出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

文字の大きさ
57 / 66
王立魔法学園編Ⅱ

再燃

しおりを挟む
 布と布が擦れる音がして目を覚まし、天井と目が合う。

「……そっか。魔力が尽きて寝ちゃってたのか」

 工房の中の魔道具らしきものが乗っかっていた場所はベッドだったようで私はベッドに横にされていた。
 その薄暗い工房の中でせっせと作業をするターシャさんの姿があった。
 起き上がりターシャさんの元へ向かう。

「おや、目を覚ましたかい?」

 私が起きたのに気付いたのか一度こちらを見て話すと再び作業に戻っている。
 何を作っているのか覗いてみると、それは私が寝ていたベッドに置かれていた作りかけの人形だった。

「どうやら魔力が切れて力尽きたみたいです。すみません」
「こちらこそ済まなかったねぇ。まさか本当に三歳児以下の魔力量だとは思わなかったよ」

 でしょうね。私はこの世界の人間ではないから魔力量も驚くほど少ないのだろう。

「私が編み物に集中し過ぎてたのが悪いんで気にしないでください。所で何を作ってるんですか?」

 ターシャさんの着ている濃い紫色と同じ色のワンピースを着た長髪金髪の女の子の人形。
 きっとそれも魔道具の一種なのかな?

「恥ずかしい話だけど、老いるまであたいは魔道具とアーティファクトにしか目がなくてね。でもある時、ふとこう思ったんだ『子供が欲しい』ってね」

 返ってきた言葉は意外なもので、ターシャさんはおばあちゃんになってから子供が欲しくなったそう。
 私も何かに熱中しちゃったりして気が付いたら婚期を逃し、子供が欲しくても産めないほど老いてしまったりしちゃいそうだね。
 ターシャさんを反面教師にしよう。

「それで作ってはみたんだが、魔道具レベルしか作れないあたいには人間そっくりの人形を作るのは厳しいと諦めてたんだ」

 過去形になってるの少し気になるね?

「でもマリアを見てたらまた再燃してね」
「は、はぁ。私、お人形っぽいんですか?」
「人形どころか結婚も出産もしてないのにまるで孫が出来た気分だね」

 ターシャさんも私と同じことを考えていたようだ。
 それを聞いて思い出す。

「あ、それで魔法の木箱に沢山魔石なんかをくれたんですね。お礼を言い忘れてました。ありがとうございます」

 孫という単語を聞いて今朝初めに言おうてしていたことを思い出し、ターシャさんに頭を下げてお礼を言う。

「あたいが好きでやってるんだから気にしないでおくれ」
「それでもお礼は大事です」

 感謝の気持ちは伝えないと本人には伝わらないからね。

「ほほっ、マリアは律儀だね」

 まるで本当に孫を見るような目で私を見つめ何が面白かったのか分からないけど笑われた。
 少し気恥しさもある。

「普通ですけどね。それでその髪を縫い終われば完成なんですか?」

 なので人形が完成するのか訊ねる。

「人形としてはこれで完成だろうね。はい、これ。今日の分だよ。もう外は真っ暗になってしまったからすぐにお帰り」
「おおっと!? もうそんな時間でしたか、ありがとうございます。ターシャさん、また来ますね」

 人形を作る手を止め、ターシャさんは私に金貨が入った小袋を手渡してくる。
 前回は魔法の木箱に入れていたので重たく感じなかったけど、今回はずっしりして重い。

 ほとんど寝てたようなもんだけどこんなに貰っても大丈夫なのかな?

 なんて思うが聞くのは返ってターシャさんに悪いはず。
 私は笑顔でお礼を言うとすぐにターシャさんのお店を出る。
 隣のお花屋さんからは今日の夕食なのか美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。

 私も早く帰ってご飯を食べねば!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...