、無理やり洗い場まで連行していく。
力が入っている訳でもないのに、抵抗できず、あっという間に洗い場まで辿り着いた。
これもメイドの力なのか……。
洗い場の備え付けのイスに座ったまま、後ろでは忙しなくルナさんが私の身体を洗ってくれている。
一瞬、獣耳と尻尾に戸惑いを見せていたが、獣耳はシャンプーで、尻尾はボディソープで洗ってくれていた。
その際に自分の顔を改めて確認する。
やっぱり大学生だった頃とは違い、中学生ぐらいの私の姿だ。
胸も……幼い。って言っても元々そこまで発育はよくない。
黒髪黒目の日本ではごくごく普通の女の子。
逆にこの世界では黒髪というとゴルデスマンさんくらいしか見かけていない。
珍しいのかな?
「前も洗いましょうか?」
「いや、前は自分で出来ます!」
洗い場に備え付けてあったボディソープの容器を何度もプッシュしてすぐに自分の身体を洗う。
流石に前は恥ずかし過ぎるよ……。
自分で洗っている鏡に映っていたのはルナさんの鋭い視線で、それがずっと私を見ているので凄く凄く洗いづらかった。
でもその後の温泉は熱過ぎず冷た過ぎず、丁度良かった。
あの時、川で溺れかけたので今回も溺れるかと思ったけど、杞憂で終わる。
ヒックさんは何日かはグラダラスに滞在するようで暇だったらまた会いに来て欲しい、と言ってくれた。
出来れば魔法の基礎的なものを教えて欲しいのでまた会いに行きたいね。
「失礼します」
ベッドで横になり寛いでいると、ノックをしてメイドさんが入ってくる。
見た目は若く、背丈なんかも私より少し高いくらいで、もえぎ色のショートヘアにもえぎ色の瞳……それから昔ながらのロングスカートのメイド服……確かエルにおじいちゃんが来ることを教えてた人だよね。
「本日より、マリア様のお世話をさせて頂く、ルナと申します。以後お見知りおきを」
彼女は深く頭を下げた。
丁寧に挨拶をしているのだが、感情が篭っておらず定型文というかマニュアル通りというか……私を見る目は氷のように冷たく、それでいて鋭い。
「あ、どうも。マリア・スメラギです」
ベッドから立ち上がり頭を下げる。
寛いでいるのは絶対に許さない、そんな雰囲気を感じ取ってしまった。
無理もない。今私はこの国の脛を齧って生きているような状態。
そんなのをこの国の王様に仕えるメイドさんは快く思わないだろう。
「お時間は少々早いですが、お風呂をご用意させて頂きました。どうなさいますか?」
首を傾げ、右の頬には右の人差し指を当てちゃったりして訊ねられる。
仕草は可愛いのだが、つんざく視線が全然可愛くない。
これは遠回しに「臭いから風呂入れ」って言ってるんだよね。
もう何日もお風呂に入っていないし、私もそろそろ入りたいと思っていた。
でも膝丈の川に入るだけで溺れかけていた私は湯船に使っても大丈夫なのだろうか。
「お、お願いします」
不安を胸に秘めたまま恐る恐る頷いた。
「では案内致します。着いてきてください」
私は彼女に着いていき、そのまま大浴場へと案内されるのだった。
☆
「うわ、でっっっっか!」
私は只今絶賛全裸である。
それは大浴場に居るからである。
でも流石にバスタオルは巻いている。
大浴場はオレンジ色というかピンクというか暖かなイメージがするタイルと壁が使われている場所で、よくある四角い温泉があり、絶えずお湯が流れている。
源泉かけ流し、とか言うやつだろうか。
今ここを利用しているのは私しかおらず、このバカでかい大浴場を一人で使えるとはとても贅沢だ。
普段はあのメイドさんも利用しているのかな?
「マリア様、お身体を流させてい頂きます」
「うわぁ!? ど、どうしてここに居るの? しかも、その服のままで!?」
耳に息が当たるくらい近くで、ルナさんはさも当然と言うばかりに音もなく、いつのまにか私の隣に存在していた。
ビックリしたなぁ、もう……。
「何をそんなに驚いておらっしゃるのですか? メイドは普通、背中を流すものですが」
「そ、そうだったんですね。記憶喪失なものでそういう常識みたいなものは忘れてしまっているんですよね。あはは……」
驚いているのを不思議がり、ただ淡々と普通を喋るだけ。
私はその普通を知らない。なので苦笑いをしながら自分の後頭部を手でを抑える。
「それは大変失礼致しました。もし、よろしければ常識をお教え致しますが、どうなさいますか?」
「本当ですか! 是非、お願いしたいです!」
棘のある言い方だけど、この世界の常識を知らない私にとっては嬉しい提案だった。
私は二つ返事でお願いする。
「分かりました。では明日からみっちりとお教え致しますので、そのつもりで」
「え、あ、いやっ。みっちりじゃなくて、それとなーく教えてくれれば大丈夫です」
二つ返事をする私の姿勢がルナさんの中に眠る何かを目覚めさせてしまったのか、静かに闘志を燃やしてしまった。
私は慌てて手をバタバタさせ、みっちりでなくても大丈夫なことを伝える。
「いえ。グラダラスに仕えるメイドとしてみっちりガッチリとお教え致します」
「な、何か増えてる気がするんですけど……」
だがその行為は逆効果になってしまい、ガッチリも追加されてしまった。
「何も増えては御座いません。ささっ、お背中お流し致します。こちらへどうぞ」
そう言うと私の肩を掴み、無理やり洗い場まで連行していく。
力が入っている訳でもないのに、抵抗できず、あっという間に洗い場まで辿り着いた。
これもメイドの力なのか……。
洗い場の備え付けのイスに座ったまま、後ろでは忙しなくルナさんが私の身体を洗ってくれている。
一瞬、獣耳と尻尾に戸惑いを見せていたが、獣耳はシャンプーで、尻尾はボディソープで洗ってくれていた。
その際に自分の顔を改めて確認する。
やっぱり大学生だった頃とは違い、中学生ぐらいの私の姿だ。
胸も……幼い。って言っても元々そこまで発育はよくない。
黒髪黒目の日本ではごくごく普通の女の子。
逆にこの世界では黒髪というとゴルデスマンさんくらいしか見かけていない。
珍しいのかな?
「前も洗いましょうか?」
「いや、前は自分で出来ます!」
洗い場に備え付けてあったボディソープの容器を何度もプッシュしてすぐに自分の身体を洗う。
流石に前は恥ずかし過ぎるよ……。
自分で洗っている鏡に映っていたのはルナさんの鋭い視線で、それがずっと私を見ているので凄く凄く洗いづらかった。
でもその後の温泉は熱過ぎず冷た過ぎず、丁度良かった。
あの時、川で溺れかけたので今回も溺れるかと思ったけど、杞憂で終わる。
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