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王立魔法学園編Ⅰ
初めてのクラスにて
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「マリア・スメラギです。気軽にマリア、とお呼びください。詳しくお話することは出来ませんが、とある国から王都へと参りました。仲良くしてくれると嬉しいです」
最後に制服のスカートの裾をちょこんと摘み、私は一礼する。
今、私は王立魔法学園にある自分の教室、つまりは王族や貴族が通う教室だ。
その教室にある教壇の前に立ち、これから苦楽を共にするであろう同級生に自己紹介をしていた。
私を抜かすとこのクラスの生徒は十七人で、この中に獣人やエルフは居ない。同じ制服を着ているのに身なりの良さが伝わるのだ。
王立魔法学園も茶色を基調とした造りで、廊下はハリウッドさながらの赤い絨毯が敷かれていた。
新しい環境、新しい場所……期待もあるけど不安や緊張の方がまだまだ大きい。
前世の記憶や獣人モドキなのを差し引くと、大して自己を紹介するような内容は全くもってこれっぽっちもない。
なので当たり障りのない挨拶を心掛けるだけ。
こういうみんなの注目を集めるイベントごとが苦手だし、浮くと困るのでとりあえずそこら辺は細心の注意を払った。
ヒックさんがくれたブレスレットも常に付けているので友達のミレッタだけでなく、このクラスの人は私が獣耳と尻尾が生えていることは知らない。
「みなさん、仲良くするように。では、マリアさん。あちらの席へどうぞ」
白髪混じりのベテラン教師、レナ・クリフォード先生が私の席を指差す。
それは窓辺の奥の席。大学の教室のように奥に行けば行くほど席が高くなる。
どうしてこんな作りになっているのか不思議だけど、身長差があって前の人が邪魔で黒板が見えない、なんてことを配慮していたのかな。
「分かりました」
軽く頭を下げて教団から解放される。
私の席に向かうために歩いていると、一人の生徒が私が通る瞬間に足を出す。
俗に言う虐めでしょうね。
私も舐められたものだ。
見ると足を出していたのは明らかに身体の肥えた金髪オールバックのいやらしい顔をした男の姿だった。
わざと引っかかり転ぼうかとも思ったが、みんなに笑われるのはムカつく。
思いっきり踏んでやろうとも考えたが、波風を立たせたくないし、仮にも同じクラスの生徒なので、彼以外の誰かに難癖をつけられるのも癪だ。
なのでその場でジャンプして席に着席する。
もちろんスカートの中を見られたくなかったから見えないようにしっかりと抑え、縦に一回転させた。
「マリアさん?」
「す、すみません。よろけて転びそうだったもので」
いきなり飛んだものだからレナ先生は物凄く驚いていた。
無理もない。私だって生徒がいきなり飛んだらビックリするよ。
「大丈夫ですか? ふむ。それでは今日の授業を始めます」
大丈夫かと訊ねられたのでゆっくりと頷いてみせると、私にとって初めての授業がいよいよ始まりを迎える。
☆
「だは~、疲れたぁ」
一番後ろの席なので前の人と隣の人が席を立って離れた瞬間、私は盛大な溜め息を吐く。
いち講義は丸々二時間で私語も厳禁な上にスマホすら存在しないので時間を潰すことも出来ず、ルナから聞いていたことの復習ばかりだったので退屈だった。
それでも新しく来た私のために教えてくれていると思うと、寝てはいられなかった。
定期的に私を見てくるし……そりゃ疲れるよね。
「おい、お前」
机に突っ伏している私に向かって誰かが声を掛けてくる。
声を掛けられる前から私に向かってきているのは分かっていた。
逃げようかとも思ったけれど、逃げ癖がつくのも良くない。
「如何されましたか?」
姫君設定なのを忘れないようにしたたかに、それでいてお淑やかに声の主に訊ねる。
それは私の足を引っ掛けようとしていた金髪オールバックのいやらしい男の姿だった。
同じぽっちゃりのアルとは違い、滲み出る憎悪が私の第六感を刺激する。
きっと難癖つけて私をこのクラスのカースト最下位へと推しやりたいのでしょうね。
