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第4章 怪しい影
12.迷宮の底に眠りしは
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魔物だらけだった第二階層を突破し、次なる第三階層へと降り立つ面々。
ここでも相変わらず暗い視界をライトの魔法で確保しつつ、いつまた魔物と戦闘になっても良いように警戒は怠らない。
「……今の所ここは安全なようですね、ザインさん」
「うん。特に魔物の気配もしないみたいだ」
階段を降りてすぐに出たフロアは、これまでの階層とは少々様子が違っていた。
土と砂の香りは相変わらずではあるのだが、レンガのような長方形に切り出された石を積み重ねて整えた壁や床に、先の長い通路。
人工的に作り出されたようなこの空間は、最早洞窟と呼ぶには相応しくない。そう、これはまるで──
「……まるでどこかの遺跡みたいな場所だな、このフロアは」
見て感じた通りの感想を述べたザインの言葉に、フィルも頷き同意する。
「師匠の言う通り、冒険物語に出て来るような古代遺跡みたいな雰囲気ですよね。ぼく、こういうのワクワクします!」
「……二人の言い分は、あながち間違いではないのよね」
すると、カノンが辺りを観察しながら口を開いた。
「ワタシはこのダンジョンに来るのは初めてなのだけれど……こういう様式のフロアは、謎解きが必要になるケースが多いのよ」
「謎解き……っていうと、大陸の南方に多い形式のダンジョンフロアだよな?」
「ええ。何度か謎解き系のフロアを突破してきたからこそ分かるのだけれど、そういったフロアはこんな風に古代遺跡のような内装になっている場合がほとんどなの」
カノンが語るには、これまで発見されてきたダンジョンの中に似た様式の古代文明じみた階層が、数々の探索者によって発見されているのだという。
けれども、そのような様式の遺跡自体はどこにも存在していない。
神々を祀る神殿や、古代からの精霊信仰に関連する遺跡であれば発掘されているのだが……ダンジョン内にある遺跡のような様式のものは、迷宮外では未だ発見されていないのである。
探索者達の間では『ダンジョン遺跡』とも呼ばれるこのフロアの特徴は、カノンの言っていた仕掛けによる謎解きと、不気味な壁画や石像が残されている点だ。
ダンジョン遺跡の調査には、探索者を護衛として雇った研究者達も向かっている。
しかし、彼らの知識や古い文献を以ってしても、壁画に描かれた存在や石像についての情報は得られぬまま。
「ダンジョン遺跡の調査を続ける研究者の中には、魔王の配下だったダンジョンマスター達が崇める魔王や、魔物達にまつわる遺跡だという予想もあるそうよ。……そんな考察も出るような場所だから、当然罠も仕掛けられているわ」
「罠に謎解き、ですか……」
「冒険心をくすぐられますね、師匠っ!」
「ああ! 母さんから話には聞いていたけど、こんな風になってるんだなぁ~!」
瞳をキラキラと輝かせるザインとフィルに、カノンは小さく苦笑する。
一方、エルは不安げな表情で通路の先を見詰めていた。
そんな彼女を見て、カノンがそっとエルの側に歩み寄る。
「安心して、エル。油断せずに全員で協力していけば、無事に依頼を達成出来るんですもの。不安がる必要なんてどこにも無いわ」
「カノンさん……」
優しくエルの肩に手を置いて、ふわりと微笑むカノン。
「それに、さっきはアナタのお陰でゴーレムの群れを突破する事が出来たんですもの。だから、今度はワタシがエルの為に頑張らないと……ね?」
その言葉を受けて、エルは少しだけ緊張が解けていくのを感じた。
エルは心を落ち着ける為に小さく息を吐くと、改めてカノンの顔を見てこう言った。
「……わたしに出来るのは、あれぐらいしかありませんでしたから。フィルやカノンさんのように身体を動かすのは不得意ですし、かといってザインさんのようなリーダーシップもありませんし……それに……」
「……それに?」
エルは少し離れた位置で盛り上がっているザイン達をちらりと見て。
そうして彼らに聞こえないように声を抑え、恥ずかしそうに眉を下げてカノンに告げた。
「わたし、昔から本を読むのが好きで……探索者をしている父の影響もあって、よく冒険小説を読んでいたんです。ですからその……こういったダンジョン遺跡には、きっと恐ろしい呪いや罠が待ち受けているのではないかと……」
でも、とエルは更に続けて言う。
「……カノンさんがそう仰って下さるなら、とても心強いです。わたしとカノンさんとフィル……そしてザインさんの四人で、絶対に竜翡翠をセッカさんに届けましょう!」
「ええ、勿論よ! このワタシが居れば、ダンジョン遺跡なんてあっという間に突破出来てしまうのですから!」
