24 / 47
第3章 学校生活は薔薇色ですか?
8.けじめ
しおりを挟む
職員室から戻って来たアレク先生に、僕は思い切って悩みを打ち明ける。
「……どう言い聞かせたものですかね。あの子と直接会話をするなんて、最近では年に数回もありませんでしたから……どこまできつく言って良いものやら、分からないんです」
テーブル越しにアレク先生と向かい合い、僕はティーカップを置いた。
そして揺れる赤茶色の液体に目を落としながら、小さく溜息を吐く。
「おかしいですよね。兄妹なのに、妹とどう接して良いか悩んでいるだなんて」
サーナリアは生まれつき病弱な子で、遠くの街で物心つく前から療養生活を送っていた。そこは澄んだ空気と水のある、自然豊かな土地だった。
母さんはサーナと共にその街の別荘に移り住む事になり、僕と父さんも月に一度は二人に会いに行っていた。
そんな生活が何年か続いたある日、母方の祖父が亡くなり、葬儀を執り行う為にアレーセルの街に家族全員が集まる事になったのだ。
サーナの体調を気遣いながら、何事も無く祖父の葬儀は執り行われた。久々に屋敷に戻って来たサーナは、とても嬉しそうにしていたっけ。
葬儀の翌日、昼頃には母さんとサーナはまた向こうの街に戻るのだと言っていた。長い時間を掛けて少しずつ治していく病だったから、まだまだサーナが健康体になるには治療が足りなかったのだ。
昼まで兄妹二人で沢山話して、元気になったら海へ行きたいとか、こんな事をしたいとか、サーナは瞳をキラキラさせて言っていた。
まだ難しい言葉は話せなかった年齢だったけれど、彼女なりの言葉で夢を語ってくれた。
ところが、出発間近になって母さんが実家に呼び出された。
財産分与に関する話だったと後から聞いたが、なかなか話が進みそうにないと判断した母さんは、サーナだけ先に別荘へ帰らせる事にした。
一日だけの滞在予定だったから、持ってきた薬にも限りがある。
片道だけで五日は掛かる場所だという事もあり、薬が切れてサーナに何かあったら大変だという事からそう決めたのだそうだ。
薬さえ飲んでいれば急に体調が悪化する事は少ないそうなのだけれど、環境の変化と長旅による疲労も心配だった。
母さんは話が片付いたらすぐに別荘へ行くと約束し、何人もの護衛と世話係をつけて、サーナを送り出した。
「……君の家庭の事情も分かっているつもりだ。十二年前のあの事件が、君達兄妹に深い心の傷を負わせている事も。元から彼女には頑固な面もあったのだろうが、それが君に執着する原因になったのだろうな」
「多分、そうなのだと思います。あの日、まだ幼かった僕ら兄妹は、大好きだった母を亡くしました。父さんはそのショックを押し殺すように仕事に没頭するようになり、サーナに会いに行く頻度もみるみる減って……」
代わりに僕だけでも妹に会いに行こうと、多い時は一ヶ月向こうに滞在する時もあった。
読み書きや魔法の家庭教師がつけられるようになってからは、そうもいかなくなってしまった。けれど、その分頻繁に手紙を送り合うようにしたのだ。
まだ文字が分からなかった頃のサーナには、お付きの世話係が読み聞かせ、代筆してくれていた。
そうしてサーナは僕とばかりやり取りするようになって、自分で文字が書けるようになってからは、言葉に詰まる内容を送ってくる事が増えていた。
どうして父様は、兄様みたいに会いに来てくれないの?
どうしてあまり手紙を送ってくれないの?
父様は、サーナの事が嫌いになっちゃったの?
