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十七
「じゃあ、お休み。また明日ね」
「…はい、お休みなさいませ」
「……沙雪」
勘太郎の言葉に沙雪は小首を傾げ見上げる。
そんな沙雪の頬に触れ、勘太郎は軽くその頬をつまんで伸ばす。沙雪の表情に、何かを感じ取ったようである。
「僕に遠慮なんてしなくていいんだよ。君の言いたそうなことは解るけど、ちゃんと言葉に出して良いんだ」
「勘太郎さん…はい。あの、私…まだ一緒にいたい、です」
軽く俯きがちに呟く沙雪に、勘太郎は微笑み今度はよく出来ましたとばかりに伸ばした頬を戻して、そのまま撫でる。
「そんな可愛いお願い、僕が聞かない筈ないでしょう?」
「でも、余り我儘を言いたくなくて…」
幼い頃から人に優しく、我を出さぬよう、伯爵家の令嬢に相応しいよう、淑やかに、奥ゆかしくあれと育てられてきた沙雪。
育ての母ともいえる高山にとっては自慢のお嬢様へと育ったが、自己を押し殺すことばかり得意になってしまっているようにも、勘太郎は感じていた。
せめて自分の前でくらいは自由気ままな本来の沙雪でいてほしい。だから、沙雪が女学校へ入ったころから供を連れずにお茶をしようと誘うようになったのだ。
それが怜の逆鱗に触れてしまったのかもしれないが、それでも沙雪を外へ連れ出せたことは悪いことではないと勘太郎は思っている。
「僕にとって沙雪のお願いは我儘になんか思わない。むしろもっと言って欲しいくらいなんだよ。何でも叶えてあげたくなるくらい、僕は君に惚れ込んでいるんだ」
「勘太郎さん…ありがとうございます。すぐには難しいですけど…少しずつ、気持ちを素直に伝えられるようになりたいです」
「うん、いつでも待ってるよ」
勘太郎の笑みに嬉しそうに微笑み、沙雪はもう一つ我儘を言ってみることにした。
「勘太郎さん。早速、言ってみていいですか…?」
「ん、なんだい?」
「一緒に…寝たい、です」
「…………へ?」
「だめ、でしょうか?…いくら言ってもいいって言われても、こんな我儘はだめですよねっ。ごめんなさい、私ったら…」
「わー!違う!違うんだ沙雪!!嬉しいんだよ、その我儘はすっごく嬉しい!最高!なんだけど、一応僕も男子であるわけで…こう、いや、ちゃんとね!理性はある!大丈夫!沙雪の嫌がることは絶対しないけど…」
段々としょぼくれていく沙雪に慌てる勘太郎。
今度は勘太郎が段々と尻窄んでいく様に、沙雪も少々慌てて勘太郎の腕に触れる。
「ご無理なさらないで下さい。あの、昔からずっと一人で寝ていたので…誰かと一緒に寝てみたくて…勘太郎さんとなら、安心して眠れるかなと思ってしまったんです」
「沙雪…」
いじらしい沙雪のその言葉に、勘太郎はググっと腹に力を籠め決心した。
母親が生きていれば、物心つくまで位は共に眠ることはできたのだろう。けれど、沙雪の母が亡くなったのは彼女が生まれて一年も経たない頃。
育ての親として高山が傍に居たが、さすがの彼女も母親代わりといえど使用人。沙雪を寝かし付けたら部屋を辞してしまう。
それでも幼い頃は父である真も一緒に寝ていたであろうが、彼は多忙だ。
もしかしたら兄の怜が沙雪が泣いていれば共に寝ていたかもしれないが、記憶には無いようである。
ならば、彼女が頑張って発した初めての我儘を、己の欲を無理くり抑えに抑えつけてでも聞き届けようではないか。
もう一度決心を新たに、勘太郎はこくりと頷き沙雪の肩をそっと掴む。
「うん。わかった!一緒に寝よう」
「え、いいんですか?」
「せっかく沙雪が勇気を出して我儘を言ってくれてんだから。言ったでしょう?僕は君の我儘を何でも叶えてあげたいって」
軽く屈み、沙雪の頭をそっと撫でる。