そうして楽しげに微笑み合う二人の少女達は、すぐにザイン達に声を掛けてフロアの探索を開始するのだった。
ここでも相変わらず暗い視界をライトの魔法で確保しつつ、いつまた魔物と戦闘になっても良いように警戒は怠らない。
「……今の所ここは安全なようですね、ザインさん」
「うん。特に魔物の気配もしないみたいだ」
階段を降りてすぐに出たフロアは、これまでの階層とは少々様子が違っていた。
土と砂の香りは相変わらずではあるのだが、レンガのような長方形に切り出された石を積み重ねて整えた壁や床に、先の長い通路。
人工的に作り出されたようなこの空間は、最早洞窟と呼ぶには相応しくない。そう、これはまるで──
「……まるでどこかの遺跡みたいな場所だな、このフロアは」
見て感じた通りの感想を述べたザインの言葉に、フィルも頷き同意する。
「師匠の言う通り、冒険物語に出て来るような古代遺跡みたいな雰囲気ですよね。ぼく、こういうのワクワクします!」
「……二人の言い分は、あながち間違いではないのよね」
すると、カノンが辺りを観察しながら口を開いた。
「ワタシはこのダンジョンに来るのは初めてなのだけれど……こういう様式のフロアは、謎解きが必要になるケースが多いのよ」
「謎解き……っていうと、大陸の南方に多い形式のダンジョンフロアだよな?」
「ええ。何度か謎解き系のフロアを突破してきたからこそ分かるのだけれど、そういったフロアはこんな風に古代遺跡のような内装になっている場合がほとんどなの」
カノンが語るには、これまで発見されてきたダンジョンの中に似た様式の古代文明じみた階層が、数々の探索者によって発見されているのだという。
けれども、そのような様式の遺跡自体はどこにも存在していない。
神々を祀る神殿や、古代からの精霊信仰に関連する遺跡であれば発掘されているのだが……ダンジョン内にある遺跡のような様式のものは、迷宮外では未だ発見されていないのである。
探索者達の間では『ダンジョン遺跡』とも呼ばれるこのフロアの特徴は、カノンの言っていた仕掛けによる謎解きと、不気味な壁画や石像が残されている点だ。
ダンジョン遺跡の調査には、探索者を護衛として雇った研究者達も向かっている。
しかし、彼らの知識や古い文献を以ってしても、壁画に描かれた存在や石像についての情報は得られぬまま。
「ダンジョン遺跡の調査を続ける研究者の中には、魔王の配下だったダンジョンマスター達が崇める魔王や、魔物達にまつわる遺跡だという予想もあるそうよ。……そんな考察も出るような場所だから、当然罠も仕掛けられているわ」
「罠に謎解き、ですか……」
「冒険心をくすぐられますね、師匠っ!」
「ああ! 母さんから話には聞いていたけど、こんな風になってるんだなぁ~!」
瞳をキラキラと輝かせるザインとフィルに、カノンは小さく苦笑する。
一方、エルは不安げな表情で通路の先を見詰めていた。
そんな彼女を見て、カノンがそっとエルの側に歩み寄る。
「安心して、エル。油断せずに全員で協力していけば、無事に依頼を達成出来るんですもの。不安がる必要なんてどこにも無いわ」
「カノンさん……」
優しくエルの肩に手を置いて、ふわりと微笑むカノン。
「それに、さっきはアナタのお陰でゴーレムの群れを突破する事が出来たんですもの。だから、今度はワタシがエルの為に頑張らないと……ね?」
その言葉を受けて、エルは少しだけ緊張が解けていくのを感じた。
エルは心を落ち着ける為に小さく息を吐くと、改めてカノンの顔を見てこう言った。
「……わたしに出来るのは、あれぐらいしかありませんでしたから。フィルやカノンさんのように身体を動かすのは不得意ですし、かといってザインさんのようなリーダーシップもありませんし……それに……」
「……それに?」
エルは少し離れた位置で盛り上がっているザイン達をちらりと見て。
そうして彼らに聞こえないように声を抑え、恥ずかしそうに眉を下げてカノンに告げた。
「わたし、昔から本を読むのが好きで……探索者をしている父の影響もあって、よく冒険小説を読んでいたんです。ですからその……こういったダンジョン遺跡には、きっと恐ろしい呪いや罠が待ち受けているのではないかと……」
でも、とエルは更に続けて言う。
「……カノンさんがそう仰って下さるなら、とても心強いです。わたしとカノンさんとフィル……そしてザインさんの四人で、絶対に竜翡翠をセッカさんに届けましょう!」
「ええ、勿論よ! このワタシが居れば、ダンジョン遺跡なんてあっという間に突破出来てしまうのですから!」
そうして楽しげに微笑み合う二人の少女達は、すぐにザイン達に声を掛けてフロアの探索を開始するのだった。
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