「僕達のこの髪は、母さん譲りの金髪なんです。サーナなんて、大きくなっていくにつれて母さんそっくりになってきて……きっと、あの子を見ると思い出してしまうのでしょう。父さんは母さんをとても愛していたから……」
深い愛情で結ばれていた二人だからこそ、妻を失った父さんはその事実を認めたくなかった。現実を受け入れたくなかったのだと思う。
だから父さんはサーナと壁を作って、仕事だけに集中する事で自分を誤魔化し続けていたのだ。
そんな事をしても、母さんが殺された事実は変わらないのに。
母さんを失って、今度は父さんに見捨てられたように感じているサーナに気付いてくれなくて。
どれだけサーナに会いに行こうと訴えても、近々大事な商談があるから無理だとか、使用人も沢山居るし、僕も相手をしているのだから大丈夫だろうと返された。
「でも、この数年はちゃんと会いに行くようになったんですよ。ようやく母さんの死を飲み込めてきて、彼女が……レティシアが来てくれた事が切っ掛けになったんです」
「レティシアが?」
「セイガフに入学するまでの二年間、彼女はうちの屋敷で預かっていたというのは以前お話ししましたよね? その直前に、父さん達がガリメヤの星に誘拐されたんです」
「ああ……レオンハルトが追っている輩だな。その事件は私も耳にしている。大変だったな」
「その時にレオンハルト様とレティシアに、父さんや従業員達を救って頂きました。更に彼女は商会で見事な働きをしてくれて、うちの信用を取り戻す中心的な役割を果たしてくれました。レオンハルト様もうちをご贔屓にして下さっていますし、アルドゴール家には言葉に言い表せない程の感謝とご恩を感じています」
彼女がうちで過ごした二年間、僕はその内容をサーナに伝えていた。
「若い女の子と一緒に暮らすようになってから、父さんの表情が少し柔らかくなったんです。サーナと歳も同じだから、きっと思い出してくれたのだと思うんです。サーナはずっと親の愛に飢えていて、自分はそんな娘に対して、見て見ぬ振りをしてしまっていた事に」
レティシアという女の子とその兄が、ミンクレールの家と商会を救ってくれた事。
サーナと同い年だから、きっと学校で良い友人になれるはずだとも。
そう、伝えたのに……。
「それからは手紙もきちんと書くようになったんですよ。返信はありませんでしたが、急に父様から手紙が来て戸惑ったと僕には話してくれて……」
それでも妹は、レティシアがしてくれた事の重大さを分かってはいない。
「別荘の使用人達と主治医、そして僕と父さん。たったこれだけの狭い世界の中だけで生きてきたあの子には、あの組織の恐ろしさも……信用を失えば、どれだけ商会が傾くのかも理解出来ないのかもしれない」
僕は、固く拳を握る。
サーナの一番の心の拠り所は、僕だ。
僕がもしサーナをきつく叱っていたら、あの子はどう受け止めていたのだろう。
信じていたたった一人の兄に、裏切られたと思うだろうか。
実の妹よりも、他人の肩を持つのかと──
「あの子には、僕しか味方になってやれる人が居ない。だからこそ、僕と仲の良いレティシアが怖いのだと思うんです。父さんのように、サーナを見捨ててレティシアを取るのではないか……そう、考えているのではないかと」
「レティシアに虐めを仕掛け、寮に引きこもるように仕向けようとしたのかもしれんな。あわよくば、自主退学でも狙っていたのだろう。そうすれば君から離れていくからな」
それでも、レティシアが僕にとって恩人である事は揺らぎようのない事実だ。
このまま先生が提案したトーナメントが行われても、そもそもサーナが彼女と当たるまで勝ち進めるかも分からない。
それに、一年生であれだけの実力があるレティシアに勝てるとも考えにくい。
出来れば二人がきちんと話し合って、穏便に事を解決してくれる方が嬉しいのだけれど……。
「……不満、か」
「え……?」
「私の提案が不満だと、そう顔に書いてある」
そんなに表情に出てしまっていたのか。
ポーカーフェイスが出来るようにならないと、将来商談で不利になってしまうのに。
「私は繊細さに欠ける人間だ。思い切りぶつかり、全力を発揮して結果を出す事こそが好ましいと思う、いわば野蛮な男だ」
「そ、それは……」
