転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔の森、攻略!

予兆(1)

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 ~少し時間を戻して……。リーミアが祠に向かった頃のマネニーゼ市場……

 その日……市場に奇妙な人物が歩き回っていた。ボロボロの薄汚いフード付きのマントを被り、「シュー……シュー……」と、奇妙な呼吸音を立てていた。陽気にはしゃぐ子供達が、その人物の近くを通った時だった。

「ウワッ臭い!」

「何……この臭い?」

 と、思わず鼻をつまんでしまった。

 果実を売っている店で女将が「ありがとうね!」と、来客者に礼を述べた時だった。奇妙な人物が近寄り、異様な臭いを漂わせながら女将の前に来る。

「オイ、光花と言うグループの宿舎を教えろ」

 嗄れた声で、その人物は言う。

「何……アナタ、気色悪いわね。そんなもの自分で探しなよ。人様に物を聞く時は、それなりに礼儀ってものがあるでしょ!」

「貴様……生意気だな!」

 そう言うと、その人物はマントの下から巨大な爪の生えた手を出した。

「ヒッ!キャアアー!」

 思わず逃げ出した女将を見ながら、その人物はバアーンと、店の前を叩き潰した。

「もう一度聞く、光花の宿舎の場所を教えろ」

「ヒィ……、こ……この道を真っ直ぐ行った場所よ……」

 女将は震えながら答えた。

「そうか……ゲヘ、ゲヘ……」

 そう言いながら奇妙な生き物は立ち去って行く。

 宿舎前に奇妙な生き物が近付くと、門番をしていた神官剣士のラティが、異様な気配が漂っている事に素早く気付く。

「オイ、貴様……ここに転生者が居るのだろう?呼んで来い」

「何用か?まず先に理由を述べよ」

「うるさい、貴様に言う理由など無い。とにかく出せ!」

「礼儀を弁えぬ者に教える道理など無い、残念だが帰って頂こう。そして二度と現れるな!」

「貴様、生意気だな……」

 奇妙な生き物は苛立ちながら、我慢できずにマントを翻して姿を晒し出した。その姿は、角のある兜を被り、黒い甲冑を着込んだ姿をして、両手には大きな爪を生やした手をしていた。兜と甲冑の胸には紅い奇妙な文字が刻まれていた。

 その文字を見たラティは、ある事に気付く。

「貴様、やはり魔族だったか!」

 それに気付くとラティも剣を鞘から抜き出す。

「ヌオオーッ、死ねぇー!」

 奇妙な生き物がラティ目掛けて突進するが、彼も魔族目掛けて走り出し、ピュンッと剣を振るった!すると、彼の自慢の大きな爪は手首から落ちてしまう。

「ウギャー!」

 奇声の様な叫び声を出した。

 剣技ではラティの方が一枚上手だった。

「どうした……もう降参か?それとも、もう片方の爪も切り落とそうか?」

「グヌヌ……」

 悔しそうな表情をしながら魔族は、ラティを睨みつけた。その時、表での叫び声に気付いた光花のメンバー達が何事かと気になって外に飛び出して来た。

「何、今の声は?」

 レネラが慌てた口調で言う。

 光花のメンバー達が現れた事に気付くと魔族は分が悪いと感じて、一目散に逃げ出した。

「何者だアイツは……?」

 レトラが不思議な表情で言う。

「魔族と思われしきものでした」

 ラティが剣を鞘に収めながら言う。

「何だってー!」

 彼等は一斉に驚いた。地上にいる魔物は基本人語を話さず。地上を徘徊している連中で、一種の妖魔であり、定期的に闇の洞窟から姿を表すのが特徴で、自分達の縄張りに入って来なければ、人間を襲う事は有り得なかった。

 しかし……魔族は違った。人語を話し、鎧などの装備を装着する。そして……魔族特有の文字を身体の何処かに記していた。彼等は魔獣や魔物とは異なり、魔界の皇を崇拝しており人間等を殺す様に躾けられた一種の殺戮者だった。

 ラティの話を聞いたアルファリオは少し考え込む。

「何故……魔族は、ここへと現れたのだ?」

「転生者を出せと言っていました!」

 それを聞いたアルファリオはハッとした表情をする。

「君、急いで神殿に報告をするんだ。僕も城に連絡する!」

「わかりました」

 彼は、急いで羊皮紙に一筆書くと、ピーと口笛を吹き、鷲を呼び寄せると、鷲が1羽飛んできて彼の腕に捕まり、彼は足首に羊皮紙を括り付けると神殿へと飛びたせる。

 アルファリオも直ぐに城に報告しに向かった。アルファリオの報告が行われると、市場全体に王国騎士団が巡回する様になった。
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