出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

文字の大きさ
34 / 66
王立魔法学園編Ⅰ

初めてのクラスにて

しおりを挟む
「マリア・スメラギです。気軽にマリア、とお呼びください。詳しくお話することは出来ませんが、とある国から王都へと参りました。仲良くしてくれると嬉しいです」

 最後に制服のスカートの裾をちょこんと摘み、私は一礼する。

 今、私は王立魔法学園にある自分の教室、つまりは王族や貴族が通う教室だ。
 その教室にある教壇の前に立ち、これから苦楽を共にするであろう同級生に自己紹介をしていた。
 私を抜かすとこのクラスの生徒は十七人で、この中に獣人やエルフは居ない。同じ制服を着ているのに身なりの良さが伝わるのだ。

 王立魔法学園も茶色を基調とした造りで、廊下はハリウッドさながらの赤い絨毯が敷かれていた。
 新しい環境、新しい場所……期待もあるけど不安や緊張の方がまだまだ大きい。

 前世の記憶や獣人モドキなのを差し引くと、大して自己を紹介するような内容は全くもってこれっぽっちもない。
 なので当たり障りのない挨拶を心掛けるだけ。
 こういうみんなの注目を集めるイベントごとが苦手だし、浮くと困るのでとりあえずそこら辺は細心の注意を払った。

 ヒックさんがくれたブレスレットも常に付けているので友達のミレッタだけでなく、このクラスの人は私が獣耳と尻尾が生えていることは知らない。

「みなさん、仲良くするように。では、マリアさん。あちらの席へどうぞ」

 白髪混じりのベテラン教師、レナ・クリフォード先生が私の席を指差す。
 それは窓辺の奥の席。大学の教室のように奥に行けば行くほど席が高くなる。
 どうしてこんな作りになっているのか不思議だけど、身長差があって前の人が邪魔で黒板が見えない、なんてことを配慮していたのかな。

「分かりました」

 軽く頭を下げて教団から解放される。
 私の席に向かうために歩いていると、一人の生徒が私が通る瞬間に足を出す。

 俗に言う虐めでしょうね。

 私も舐められたものだ。
 見ると足を出していたのは明らかに身体の肥えた金髪オールバックのいやらしい顔をした男の姿だった。

 わざと引っかかり転ぼうかとも思ったが、みんなに笑われるのはムカつく。
 思いっきり踏んでやろうとも考えたが、波風を立たせたくないし、仮にも同じクラスの生徒なので、彼以外の誰かに難癖をつけられるのも癪だ。

 なのでその場でジャンプして席に着席する。
 もちろんスカートの中を見られたくなかったから見えないようにしっかりと抑え、縦に一回転させた。

「マリアさん?」
「す、すみません。よろけて転びそうだったもので」

 いきなり飛んだものだからレナ先生は物凄く驚いていた。
 無理もない。私だって生徒がいきなり飛んだらビックリするよ。

「大丈夫ですか? ふむ。それでは今日の授業を始めます」

 大丈夫かと訊ねられたのでゆっくりと頷いてみせると、私にとって初めての授業がいよいよ始まりを迎える。

 ☆

「だは~、疲れたぁ」

 一番後ろの席なので前の人と隣の人が席を立って離れた瞬間、私は盛大な溜め息を吐く。
 いち講義は丸々二時間で私語も厳禁な上にスマホすら存在しないので時間を潰すことも出来ず、ルナから聞いていたことの復習ばかりだったので退屈だった。
 それでも新しく来た私のために教えてくれていると思うと、寝てはいられなかった。
 定期的に私を見てくるし……そりゃ疲れるよね。

「おい、お前」

 机に突っ伏している私に向かって誰かが声を掛けてくる。
 声を掛けられる前から私に向かってきているのは分かっていた。
 逃げようかとも思ったけれど、逃げ癖がつくのも良くない。

「如何されましたか?」

 姫君設定なのを忘れないようにしたたかに、それでいてお淑やかに声の主に訊ねる。
 それは私の足を引っ掛けようとしていた金髪オールバックのいやらしい男の姿だった。
 同じぽっちゃりのアルとは違い、滲み出る憎悪が私の第六感を刺激する。
 きっと難癖つけて私をこのクラスのカースト最下位へと推しやりたいのでしょうね。

「ふっ、気に入った。俺様の女になれ」

 腕を組みながらいやらしい目で私をつま先から頭のてっぺんまで見渡すと、彼はそうほざいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...