転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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王位継承権への道

光の洗礼(4)

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数十分前…

リーミアが居なくなってしばらくして、アルメトロスが再び現れて椅子に腰かける。

「セフィー殿よ。そなたに依頼したい事があります」
「はい、何でしょうか?」
「セルティスの剣が眠る祠へ行って頂きたい」
「私にですか?そもそも彼女は、まだ光の紋様を授かっておりませんが?」
「ここに居る者で、彼女が他の少女達と同じ、別物だと考えている者などおられまい。そう想いであろう…ティオロ殿?」

初対面で、いきなり名前を当てられたティオロは深く頭を下げながら「はい」と、一言返事をする。

(流石だ大神官、既にここにいる人物の事は既に知り尽くしている様だ)

セフィーは驚きながら思った。

「何よりも、彼女にはセルティスの剣が必要となられます。今後の状況次第では、彼女の持つ力が我が国の命運にも関わって来ます」

その言葉に周囲は沈黙の雰囲気に飲み込まれた。

「それは…一体?」
セフィーが尋ねる。

「確証では無いが、この国を蝕む輩が国内の何処かで暗躍しながら潜んでおります。王家もそれに気付き、様々な調査をしておられますが…時と場合によっては、国が大きく動く事態にもなりかねないかと思います」
「なるほど、そうでしたか…」

「私としては、リムア姫の奇行を再現させたくはありませんので、光の紋様を授かった後は、彼女をしばらく神殿に預からせて頂きたいと思います。現在の彼女なら短い期間で11の魔法習得は可能だと私は思います。その為、魔法習得の期間は我々神殿が責任を持って預かります。何よりも神殿は結界が張られて居ますから魔剣士が、彼女の居場所を探して襲って来る事も無いでしょう。その様に考えておりますが…よろしいですねティオロ殿?」

「え…?何で僕に聞くの?」
その返事に周囲から笑い声が聞こえる。

「では…」
大神官は席を立つ。

「彼女の光の紋様を授かる瞬間を、皆で見届けに行きましょうか?」

彼はそう言うと、皆を引き連れて聖堂のある場所へと案内させる。彼等が聖堂内へと入ると、石碑が在る祭壇を前に、これから光の洗礼を始めようとしていた。
儀式が始まると、石碑から光が発せられて、その輝きが次第に強くなり、全員目が開けられない程の眩しさに取り囲まれる。

僅か数十秒の光の後、洗礼の儀式を行った女性が腰を抜かして、その場に座り込んでしまった。凄まじいまでの光に驚いて神殿内の神官達が慌てた様子で聖堂へと集まって来た。儀式が終えたリーミアが彼等の前へと戻って来る。

「私…光の紋様授けられたのですか?」
「ああ、そうだよ。額に美しい紋様が刻まれているよ」
「おめでとう」

ティオロが祝いの言葉を掛けると、彼女は彼を見つめた。

「一般人の生活が出来なくなってしまったわね」
「君には似合わない生活だよ」

その言葉に彼女は微笑んだ。

「お見事ですリーミア殿、これをご覧下さい」

大神官が側に居た神官から鏡を受け取り、それを手渡す。鏡を受け取ったリーミアは自分の顔を見つめる。そこには額に不思議な紋様が刻まれていた。ふと…大神官や、上級神官を見ると、同じ様な紋様を額に刻まれて居る。

「その紋様こそ、光の魔法を受け継ぎし者の証です。貴女はこれから11の光の魔法を覚える為に、神殿で鍛錬を行ってもらいます」
「分かりました。ご指導宜しくお願いします」

リーミアは、大神官に向かって深くお辞儀をする。
彼女は、神殿内にいる若い神官達からしても初の石碑から紋様を授かった人である為。皆に取り囲まれて、祝いの言葉を掛けられる。
その傍らで、ティオロはセフィーとアーレスと一緒に少し離れた位置に居た。

「ねえ、彼女が光の洗礼を受けて、光の紋様を授かったのなら、もう…彼女が正式な王女様として認定されても良いのではないの?」

その言葉にアーレスがティオロに向かって話す。

「代理王の継承権は、王女復活を前提として行われているけど、その期間に王女復活が認められても、王位争奪の競技は行われる設定だよ。仮に誠の王が誕生した場合は、王女様が即位するのは約10年後になる」
「どうしてなの、本物の王女様が目の前に居ても、認められないの?」

「その本物の王女様は、武芸や魔術が優れている。仮に王位継承の競技に参加しても、最終戦まで勝ち残れる筈。それを見越して神殿と国が競技は続行すると認めている。彼女が仮に最終戦まで勝ち残れなければ、紛い物として扱われるであろう。しかし…彼女が今後光の魔法を身に付けて、王位継承を勝ち取れば、本物の王女として君臨し、王位継承の競技もそれで幕を降ろすと、リムア姫消滅後の時代から決められて居るのだよ」