「君のように円滑な人間関係を構築するのも得意ではない。だから私は魔物と戦い、その術を教える職に就いた。一人でも脅威と立ち向かえる、そんな生徒を育てようと……そう決意してここへ来た」
アレク先生は言いながら立ち上がり、僕を見下ろしてこう言った。
「私の方法に違和感があるのなら、君は君の思う通りに動けば良い。『先生』なんて生き物は、『先』に『生』まれた者の知識と経験を次世代に伝えていく為の存在に過ぎん。そこから導き出した答えが必ずしも正しいとは限らない。己が得た情報と経験、そして心の全てで道を選び取れ」
「時には間違った答えを教えているかもしれないと……そういう事なのですか?」
「そうだ。どうすればこの世の全てが上手く運ぶのか。そんな事は神にも分かるかどうか怪しいぞ。無責任な教師だと思うのなら、私の事など口先だけの醜い大人だと断じてくれて構わない。君の妹と恩人が、どうすれば歩み寄る事が出来るのか……そして、君は二人にどう接するべきなのか。正しいと思う回答を出せば良い。私は、そう思う」
そう言い残して、アレク先生は去っていった。
……僕は、アレク先生のあの提案には素直に頷けなかった。
まるで、初めから話し合いで解決する事を諦めているようで、納得しきれていなかったのだ。
確かにサーナの生い立ちは特殊なのかもしれない。そのせいで僕への思いが強過ぎて、周りにどう映っているのかも分からないのだから。
それでも僕は知っている。
サーナはちょっと頑固すぎる所があるけれど、しっかり言い聞かせれば理解してくれる頭は持っているのだ。
レティシアには……サーナに口止めされていたから、何も説明出来ていない。サーナが僕の妹だという事も、僕ら家族に何があったのかも、全てを伝えきれていない。
きっと初めからレティシアに嫌がらせするつもりで、彼女に情報が行かないようにしていたのだろう。
僕とサーナが謝りに行けば、きっと彼女は優しいから簡単に許してしまうのだろう。
僕は妹にも厳しく叱れない臆病者で、レティシアに恩を仇で返すような振る舞いをしてしまった、最低な男だ。
「……でも、しっかりけじめは着けなければならない」
今すぐサーナに会いに行こう。
そして彼女をしっかり叱って、レティシアがどれだけ大きな存在なのかを分かってもらわねば。
そうしたら、すぐにでもサーナと一緒にレティシアに謝ろう。兄として、先輩として、一人の人間として……きちんと頭を下げに行くのだ。
「僕はいつまで臆病者のお坊ちゃんで居るつもりなんだ。次期当主がこの有様でどうする」
こんな男の隣に、彼女が並んでくれるはずもないじゃないか……!
「……どう言い聞かせたものですかね。あの子と直接会話をするなんて、最近では年に数回もありませんでしたから……どこまできつく言って良いものやら、分からないんです」
テーブル越しにアレク先生と向かい合い、僕はティーカップを置いた。
そして揺れる赤茶色の液体に目を落としながら、小さく溜息を吐く。
「おかしいですよね。兄妹なのに、妹とどう接して良いか悩んでいるだなんて」
サーナリアは生まれつき病弱な子で、遠くの街で物心つく前から療養生活を送っていた。そこは澄んだ空気と水のある、自然豊かな土地だった。
母さんはサーナと共にその街の別荘に移り住む事になり、僕と父さんも月に一度は二人に会いに行っていた。
そんな生活が何年か続いたある日、母方の祖父が亡くなり、葬儀を執り行う為にアレーセルの街に家族全員が集まる事になったのだ。
サーナの体調を気遣いながら、何事も無く祖父の葬儀は執り行われた。久々に屋敷に戻って来たサーナは、とても嬉しそうにしていたっけ。
葬儀の翌日、昼頃には母さんとサーナはまた向こうの街に戻るのだと言っていた。長い時間を掛けて少しずつ治していく病だったから、まだまだサーナが健康体になるには治療が足りなかったのだ。
昼まで兄妹二人で沢山話して、元気になったら海へ行きたいとか、こんな事をしたいとか、サーナは瞳をキラキラさせて言っていた。
まだ難しい言葉は話せなかった年齢だったけれど、彼女なりの言葉で夢を語ってくれた。
ところが、出発間近になって母さんが実家に呼び出された。
財産分与に関する話だったと後から聞いたが、なかなか話が進みそうにないと判断した母さんは、サーナだけ先に別荘へ帰らせる事にした。
