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二十八
「遅いぞ沙雪。皆お待ちかねだぞ」
庭に出て園遊会の会場が近付けば、客人たちと話していた筈の怜がいち早く二人に気付き近寄ってくる。
態々近付いてきたのは、客人たちに聞かれたくない事があるからであろう。
案の定、二人に近づくなり怜は口を開いた。
「父上はああ言っていたが、俺はお前たちを認めないからな」
「お兄様の認可など必要ありません。私達の結婚に必要なのはお父様の認可であり、お父様から結婚の許可は頂きました。口出しは無用です」
キッパリと言い切り、沙雪は歩き出す。元から割とはっきりと自らの意見を持っている娘であったが、先ほどの書斎での一件と言い今と言い、一体沙雪に何が起きてしまったのかと思う程、沙雪はきっぱりと物を言うようになってしまった。
正直、今まで怜は沙雪を深窓の令嬢という言葉を体現したように奥ゆかしく、自らの心を押し殺してでも相手を立てる性格と思っていたが為に、沙雪に言い返されるとまず驚きで呆気としてしまう。
「失礼、怜さん」
沙雪の変わりように惚けていた怜であったが、勘太郎の言葉にハッと我に返り、沙雪について去ろうとする勘太郎の腕を掴んだ。
「…怜さん?」
「少し、話がある」
小さく言われ、勘太郎は仕方がないとばかりに歩き出した足を怜に向けてから、沙雪の頭を撫でた。
「勘太郎さん…」
「少し話してくるよ、先に行っておいで?」
心配そうに見上げてくる沙雪に笑みを向け、安心させるように頬を撫でる。その笑みと手のひらの温度に安心したように勘太郎の手のひらにすり寄り、微笑んで頷いた。
「彩ちゃんと、お話ししてお話しして待っています。早く来ないと二人で拗ねますからね?」
小さく頬を膨らませて呟く沙雪にくすくす笑いながら頷く。
「二人が拗ねると困ってしまうなぁ…。可愛いと思うからちょっと見たいけど」
笑いながら勘太郎はそっと沙雪の背を押し、会場の方へと送り出す。
一度歩き出すも立ち止まり、勘太郎に振り向き小さく手を振りながら微笑めば、沙雪は客人たちの待つ会場へ歩いて行った。
園遊会の会場は庭の一角をリボンで区切り設営されていた。春の花々が飾られ、白とピンクを基調とした、沙雪こだわりのテーブルセッティングが施されていた。
立食パーティー式ではあるが、椅子も準備されており、時間が長引くであろうと踏んだ準備の責任者である沙雪の心遣いが溢れている。
客人たちもほぼほぼ集まっており、各々既に飲み物片手に楽しんでいる様子が見受けられた。
「沙雪姉様!」
会場に足を踏み入れると同時に、彩子が満面の笑みで駆け寄ってくる。
その後ろから公子と一人の少女が沙雪の元へと歩み寄ってきた。
「お待たせ彩ちゃん。勘太郎さんはもう少しかかるみたい」
「いいえ、公子さんと宮子さんのおかげで楽しく待てました。お兄様は…いいです。沙雪姉様がいてくだされば」
屈託なく笑う彩子に、沙雪も、“まぁ、彩ちゃんたら”とくすくすと笑みを返す。
そして公子と、いつの間にか到着していた親友の宮子に視線を向けた。
「宮子、遅くなってごめんなさい。ドレス、やっぱりそれにしたのね」
「当然。沙雪も絶対このドレスにすると思ったの。それに全然待った気はしなかったわ?彩子ちゃんと二人で、公子さんの惚気聞いていたもの」
「宮子さん!そんな、惚気だなんて…」
微笑む宮子に頬を紅く染め公子は軽く首を振りながら呟く。そんな公子に微笑み、宮子は沙雪に視線を向ける。
「仲睦まじくて羨ましいわ。私達にはそんなお相手すら居ないんだもの。ねぇ、沙雪」
「え?え、と…」
