白き薔薇の下で永遠の純心を君に

綾峰由宇

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四十三

宮子と彩子と共に客間のベッドで目が覚めた沙雪。
何事もなく朝が来たことに、心底ほっとした。夜の内に、また何やら不穏な出来事が起きたらどうしようと、眠りにつくまでそんな事ばかり考えてしまっていたのである。
昨晩は怜も友人たちにつかまっており、沙雪の周りにも人が多かったことから安心して眠ることが出来た。
しかし今晩から、沙雪は一体どこでどう眠ればいいのか。
心配と不安は尽きない。

「沙雪姉様?」
「おはよう、彩ちゃん。朝食のお願いをしてくるから、もう少しゆっくりしていてね」

隣で目を覚ました彩子がそっと声をかければ、沙雪はくるりと振り向き微笑んでからベッドを降りる。
その振動で反対側に寝ていた宮子も目を覚ました。

「あら、もう朝になっちゃったの?」
「夜更かししたから余計に朝が早いわよね。おはよう、宮子」
「おはよう、沙雪。あら、どこか行くの?」
「顔を洗ってから、朝食のお願いに。あら、公子さんは…」
「あ、皆さんおはようございます」

沙雪が公子の姿を探していれば、丁度よく扉が開き公子が姿を現した。

「おはようございます、公子さん。早かったんですね」
「ええ、目が覚めてしまったので、お部屋の掃除をしていました」

公子の一日は自室と食堂の掃除から始まる。
今日も日課の掃除を終わらせたところなのだろう。タスキを外しながらにこりと微笑んだ。

「あ、そうだわ沙雪さん。薔薇園なんですけど」
「はい」
「これまでは沙雪さんがお手入れをされていたけれど、貴女が一ノ宮家へ行ってしまったらお世話する人がいなくなってしまうでしょう?沙雪さんさえよかったら、私が引き継げたらと思ったのだけれど…」

公子の申し出に、沙雪は嬉しそうに微笑む。

「ありがとう公子さん、私も薔薇園が気がかりだったんです。移植するわけにもいかないし、どうしようかと…公子さんになら安心してお任せできます」
「良かった。お花は好きだけれど、お手入れまでは詳しくないんです。良ければ、少しずつ教えて頂いてもいいかしら?」
「勿論です、公子さん。私も本や庭師さんの見様見真似でしたから、公子さんならすぐ習得できると思います」

沙雪の言葉によろしくね、と頷き公子は微笑む。

「沙雪の薔薇園はいつも見事だものね」
「一番好きな花ですもの。公子さんがお世話してくれたら、きっと薔薇も喜ぶわ」
「沙雪姉様がいなくなって寂しがらないんですか?薔薇は」
「少しだけ寂しがってくれたら嬉しいけれど、きっと大丈夫」

彩子の言葉にくすくすと笑い、沙雪は顔を洗ってくると洗面所へと入る。

「うちに少しでも移植出来るかお父様に聞いてみようかしら」
「それもいいかもしれません。生家を離れて暮らすというのは愛する人がいても寂しいときはありますから。手塩にかけた薔薇が見えたら心が安らぐかもしれないですもの」
「公子さんも寂しいんですか?」
「私は…どうでしょう?両親は厳しい人たちだったので、今はまだ羽を伸ばしているような感覚です」

くすりと微笑み、公子はいたずらに頷く。
そんな公子に彩子と宮子は「まぁ」とくすくす笑うのであった。

「宮子、彩ちゃん、タオル用意しておいたから、使ってちょうだいね。朝食お願いしてきます。公子さんも一緒に食べますよね?」
「ええ、是非」
「では行ってきます」

身支度を整え、上からカーディガンを羽織った沙雪は微笑み部屋を出ていく。

「沙雪姉様…寝起きも美しい…」
「これはまだ一ノ宮様も見ていない沙雪かしらね」
「…いえ、多分見てます」
「ええ?!」
「昨日、というか、一昨日の晩、帰ってこなかったうえに、私に着替えを持ってきてって連絡まで来ましたもの」

彩子の言葉に、宮子は目を見開く。

「兄は何でも私より先に初めての沙雪姉様を発見するんですから、羨ましいことです」

頬を膨らます彩子に小さく笑い、宮子は頷く。

「でも彩ちゃんはこれから一緒に暮らすことになるもの。もしかしたら一ノ宮様より先に沙雪の新しい一面を知ることがあるかもしれないわよ?」
「それを期待して、沙雪姉様を観察していこうと思います!」
「頼んできましたよ。サンルームに用意してくださるみたいだから、今の内に着替えましょう」

戻ってきた沙雪の言葉に頷き、婦女子たちは各々の格好へと着替えるのであった。
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