これ以上ないほど嬉しそうに微笑む沙雪のその笑顔に、おねだりを受け入れてよかったと一人そっと頷く勘太郎なのだった。
「…はい、お休みなさいませ」
「……沙雪」
勘太郎の言葉に沙雪は小首を傾げ見上げる。
そんな沙雪の頬に触れ、勘太郎は軽くその頬をつまんで伸ばす。沙雪の表情に、何かを感じ取ったようである。
「僕に遠慮なんてしなくていいんだよ。君の言いたそうなことは解るけど、ちゃんと言葉に出して良いんだ」
「勘太郎さん…はい。あの、私…まだ一緒にいたい、です」
軽く俯きがちに呟く沙雪に、勘太郎は微笑み今度はよく出来ましたとばかりに伸ばした頬を戻して、そのまま撫でる。
「そんな可愛いお願い、僕が聞かない筈ないでしょう?」
「でも、余り我儘を言いたくなくて…」
幼い頃から人に優しく、我を出さぬよう、伯爵家の令嬢に相応しいよう、淑やかに、奥ゆかしくあれと育てられてきた沙雪。
育ての母ともいえる高山にとっては自慢のお嬢様へと育ったが、自己を押し殺すことばかり得意になってしまっているようにも、勘太郎は感じていた。
せめて自分の前でくらいは自由気ままな本来の沙雪でいてほしい。だから、沙雪が女学校へ入ったころから供を連れずにお茶をしようと誘うようになったのだ。
それが怜の逆鱗に触れてしまったのかもしれないが、それでも沙雪を外へ連れ出せたことは悪いことではないと勘太郎は思っている。
「僕にとって沙雪のお願いは我儘になんか思わない。むしろもっと言って欲しいくらいなんだよ。何でも叶えてあげたくなるくらい、僕は君に惚れ込んでいるんだ」
「勘太郎さん…ありがとうございます。すぐには難しいですけど…少しずつ、気持ちを素直に伝えられるようになりたいです」
「うん、いつでも待ってるよ」
勘太郎の笑みに嬉しそうに微笑み、沙雪はもう一つ我儘を言ってみることにした。
「勘太郎さん。早速、言ってみていいですか…?」
「ん、なんだい?」
「一緒に…寝たい、です」
「…………へ?」
「だめ、でしょうか?…いくら言ってもいいって言われても、こんな我儘はだめですよねっ。ごめんなさい、私ったら…」
「わー!違う!違うんだ沙雪!!嬉しいんだよ、その我儘はすっごく嬉しい!最高!なんだけど、一応僕も男子であるわけで…こう、いや、ちゃんとね!理性はある!大丈夫!沙雪の嫌がることは絶対しないけど…」
段々としょぼくれていく沙雪に慌てる勘太郎。
今度は勘太郎が段々と尻窄んでいく様に、沙雪も少々慌てて勘太郎の腕に触れる。
「ご無理なさらないで下さい。あの、昔からずっと一人で寝ていたので…誰かと一緒に寝てみたくて…勘太郎さんとなら、安心して眠れるかなと思ってしまったんです」
「沙雪…」
いじらしい沙雪のその言葉に、勘太郎はググっと腹に力を籠め決心した。
母親が生きていれば、物心つくまで位は共に眠ることはできたのだろう。けれど、沙雪の母が亡くなったのは彼女が生まれて一年も経たない頃。
育ての親として高山が傍に居たが、さすがの彼女も母親代わりといえど使用人。沙雪を寝かし付けたら部屋を辞してしまう。
それでも幼い頃は父である真も一緒に寝ていたであろうが、彼は多忙だ。
もしかしたら兄の怜が沙雪が泣いていれば共に寝ていたかもしれないが、記憶には無いようである。
ならば、彼女が頑張って発した初めての我儘を、己の欲を無理くり抑えに抑えつけてでも聞き届けようではないか。
もう一度決心を新たに、勘太郎はこくりと頷き沙雪の肩をそっと掴む。
「うん。わかった!一緒に寝よう」
「え、いいんですか?」
「せっかく沙雪が勇気を出して我儘を言ってくれてんだから。言ったでしょう?僕は君の我儘を何でも叶えてあげたいって」
軽く屈み、沙雪の頭をそっと撫でる。
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