神様の錬金術

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

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失敗? それとも成功?

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 この島の生活にも慣れてきた。
 ルリは「もっと自分に何か出来ることはないか」と俺に訊ねてきたのでソーセージの作り方や効率的な魚の獲り方、手帳に書いてある素材の場所などを教えてくれた。

 着々と作れるものが増えてきたのだ。
 麻紐を使って、絹糸や綿糸も作れるので後は二人の力次第ではルリのおばあさんが作っていた服も作成可能になった。
 相変わらず錬金術を使った後の片付けは大変だけど、それよりも自分が新たな物を作れた時の高揚感は何にも変え難いものがある。

「錬金術って見る分には簡単そうよね」

 今は昼食を食べながら、ルビィがそんなことを口にする。
 ルビィはかなり好奇心旺盛で最初から手帳のことも気になっていたし、俺が錬金術をやる度に釜と俺を交互に見つめたりしていた。
 端的に言って興味があり自分でもやってみたいのだろう。

「そ、そんなことありませんよ。わ、私がおばあちゃんに教えてもらった時は……そ、それはもう大変でした」

 過去のトラウマが蘇ったのか身体をビクビクと震わせながら下を俯く。

 そんなに驚くことなのか?
 この間はルビィが卵を入れてくれたし、問題ないだろう。

「そろそろ虫除けも無くなってきそうだしお願い出来るか?」
「ふん、私に任せなさい!」

 ルビィは自分の胸を叩いてどうやらやる気のようだ。
 だが残念なことに胸は揺れない。
 ルリもルビィもまだまだ発展途上なのだ。

「ぴ、ぴぇい……」

 心配なルリの表情がこの時の俺は特段気にはしなかった。

 ☆

「火を起こすのも自分でやるのか?」
「もちろん。これでも洞穴の中じゃ毎日火を起こしてたんだから」

 昼食を食べ、だらだらと寛いだ後に俺とルビィは釜の前に立っていた。
 折角だからやる気が無くならないうちに錬金術をやらせてみたかったのだ。

「わ、私は麻を採取して来ますね!」

 ルビィが錬金術をやると分かった瞬間、血相を変えてルリは逃げるようにして家を出た。
 手には何も持っていなかったので相当慌てて出掛けてしまったのだろう。
 虫除けの錬金自体はそんなに時間が掛からないし、後で麻を入れるための麻袋を持って行ってやろう。

「火を起こせたわ。次は水を入れるのよね」

 後でルリに麻袋を持って行ってやろうと考えていると、ルビィは手際がよく薪を竈に入れ、火打石を使って火はボーボーと燃え盛っていた。

 その間、僅か十秒。

「火起こしならルリよりも速いな」
「当たり前でしょ。あの子はおっとりしてるからね」

 ツンツンしてはいるが、褒められて嬉しそう。

「バケツの水を入れてくれ」

 重いから俺が入れようかと思ったが、最初から最後までやりたそうにしていたので水の入ったバケツに指を差して指示する。

「こんなもんでいいのかしら?」
「うん。今回は少量でいいからそんなもんでいいと思うぞ。沸騰するまで待っててくれ」

 釜の水がグツグツと言うまで俺たちはじっと釜を見る。
 今のところ何の問題もないし、ルリの杞憂と言うやつだろう。

「よし、沸騰してきたな。次は──」
「この虫除け草を入れるのよね」
「あぁ、そうだ」

 ルビィは手際がいい。
 俺が教えなくても次は何をするのかよく分かっている。

 テーブルに置いてあった虫除け草をルビィは手に取ると釜の中へとボトボト投入していく。
 草の名前がなかったので俺たちでそう呼んでいた。

 少し多いような気がしなくもないが、誤差の範囲だろう。

「そしたらこれでかき混ぜてくれ」

 木の棒を手渡す。

「毎回思うけど、どうしてこの木の棒は混ぜたり杖にしたりしても折れたりしてないのかしら」
「言われてみれば確かにそうだな」

 木の棒を受け取ると、不思議そうに見つめた後に釜の中をかき混ぜる。
 俺とは違って変な声や歌は出ずに、ただひますら無言でかき混ぜてるだけ。

「あっ! 色が変わってきたわよ。錬金術って簡単じゃない。あんなにルリがビクビクしてたのがバカらしいわ」

 水の色が変わったことを嬉しそうに報告してくれる。
 俺もルビィが錬金術を使えるようで嬉しい。
 これなら俺が他の作業をしている時はルビィにお願い出来る。

 ……初めはそう思ってました。

「んなっ!? また色が、今度は真っ黒よ! ツバサ、何とかしなさい!?」

 円を描くようにかき混ぜていたルビィは水の色が段々と黒くなっていくのに驚き、俺の名を呼ぶ。
 かき混ぜてる手も円ではなく、左右上下にと慌てているのが分かるほど。

「な、何とかって言われてもな……」

 とりあえず竈の火を水で鎮火させる。
 これ以上続けても家の中が煙臭くなるだけだし。
 ルビィの錬金術は成功かと思われたが失敗に終わったのだ。

「んー、草の量がちょっと多かったのかな。それともお試しだから水を少なくしすぎたか?」

 どちらにせよ今回は俺にとっていい経験になった。
 自分で作る時はちゃんと手帳通りの分量でやった方がいい。
 前回のケーキはたまたま上手くいったのだろう。

「なっ……」

 なんて考えていると、ルビィが釜の前から動かない。
 まるでルビィだけ時間が停止してしまったかのようだった。

「ルビィ?」

 まさか失敗がそんなにショックだったのだろうか。
 こう見えてプライドが誰よりも高いからな。

「何よこれーーー!!!」

 島中に響き渡ったのではないかと思わせる声がルビィの口から発せられる。

「ど、どうしましたか!?」

 声を聞き付けたルリが一目散に帰ってきた。
 手には麻は一つも持たれていない。

「ルビィの錬金術が失敗したみたいでな、多分ショックで大声出したんだと思う」
 
 玄関先に居るルリに向かって事の顛末を伝えた。
 するとルリは俺ではなく、ルビィを見て目を丸くしている。
 どう声を掛けていいのか分からないのだろう。
 失敗は誰にでも付き物だ。今はショックでも数日、数年経てば笑い話になってくれる。

「つ、ツバサお兄ちゃん。る、ルビィちゃんを見てください!」
「なんだ?」

 ルリはあるルビィの一部分に向かって指を差していた。
 それはたわわに実った二つの果実。

「なっ!? る、ルビィ……まさか」
「もう! どうして私の胸が大きくなってるのよーーー!!!」
 
 再び劈く声が俺とルリを襲った。

 どうやら錬金術に失敗して、ルビィの胸が大きくなってしまったようだ。
 だが俺からの視点ならばこれは成功とも呼べるかもしれない。

 流石に今着ている服に胸は収まりきれないようで、今にもはち切れんばかりなのは言わない方が良いだろう。
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