一日だけの滞在予定だったから、持ってきた薬にも限りがある。
片道だけで五日は掛かる場所だという事もあり、薬が切れてサーナに何かあったら大変だという事からそう決めたのだそうだ。
薬さえ飲んでいれば急に体調が悪化する事は少ないそうなのだけれど、環境の変化と長旅による疲労も心配だった。
母さんは話が片付いたらすぐに別荘へ行くと約束し、何人もの護衛と世話係をつけて、サーナを送り出した。
「……君の家庭の事情も分かっているつもりだ。十二年前のあの事件が、君達兄妹に深い心の傷を負わせている事も。元から彼女には頑固な面もあったのだろうが、それが君に執着する原因になったのだろうな」
「多分、そうなのだと思います。あの日、まだ幼かった僕ら兄妹は、大好きだった母を亡くしました。父さんはそのショックを押し殺すように仕事に没頭するようになり、サーナに会いに行く頻度もみるみる減って……」
代わりに僕だけでも妹に会いに行こうと、多い時は一ヶ月向こうに滞在する時もあった。
読み書きや魔法の家庭教師がつけられるようになってからは、そうもいかなくなってしまった。けれど、その分頻繁に手紙を送り合うようにしたのだ。
まだ文字が分からなかった頃のサーナには、お付きの世話係が読み聞かせ、代筆してくれていた。
そうしてサーナは僕とばかりやり取りするようになって、自分で文字が書けるようになってからは、言葉に詰まる内容を送ってくる事が増えていた。
どうして父様は、兄様みたいに会いに来てくれないの?
どうしてあまり手紙を送ってくれないの?
父様は、サーナの事が嫌いになっちゃったの?
「僕達のこの髪は、母さん譲りの金髪なんです。サーナなんて、大きくなっていくにつれて母さんそっくりになってきて……きっと、あの子を見ると思い出してしまうのでしょう。父さんは母さんをとても愛していたから……」
深い愛情で結ばれていた二人だからこそ、妻を失った父さんはその事実を認めたくなかった。現実を受け入れたくなかったのだと思う。
だから父さんはサーナと壁を作って、仕事だけに集中する事で自分を誤魔化し続けていたのだ。
そんな事をしても、母さんが殺された事実は変わらないのに。
母さんを失って、今度は父さんに見捨てられたように感じているサーナに気付いてくれなくて。
どれだけサーナに会いに行こうと訴えても、近々大事な商談があるから無理だとか、使用人も沢山居るし、僕も相手をしているのだから大丈夫だろうと返された。
「でも、この数年はちゃんと会いに行くようになったんですよ。ようやく母さんの死を飲み込めてきて、彼女が……レティシアが来てくれた事が切っ掛けになったんです」
「レティシアが?」
「セイガフに入学するまでの二年間、彼女はうちの屋敷で預かっていたというのは以前お話ししましたよね? その直前に、父さん達がガリメヤの星に誘拐されたんです」
「ああ……レオンハルトが追っている輩だな。その事件は私も耳にしている。大変だったな」
「その時にレオンハルト様とレティシアに、父さんや従業員達を救って頂きました。更に彼女は商会で見事な働きをしてくれて、うちの信用を取り戻す中心的な役割を果たしてくれました。レオンハルト様もうちをご贔屓にして下さっていますし、アルドゴール家には言葉に言い表せない程の感謝とご恩を感じています」
彼女がうちで過ごした二年間、僕はその内容をサーナに伝えていた。
「若い女の子と一緒に暮らすようになってから、父さんの表情が少し柔らかくなったんです。サーナと歳も同じだから、きっと思い出してくれたのだと思うんです。サーナはずっと親の愛に飢えていて、自分はそんな娘に対して、見て見ぬ振りをしてしまっていた事に」
レティシアという女の子とその兄が、ミンクレールの家と商会を救ってくれた事。
サーナと同い年だから、きっと学校で良い友人になれるはずだとも。
そう、伝えたのに……。
「それからは手紙もきちんと書くようになったんですよ。返信はありませんでしたが、急に父様から手紙が来て戸惑ったと僕には話してくれて……」
それでも妹は、レティシアがしてくれた事の重大さを分かってはいない。
「別荘の使用人達と主治医、そして僕と父さん。たったこれだけの狭い世界の中だけで生きてきたあの子には、あの組織の恐ろしさも……信用を失えば、どれだけ商会が傾くのかも理解出来ないのかもしれない」