「沙雪姉様は…」
宮子の言葉に沙雪は思わず口ごもる。そういえばまだ宮子には伝えていなかった。
そんな沙雪を見て彩子が代わりに伝えようかと口を開いた瞬間、勘太郎がそっと近づいてきて、沙雪を後ろから抱き締めた。
「お待たせ、僕のお姫様」
「勘太郎…さん?」
沙雪が驚き振り返れば愛しい人の姿。
その笑みは満面で、見ただけでご機嫌とわかる。何があったのだろうかと問う前に、宮子が沙雪に声をかけた。
「沙雪……どういう、こと…?」
ゆっくりと、笑みを浮かべながら近づいて来る宮子。その表情はなんだか、笑顔なのに怖い。
そんな親友の様子に若干顔を引きつらせ、沙雪は宮子を見上げる。
「あなた…いつの間にこんな素敵な殿方をー?!」
「きゃー!み、宮子っ!勘太郎さんのことは以前話したし、昨日貴女見たじゃない!」
沙雪の叫びに近い返答に宮子は詰め寄る動きをぴたりと止め、勘太郎を見た。
栗色の髪に、榛色の瞳。目鼻立ち整ったその容貌に、思わず惚けてしまう甘いマスク。が、追及心に満ちている宮子は一瞬で現実に帰ってきた。
「聞いてはいたけど、何度も、何度も、聞いてはいたけど、貴女、こんなに素敵な方とは聞いてなかったわ!校門にいらっしゃる時見たのは二人のお似合いっぷりと周りの反応と鬼の形相の先生方だけよ!」
「素敵…やっぱり勘太郎さんは、誰から見ても素敵なんですねぇ…」
おっとりとほんわかに呟きながら微笑み沙雪に、一同目が点。
しかしすぐ苦笑交じりの笑みをこぼす。
一方うっとりと名を呼ばれた勘太郎は小さく沙雪の名を呼び、抱き締める腕に力を籠める。
「?勘太郎さん…?」
「愛してる、沙雪」
皆の反応に首を傾げていれば、勘太郎に耳元で囁かれ真っ赤になり振り向く。
そんな沙雪の表情に満面の笑みを浮かべれば、沙雪もまた頬は染めたまま、嬉しそうに微笑んだ。
庭に出て園遊会の会場が近付けば、客人たちと話していた筈の怜がいち早く二人に気付き近寄ってくる。
態々近付いてきたのは、客人たちに聞かれたくない事があるからであろう。
案の定、二人に近づくなり怜は口を開いた。
「父上はああ言っていたが、俺はお前たちを認めないからな」
「お兄様の認可など必要ありません。私達の結婚に必要なのはお父様の認可であり、お父様から結婚の許可は頂きました。口出しは無用です」
キッパリと言い切り、沙雪は歩き出す。元から割とはっきりと自らの意見を持っている娘であったが、先ほどの書斎での一件と言い今と言い、一体沙雪に何が起きてしまったのかと思う程、沙雪はきっぱりと物を言うようになってしまった。
正直、今まで怜は沙雪を深窓の令嬢という言葉を体現したように奥ゆかしく、自らの心を押し殺してでも相手を立てる性格と思っていたが為に、沙雪に言い返されるとまず驚きで呆気としてしまう。
「失礼、怜さん」
沙雪の変わりように惚けていた怜であったが、勘太郎の言葉にハッと我に返り、沙雪について去ろうとする勘太郎の腕を掴んだ。
「…怜さん?」
「少し、話がある」
小さく言われ、勘太郎は仕方がないとばかりに歩き出した足を怜に向けてから、沙雪の頭を撫でた。
「勘太郎さん…」
「少し話してくるよ、先に行っておいで?」
心配そうに見上げてくる沙雪に笑みを向け、安心させるように頬を撫でる。その笑みと手のひらの温度に安心したように勘太郎の手のひらにすり寄り、微笑んで頷いた。
「彩ちゃんと、お話ししてお話しして待っています。早く来ないと二人で拗ねますからね?」
小さく頬を膨らませて呟く沙雪にくすくす笑いながら頷く。
「二人が拗ねると困ってしまうなぁ…。可愛いと思うからちょっと見たいけど」