「ふっ、気に入った。俺様の女になれ」
腕を組みながらいやらしい目で私をつま先から頭のてっぺんまで見渡すと、彼はそうほざいた。
最後に制服のスカートの裾をちょこんと摘み、私は一礼する。
今、私は王立魔法学園にある自分の教室、つまりは王族や貴族が通う教室だ。
その教室にある教壇の前に立ち、これから苦楽を共にするであろう同級生に自己紹介をしていた。
私を抜かすとこのクラスの生徒は十七人で、この中に獣人やエルフは居ない。同じ制服を着ているのに身なりの良さが伝わるのだ。
王立魔法学園も茶色を基調とした造りで、廊下はハリウッドさながらの赤い絨毯が敷かれていた。
新しい環境、新しい場所……期待もあるけど不安や緊張の方がまだまだ大きい。
前世の記憶や獣人モドキなのを差し引くと、大して自己を紹介するような内容は全くもってこれっぽっちもない。
なので当たり障りのない挨拶を心掛けるだけ。
こういうみんなの注目を集めるイベントごとが苦手だし、浮くと困るのでとりあえずそこら辺は細心の注意を払った。
ヒックさんがくれたブレスレットも常に付けているので友達のミレッタだけでなく、このクラスの人は私が獣耳と尻尾が生えていることは知らない。
「みなさん、仲良くするように。では、マリアさん。あちらの席へどうぞ」
白髪混じりのベテラン教師、レナ・クリフォード先生が私の席を指差す。
それは窓辺の奥の席。大学の教室のように奥に行けば行くほど席が高くなる。
どうしてこんな作りになっているのか不思議だけど、身長差があって前の人が邪魔で黒板が見えない、なんてことを配慮していたのかな。
「分かりました」
軽く頭を下げて教団から解放される。
私の席に向かうために歩いていると、一人の生徒が私が通る瞬間に足を出す。
俗に言う虐めでしょうね。
私も舐められたものだ。
見ると足を出していたのは明らかに身体の肥えた金髪オールバックのいやらしい顔をした男の姿だった。
わざと引っかかり転ぼうかとも思ったが、みんなに笑われるのはムカつく。
思いっきり踏んでやろうとも考えたが、波風を立たせたくないし、仮にも同じクラスの生徒なので、彼以外の誰かに難癖をつけられるのも癪だ。
なのでその場でジャンプして席に着席する。
もちろんスカートの中を見られたくなかったから見えないようにしっかりと抑え、縦に一回転させた。
「マリアさん?」
「す、すみません。よろけて転びそうだったもので」
いきなり飛んだものだからレナ先生は物凄く驚いていた。
無理もない。私だって生徒がいきなり飛んだらビックリするよ。
「大丈夫ですか? ふむ。それでは今日の授業を始めます」
大丈夫かと訊ねられたのでゆっくりと頷いてみせると、私にとって初めての授業がいよいよ始まりを迎える。
☆
「だは~、疲れたぁ」
一番後ろの席なので前の人と隣の人が席を立って離れた瞬間、私は盛大な溜め息を吐く。
いち講義は丸々二時間で私語も厳禁な上にスマホすら存在しないので時間を潰すことも出来ず、ルナから聞いていたことの復習ばかりだったので退屈だった。
それでも新しく来た私のために教えてくれていると思うと、寝てはいられなかった。
定期的に私を見てくるし……そりゃ疲れるよね。
「おい、お前」
机に突っ伏している私に向かって誰かが声を掛けてくる。
声を掛けられる前から私に向かってきているのは分かっていた。
逃げようかとも思ったけれど、逃げ癖がつくのも良くない。
「如何されましたか?」
姫君設定なのを忘れないようにしたたかに、それでいてお淑やかに声の主に訊ねる。
それは私の足を引っ掛けようとしていた金髪オールバックのいやらしい男の姿だった。
同じぽっちゃりのアルとは違い、滲み出る憎悪が私の第六感を刺激する。
きっと難癖つけて私をこのクラスのカースト最下位へと推しやりたいのでしょうね。
「ふっ、気に入った。俺様の女になれ」
腕を組みながらいやらしい目で私をつま先から頭のてっぺんまで見渡すと、彼はそうほざいた。
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