出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

文字の大きさ
58 / 66
王立魔法学園編Ⅱ

魔核

しおりを挟む

「魔道具は想像力が大事なんだ」
「あ、おはようございます」

 私が来るのを待っていたのかドアを開けると目の前にはターシャさんの姿があった。

 普通に怖いし、普通に驚くからやめて欲しい。
 でも何となく想像出来ていたので心の準備はドアを開ける前にしっかりとしていた。
 お陰で平常心を保ち、普通に挨拶が出来る。

 濃い紫色のローブが目元まで隠れているのはターシャさんが老化で縮んでしまったのかそれとも魔女ぽさを演出させるためなのか。
 何にせよそれが相まって怖かった。

「生きていく上でも時には違った観点から見てみたり、寄り道をしてみるのも近道に繋がっているかもしれないのさ」
「話は後で聞きますから退いてください。私が中に入れないです」

 私に過度な期待を抱いてしまったのか、それとも孫のように可愛がっているつもりなのか。
 どちらにせよドアの前で立たれると私が中に入れないし、このままの状況だと隣のお花屋さんの人や通行人が不審がりそう。

「おや、済まないね。さぁ今日もビシバシ教えていくよ!」

 避けることはなく、私の首根っこを掴むとすぐさま工房に向かっていく。

 なんだか今日のターシャさんはいつもより気合いが入っているように思えた。

 ☆

「本来ならば魔力を通さないと光らない。だがこれに入れると──ほら、光った。このようにして魔力を使わずに使用するには訳があるんだ。どうしてか分かるかい?」

 工房に着いて前回と同様に編み物をしているとターシャさんが工房の片隅にあったランタンをいきなり手にして加工された魔石を中に入れていた。
 すると、ランタンは眩い光をあげる。
 その光景を目の当たりにしているとターシャさんはどうして魔力を使わずに使用する理由があるのか訊ねられる。

 はっきり言って分かる訳がない。

「私みたいに魔力が少ない人もいるから、ですか?」

 なので私が想像出来る範囲で答える。

「中にはそう言う人も居るだろうがそうではない。極力魔力を温存しておきたい理由があるんだ。魔物を倒す前に魔力が切れたらお終いだし、倒してから魔力切れを起こしてしまうかもしれないからね」

 なるほど。確かに魔物と戦う前に魔法で辺りを照らして魔力切れを起こしてしまったら元も子もない。
 それに魔物を倒して魔力切れで夜道が分からずまた別の魔物に襲われてしまう、なんて恐れも捨てきれないね。

「──だが何も倒すのは魔物だけとは限らない。政権争いで人が人を殺すことだって日常茶飯事さ」

 グラダラスに居た頃の記憶がフラッシュバックする。
 あれからどうなったのか分かってはいないが、獣と人のハーフである獣人ですら躊躇わずに殺してしまう人もいる、だから人を殺すのに躊躇しない人も居るでしょうね。 
 
「は、はぁ……」

 グラダラスのことばかりが脳裏に過り少し気分はブルーになる。

「あたいの創った魔道具も気付かないうちに人を傷つけているかもしれない。もし、マリアが将来あたいのように魔道具を売って生計を立てたいのなら覚えておくんだね」
「肝に銘じておきます」

 確かに包丁などの刃物は便利ではあるがそれを逆手に取り凶器に使われることが多い。
 きっと、ターシャさんは私にそう伝えたかったのでしょうね。

「さて、今日はもう仕事は終わりでいいよ。その代わりあたいの作った人形を見てくれないかい?」
「完成したんですか!?」

 ブルーだった気持ちは一瞬のうちに散り散りになる。
 もうお仕事が終わりってことはお金が貰えるのでウキウキだし、それよりもターシャさんは自分の作っていた人形を見て欲しいと言ってきたってことは完成したってことでしょうね。
 
「後は魔核を入れるだけさ」

 聞いたことがないワードが聞こえた気がするが一体どんな仕上がりになっているのか楽しみだ。

 編み物をしていた道具などをさっさとテーブルの隅に避けるとターシャさんは人形をテーブルに座らせる。

 濃い紫色のワンピース、それから長髪金髪の可愛いお人形さん。
 背丈は私の半分くらいで、もしこれが自律するのならば可愛くて人気者間違いなしだね。

「これが魔核さ。これを作るだけで五年は掛かったかね」

 どうせ知らないとお見通しの私に向かって握りこぶし大の赤い宝石を見せる。
 魔核を作るだけで五年も掛かるだなんてきっと私には無理な芸当なのでしょうね。

 形は均等にボツボツと言うかゴツゴツとしていて表面だけを見ればゴルフボールのよう。
 だけど赤い宝石は綺麗なだけでなく惹き込まれる魅力があるのだ。

「ずっと見ていられると完成しないよ」
「ご、ごめんなさい」

 一体何分見ていたのか分からないが、私は魔核に魅了されていたようでターシャさんは苦笑いを浮かべ私に話し掛けていた。
 私は首を左右に振り正気を取り戻すと頭を下げてターシャさんに謝る。

「ほほっ、いずれマリアはあたいを越える人材になるさ」
「ターシャさんを越えるだなんて何千年生きたとしても厳しそうですけどね」

 自分が作った魔核を食い入るように見つめられたからかターシャさんは嬉しそうに笑い、いずれ私はターシャさんを越える人材になると言ってはいるが大雑把な所がある私にとって少々厳しい。

 未だに魔道具の何たるかが分かっていないし、単に魔力を使う必要がない便利な物、と言う認識だし。
 まぁただのお世辞でしょうけどね。

「これを背中から中に入れるんだ」

 人形のワンピースをたくし上げ、ターシャさんはなんの躊躇もなく人形の背中を開き、そこへ魔核を入れる。
 まるで人間で言うとこの心臓のようだね。

「今度こそ完成ですか?」
「あぁ、アリアの誕生さ」

 ワンピースを元に戻し、テーブルに座らせると嬉しそうにそう喋った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...