笑いながら勘太郎はそっと沙雪の背を押し、会場の方へと送り出す。
一度歩き出すも立ち止まり、勘太郎に振り向き小さく手を振りながら微笑めば、沙雪は客人たちの待つ会場へ歩いて行った。
園遊会の会場は庭の一角をリボンで区切り設営されていた。春の花々が飾られ、白とピンクを基調とした、沙雪こだわりのテーブルセッティングが施されていた。
立食パーティー式ではあるが、椅子も準備されており、時間が長引くであろうと踏んだ準備の責任者である沙雪の心遣いが溢れている。
客人たちもほぼほぼ集まっており、各々既に飲み物片手に楽しんでいる様子が見受けられた。
「沙雪姉様!」
会場に足を踏み入れると同時に、彩子が満面の笑みで駆け寄ってくる。
その後ろから公子と一人の少女が沙雪の元へと歩み寄ってきた。
「お待たせ彩ちゃん。勘太郎さんはもう少しかかるみたい」
「いいえ、公子さんと宮子さんのおかげで楽しく待てました。お兄様は…いいです。沙雪姉様がいてくだされば」
屈託なく笑う彩子に、沙雪も、“まぁ、彩ちゃんたら”とくすくすと笑みを返す。
そして公子と、いつの間にか到着していた親友の宮子に視線を向けた。
「宮子、遅くなってごめんなさい。ドレス、やっぱりそれにしたのね」
「当然。沙雪も絶対このドレスにすると思ったの。それに全然待った気はしなかったわ?彩子ちゃんと二人で、公子さんの惚気聞いていたもの」
「宮子さん!そんな、惚気だなんて…」
微笑む宮子に頬を紅く染め公子は軽く首を振りながら呟く。そんな公子に微笑み、宮子は沙雪に視線を向ける。
「仲睦まじくて羨ましいわ。私達にはそんなお相手すら居ないんだもの。ねぇ、沙雪」
「え?え、と…」
「沙雪姉様は…」
宮子の言葉に沙雪は思わず口ごもる。そういえばまだ宮子には伝えていなかった。
そんな沙雪を見て彩子が代わりに伝えようかと口を開いた瞬間、勘太郎がそっと近づいてきて、沙雪を後ろから抱き締めた。
「お待たせ、僕のお姫様」
「勘太郎…さん?」
沙雪が驚き振り返れば愛しい人の姿。
その笑みは満面で、見ただけでご機嫌とわかる。何があったのだろうかと問う前に、宮子が沙雪に声をかけた。
「沙雪……どういう、こと…?」
ゆっくりと、笑みを浮かべながら近づいて来る宮子。その表情はなんだか、笑顔なのに怖い。
そんな親友の様子に若干顔を引きつらせ、沙雪は宮子を見上げる。
「あなた…いつの間にこんな素敵な殿方をー?!」
「きゃー!み、宮子っ!勘太郎さんのことは以前話したし、昨日貴女見たじゃない!」
沙雪の叫びに近い返答に宮子は詰め寄る動きをぴたりと止め、勘太郎を見た。
栗色の髪に、榛色の瞳。目鼻立ち整ったその容貌に、思わず惚けてしまう甘いマスク。が、追及心に満ちている宮子は一瞬で現実に帰ってきた。
「聞いてはいたけど、何度も、何度も、聞いてはいたけど、貴女、こんなに素敵な方とは聞いてなかったわ!校門にいらっしゃる時見たのは二人のお似合いっぷりと周りの反応と鬼の形相の先生方だけよ!」
「素敵…やっぱり勘太郎さんは、誰から見ても素敵なんですねぇ…」
おっとりとほんわかに呟きながら微笑み沙雪に、一同目が点。
しかしすぐ苦笑交じりの笑みをこぼす。
一方うっとりと名を呼ばれた勘太郎は小さく沙雪の名を呼び、抱き締める腕に力を籠める。
「?勘太郎さん…?」
「愛してる、沙雪」
皆の反応に首を傾げていれば、勘太郎に耳元で囁かれ真っ赤になり振り向く。
そんな沙雪の表情に満面の笑みを浮かべれば、沙雪もまた頬は染めたまま、嬉しそうに微笑んだ。
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