「そうなんだ…」

その時、ふと…ある事が彼の脳裏を横切った。

「それにしても…随分と詳しいですね?」

ティオロは風変わりなアーレスに向かって言う。

「ああ…いや、何、ちょっと先日色んな書物を読んでいる時に、たまたま知った事だよ。ハハハ」

慌てた素振りでアーレスは答える。
彼の仕草を見たセフィーは溜息交じりに(全く、コイツは…)と、少し呆れた様子で見ていた。

儀式が終えた後、大神官とリーミア、それに同行していた皆が広間に戻って来た。それに参列するかの様に、彼女に興味を持った神官達が集まり、既に広間に収まらない状態になっていた。

「リーミア殿、今後、しばらくの間は、7つの光の魔法の習得に励んで欲しい。そして貴女の付き添い人を紹介しましょう。サリサこちらへ」
「はい」

大神官に呼ばれて、美しく若い女神官が彼等の前に現れた。
品やかな身体に凛とした顔立ち、額には光の紋様が刻まれている。赤毛で長い髪を垂らしている。サリサと呼ばれた女神官は、他の神官とは少し違い、甲冑を身に纏っていた。彼女の腰には細身の剣が鞘に収められている。首には虹色のペンダントが掲げられていた。

「紹介しよう、神官剣士のサリサだ」
「宜しくお願いします」

彼女は一同を前にして、深く礼をする。

「綺麗なお姉さんだなぁ…」

ティオロが呟くと「ムッ!」と、リーミアは彼を睨んだ。
その後方でセフィーはレンティに向かって話す。

「神官剣士とは?」
「一般的には、神官の大半の職業は回復系が主だが、中には武芸に励んでいる者もいる。彼女はそう言った類の職業に特化した者だろう。護衛役を務める程だから実力は相当な者だろう」
「彼女、虹色のペンダントを掲げているな」

セフィーの言葉にアーレスが話し掛ける。

「ああ、王国騎士団もそうだが、彼等は王位継承の競技には参加しない意味で、虹色のペンダントを掲げているのだ。王国騎士団や神官剣士が参加したら、彼等だけでの競技になりかねないからね。競技に参加させない意味で、あの特殊なペンダントがあるのだよ。それにしてもサリサが護衛役か…まあ、彼女なら大丈夫だろう、安心して任せても良いかと思うよ」
「へえ…何だ知り合いなのか?」
「まあ、ちょっとね…」

セフィーとアーレスの会話を聞いていた彼女がチラッとアーレスと視線を合わせて、クスッと微笑んだ。
アーレスはサリサが自分の方を見ていると気付くと、わざと視線を逸らした。

神殿に集まっていた一同は、その日の用事も終わり神殿の外へと出た。既に外は夕闇が広がって、薄暗くなっていた。

「所で…リーミアが光の紋様を授かり、王女様の転生者と言うのが確定された後って、光の洗礼はどうなるの?」

ティオロはレンティに何気ない質問をする。

「確定されても、王位に即位しない限り、光の洗礼は続くらしいよ」
「それって、つまり…何処の馬の骨かも分からない人を王位に授ける事なの?」
「出掛ける前にも話したが…正式な光の洗礼で紋様を授かるのは、正統な王家の者と大神官しかいない。洗礼だけ受けるなら、神殿は今後も続けるが。リーミアちゃんが、王位に即位しない限り、転生者かも知れないと言う意味での洗礼も続行する予定だよ」

「でも…仮に、たまたま洗礼しに来た子が、光の紋様を授かちゃったらどうするの?」
「光の洗礼は、単に王位継承だけのものではありません。純粋で清らかな心の持ち主を見抜き、相応しい人を選ぶ儀式の場でもあります」

サリサがティオロに話し掛けて来た。

「自分が王女の転生者かも知れない…等と人から言われて光の洗礼に訪れる様な輩に、王女様の様な心を持つ者等おりません。光の洗礼とは、神聖な儀式の場でもあり、不純な心や、不心得が一片でもある者には、どんなに頑張ろうとも光の紋様を授かることは不可能です」

それを聞いたティオロは、リーミアが神殿に来たのもセルティスの剣を手にするのが目的であって、王女に即位する目的では無かったのを思い出す。
(純粋で清らかね…)チラッとティオロはリーミアを見ると、彼女は何かを悟ったかの様にジロッとティオロを睨み付けつる。
下手な口出しをすると、何をされるのか分からないから、少し離れた位置に移動する。

「今日は皆様お帰りください。私も明日に王女様が利用している宿に挨拶しに行きます」
「あ…あのぉ…」

リーミアが少し戸惑いながらサリサに声を掛ける。

「何か…?」
「王女様と言う呼び方、止めて頂けますか?」
「何故でしょうか?」
「まだ、正式に王位に即位した訳ではないので、その呼び方は少し不自然かと…」
「かしこまりました。では…リーミア様と、呼ばせて頂きます」

(様も必要ないけど…)

リーミアは敢えて、それは言わずに居た。彼女に付き添う面々は、事が一段落すると夕闇と共に神殿を後にして解散する事にした。
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