僕は、固く拳を握る。
サーナの一番の心の拠り所は、僕だ。
僕がもしサーナをきつく叱っていたら、あの子はどう受け止めていたのだろう。
信じていたたった一人の兄に、裏切られたと思うだろうか。
実の妹よりも、他人の肩を持つのかと──
「あの子には、僕しか味方になってやれる人が居ない。だからこそ、僕と仲の良いレティシアが怖いのだと思うんです。父さんのように、サーナを見捨ててレティシアを取るのではないか……そう、考えているのではないかと」
「レティシアに虐めを仕掛け、寮に引きこもるように仕向けようとしたのかもしれんな。あわよくば、自主退学でも狙っていたのだろう。そうすれば君から離れていくからな」
それでも、レティシアが僕にとって恩人である事は揺らぎようのない事実だ。
このまま先生が提案したトーナメントが行われても、そもそもサーナが彼女と当たるまで勝ち進めるかも分からない。
それに、一年生であれだけの実力があるレティシアに勝てるとも考えにくい。
出来れば二人がきちんと話し合って、穏便に事を解決してくれる方が嬉しいのだけれど……。
「……不満、か」
「え……?」
「私の提案が不満だと、そう顔に書いてある」
そんなに表情に出てしまっていたのか。
ポーカーフェイスが出来るようにならないと、将来商談で不利になってしまうのに。
「私は繊細さに欠ける人間だ。思い切りぶつかり、全力を発揮して結果を出す事こそが好ましいと思う、いわば野蛮な男だ」
「そ、それは……」
「君のように円滑な人間関係を構築するのも得意ではない。だから私は魔物と戦い、その術を教える職に就いた。一人でも脅威と立ち向かえる、そんな生徒を育てようと……そう決意してここへ来た」
アレク先生は言いながら立ち上がり、僕を見下ろしてこう言った。
「私の方法に違和感があるのなら、君は君の思う通りに動けば良い。『先生』なんて生き物は、『先』に『生』まれた者の知識と経験を次世代に伝えていく為の存在に過ぎん。そこから導き出した答えが必ずしも正しいとは限らない。己が得た情報と経験、そして心の全てで道を選び取れ」
「時には間違った答えを教えているかもしれないと……そういう事なのですか?」
「そうだ。どうすればこの世の全てが上手く運ぶのか。そんな事は神にも分かるかどうか怪しいぞ。無責任な教師だと思うのなら、私の事など口先だけの醜い大人だと断じてくれて構わない。君の妹と恩人が、どうすれば歩み寄る事が出来るのか……そして、君は二人にどう接するべきなのか。正しいと思う回答を出せば良い。私は、そう思う」
そう言い残して、アレク先生は去っていった。
……僕は、アレク先生のあの提案には素直に頷けなかった。
まるで、初めから話し合いで解決する事を諦めているようで、納得しきれていなかったのだ。
確かにサーナの生い立ちは特殊なのかもしれない。そのせいで僕への思いが強過ぎて、周りにどう映っているのかも分からないのだから。
それでも僕は知っている。
サーナはちょっと頑固すぎる所があるけれど、しっかり言い聞かせれば理解してくれる頭は持っているのだ。
レティシアには……サーナに口止めされていたから、何も説明出来ていない。サーナが僕の妹だという事も、僕ら家族に何があったのかも、全てを伝えきれていない。
きっと初めからレティシアに嫌がらせするつもりで、彼女に情報が行かないようにしていたのだろう。
僕とサーナが謝りに行けば、きっと彼女は優しいから簡単に許してしまうのだろう。
僕は妹にも厳しく叱れない臆病者で、レティシアに恩を仇で返すような振る舞いをしてしまった、最低な男だ。
「……でも、しっかりけじめは着けなければならない」
今すぐサーナに会いに行こう。
そして彼女をしっかり叱って、レティシアがどれだけ大きな存在なのかを分かってもらわねば。
そうしたら、すぐにでもサーナと一緒にレティシアに謝ろう。兄として、先輩として、一人の人間として……きちんと頭を下げに行くのだ。
「僕はいつまで臆病者のお坊ちゃんで居るつもりなんだ。次期当主がこの有様でどうする」
こんな男の隣に、彼女が並んでくれるはずもないじゃないか……!
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる