出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

文字の大きさ
33 / 66
王立魔法学園編Ⅰ

お友達

しおりを挟む
 寮の一室を宛てがわれた。
 建物を正面から見て三階の一番左奥、茶色を基調とした部屋。

 何処かの国の姫君だと思われているので部屋はグラダラスにいた頃と同じくらい広く……ううん、それ以上だね。
 寝室とトイレにお風呂、それからちょっとした部屋がセットになっている。
 友達が出来ても自分の部屋に招待して遊ぶことは可能だ。
 これだけ立派なら家賃も高いのかと思ったけど学長曰く「他の生徒と料金は同じ」らしい。
 これでひと月の家賃でゼスオジから貰ったお金が全て無くなる、なんて心配なさそう。
 ヒックさんは私の部屋に今日買った物を運ぶと「グラダラスを見てくるね」と言って消えてしまった。

 それから学長自ら寮や学園のことを教えて貰っていると私の制服も到着していたようで明日からいよいよ学園に通うことになってしまったのだ。

 学生が疎らな時間にさっさと夜ご飯を済ませた私は、自分の部屋で考え事をしている。
 あ、ちなみに朝晩は寮でご飯が出る。
 おかわり自由でお残しは厳禁。不意にしゃもじを持ったオバサンが脳裏に過ぎった。

「流石に……流石にもうグラダラスには着いたよね」

 私が連行されていたのが深夜だとしても何も無ければ同じ時間で帰って来れる。
 ううん、あのお尻が確実に痛くなりそうな速度ならもっと速く着いてそう。
 ヒックさんも確かめに行ってくれたし、早くても明日には分かるはず。

「アルも無事だといいけどね」

 これが全て私の杞憂で実は身代金が目当てで私を誘拐していただけ、なんてことだったらちょっと笑っちゃうけど。
 でもあの国に私はまだ行っちゃダメだ。

「これをどうにかしないとね」

 部屋には化粧台も備え付けられているのでそこにある椅子に座って私の姿を見る。
 黒髪の長髪、黒目、黒の獣耳に猫なのか疑わしい太めの黒い尻尾。
 何度見ても無くならないしこれが現実だと突き付けてくる。

 王立魔法学園は魔法に特化した学園だ。
 その学園で私は自分のこの獣術とやらを理解し、願わくば消し去ってやりたい。
 もしかしたらここならばヒックさんのように獣術を知っていて、さらには詳しい人が居るかもしれない。

 でも自分が獣人モドキだと言うのは絶対に秘密だ。
 ヒックさんにも「極力ブレスレットは外さないようにね」と念も押されている。
 なんでもこのブレスレットはアーティファクトと言う代物らしい。
 ルナからはそのことについて何も習っていないので貴重な物としか認識出来ていない。

 人様に見せるのも狙われる心配があるので制服で見えないようにしておかないと。

「と、私は思ってその制服を着てみることに~。いやぁ、寮に入る前も入ってからも可愛いと思ってたんだよねぇ」

 制服を着るだなんて何ぶりだろう。
 二年くらいは着てないのかな。
 中学生の、となるともっと前だ。
 当時はどうしてあんなダサいのを着なきゃいけないの、なんて思っていたけど卒業してから制服は可愛い物だと理解した。

 何でも制服を着ることで仲間意識を芽生えさせるとかなんとか理由を付けてはいるが、先生が可愛い制服を着た生徒を見たいだけだろうと今の私は考える。
 ザ・歪んでしまったよ、あぁ歪んでしまったさ。

 それもこれも転生させたあのくそ女神様……略してくそメガが悪い。

「ふむ。私でも似合う」

 制服を着てみた。可愛い。
 でもルナや他のメイドさんに比べたらまだまだだね。
 美人になる魔法とかあったりしないのだろうか。

 なんて考えていると部屋のドアをノックされる。
 誰だろう? ヒックさんかな?

「はーい。今行きまーす」

 制服に身をまとった可愛い私はそのまま部屋のドアを開ける。
 するとそこに居たのは深緑の長髪三つ編み、深緑の瞳、それでいて黒縁のメガネを掛けた気が弱そうな女の子だった。
 背丈は私と同じくらいだからきっと歳もそれぐらいなのかな。

「は、初めまして。ミレッタと言います。バーン学長さんにマリアさんのお世話を頼まれました。ご飯はもう食べてしまいましたか?」
 
 分厚い本を抱えながらあからさまに緊張しているのが分かる。
 学長からは何も聞かされていなかったが、姫君と言う設定になっているからかお世話係を用意されてしまったのかな。
 だけどこの街だけじゃなくこの世界についての常識は完璧では無いので、有難いっちゃ有難いけど、この子に申し訳ないね。
 ご飯も食べちゃったし。断るのも何だか気が引ける。
 何よりこの子を一人でラウンジまで行かせるのも可哀想。

「あ、これはこれはご丁寧にどうも。マリア・スメラギと言います。私のことはさん付けしないでマリアでいいですよ。代わりにミレッタって呼んでもいいかな?」
「は、はひ!」

 あ、舌噛んでる。
 痛そうにはしてないけど、あれは絶対我慢してる。
 学長まだ下にいるかな? 治癒魔法でも掛けてもらおう。

「あー、それとご飯はもう食べちゃったんだけど、聞きたいこともあるし、ミレッタについてってもいいかな?」
「も、もちろんです!」

 ミレッタと一緒にラウンジまでやってきて、偶然帰ってきたらしい学長にミレッタの舌を治してもらい、ミレッタだけご飯を食べているのを眺めているのもアレなので向かい合うようにして座り、私は少しだけ少しだけ! ご飯を食べながら会話をする。

 寮のご飯が美味しい。
 これは由々しき事態なのだ。
 移動先は隣にある学園だけ。
 気を緩めると今日買ったばかりのお洋服が入らなくなりそう……。

「あ、ありがとうございました。マリアがバーン学長さんに言ってくれなければ今頃悶えながらご飯を食べているところでした」

 魚介が沢山入ったパスタを食べながらお礼を言われる。
 ご飯が染みそうなほど舌を噛んでいたらしく、ずっと我慢しているとは何とも我慢強い子なのでしょうか。
 私なら叫び散らかしているはずだ。

「ううん、原因は作ったのは私だし気にしないで。それよりミレッタは私と同じクラスなんだよね?」

 だからきっと私のお世話をして欲しいと学長は言ってきたのだろう。
 そんな私の浅はかな考えはすぐに覆される。

「ち、違いますよ? 王族と貴族は同じクラスですが、平民の私は同じクラスではありません。で、でもマリアが良ければ一緒に登校しませんか?」
「そっか……クラスが違うのは残念だけど、一緒に通ってくれるなら喜んで! 王都に来て初めてのお友達だよぉ。改めてよろしくね」

 まさかのまさか、王族扱いになっている私はミレッタとはクラスが同じではないよう。
 ってことはミレッタは平民の子になるんだね。
 王都での初めてのお友達が同性でミレッタのように平凡な子で良かった。
 一緒に学園にも行ってくれるって言っているし、寝坊をして転入早々遅刻なんてことは回避出来そう。

 嬉しくて私はミレッタに向かって手を伸ばしていた。

「よ、よろしくお願いします」

 覚束無い笑顔を浮かべて私の手を取る。
 ミレッタとなら仲良くなれそう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...