転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔術師の館

蘇る記憶④

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 それからしばらくして、国務大臣を自身の部屋に招くと、彼はリムアの言葉を聞くなり大声で叫んだ。

 「ひ……姫様、まさか本気でやられるのですか?」

 「はい、私は本気です」

 「しかし……貴女は光の洗礼を受けた身、本来なら光の聖魔剣を扱われるお方なのに……」

 「そうですが……私はまだ、光の魔法『浄化』を完全に習得してませんので、墓所に行っても、光の聖魔剣は私を所有者とは認めてくれません、しかし……力の聖魔剣なら、私を所有者と認めてくれれば扱える筈です」

 「ですが……光の属性で無い聖魔剣を扱えば、貴女の身も無事では済ませぬぞ」

 「その辺の事も考慮してのことです。ある預言者から今の窮地を乗り越えても、更に100年後に大いなる災いが起きると聞いております。それに……私の後、光の紋様を受け継ぐ者も居ません」

 「何を言っておられます。良き婿を娶れば良いではありませんか!」

 その言葉にリムアは首を横に降った。

 「愛し合った者でなければ、継承は難しいです。父は我が母を愛してました。他の兄達の母との関係を退いてまで愛したから、末っ子の筈の私には光の紋様が授かったのです。私は自分にとって大切だった人を失いました。多分……他の人と結ばれても、光の紋様は授からないでしょう。それに既に私は自らの肉体を転生させるための秘術を習得し、今回の窮地と後の災いを阻止させる準備を整えています」

 ここ数日間リムアが王立図書館を出入りしてると噂を聞いて大臣も納得した。

 「まさか……既にそこまで考えておられるとは……」

 少し呆れた様子で大臣は答える。

 「もはや何も言いません、ただ……これだけは言わせてください。姫は今でも彼の事を思っているのですか?」

 「はい、ずっと___」

 「なるほど……」

 彼は納得した様子で頷く、もはや彼女の固い決意を変えるのは不可能……そう感じた彼は微笑みながら部屋を出ようとする。

 「リムア王女どうか、ご武運を」

 大臣は軽く一礼をして部屋を出た。

 1人になったリムアは顔を上げて、両手の掌を重ね合わせ胸に押し当てる。

 (もし……転生して、運命が再び巡り逢い、彼と出会う時があれば、今度は絶対に……!)

 ~現在……

 (今度は絶対に、もうこの手を離さない!)

 リーミアの身体が不思議な光に包まれる。

 「め……盟主様?」

 リーミアは閉じていた瞳を開けると、何かを悟った様に顔を上げる。

 (そう……私は再び彼と巡り逢う為に、この時代に転生したんだ、そして……誓ったんだ自分に……。何があっても彼の手を離さないと)

 彼女は意識を取り戻し眠った状態のティオロを見つめる。

 「皆……心配かけさせてしまったわね、もう大丈夫よ」

 「いえ……平気です」

 シャリナは慌てた口調で答える。

 「ここから先は、私に任せて」

 そう言うとリーミアは額飾りを取り、髪を整え直した。

 その時アルムとシャリナは、彼女の額の紋様が光と別の紋様が重なって、全く別の紋様になっている事に気付く。

 「任せて……て!まさか盟主殿1人でアイツと戦うのですか?」

 その言葉にリーミアは軽く微笑みながら頷く。

 「い……幾ら何でも無茶だ!我々だけでは勝てない、仲間が来るのを待っていた方が良い!」

 「大丈夫、それよりもティオロを身護っておいてね」

 そう伝えると彼女は立ち上がり、ルガンの居る場所へと向かう。

 「ちょ……ちょっと!」

 アルムが追いかけようとした時、シャリナが彼を引き留める。

 「盟主様に任せましょう」

 「で……でもよ。シャリナは、本気で勝てると思うのか?」

 「分からない、ただ……何だろう?盟主様の後ろ姿を見ていると、まるで何処か異国のお姫様みたいに思えて来るのよ。まるで……私達を守ってくれる大きな盾みたいに感じるわ」

 シャリナは期待に膨らんだ表情で、リーミアを見つめていた。

 ルガンの側まで近付いたリーミアはフッと軽く微笑んだ。

 「何ダ、貴様ハ遂ニ気デモ狂ッタカ?」

 「貴方は私が倒します」

 その言葉にルガンはガハハと……大笑いする。

 「今マデ勝テナカッタ奴ガ良ク言ウ!」

 「そう……今まではね……」

 そう呟くとリーミアはスウ……と深呼吸すると、右腕を上に伸ばして「来い!」と、一言叫ぶ。



 彼女の言葉を聞いた力の聖魔剣は、アスレイウと交戦中のルディアンスの腰元から光を放ち、そのまま何処かへと飛び去って行く。

 「ナ……何ダ?エ……一体何ガ起キタンダ?」

 突然の出来事にルディアンスは戸惑った様子を見せた、自分の腰に携えていた聖魔剣が無くなって居る事に気付くと、周辺を探す。

 その仕草を見ていたアスレイウは笑いながら彼に向かって言う。

 「ふ……どうやら、聖魔剣は所有者の元へと向かった様だな」



 館の地下を探しているサリサ、アスファード達を追い掛けているメンバーの1人、ルビィが、廊下の窓ガラス付近を走っている時……光る何かを見つけて立ち止まった。

 「どうしんだ?」

 「今……何かが横切ったんんだ」

 「流れ星か?」

 「分からないけど、地面に潜って行ったような?」

 「地面に潜る流れ星なんか無いよ、目の錯覚だ」

 「そうかな……?」

 そう言いながら、皆は再び館の中を走り出す。



 リーミアが叫んで、わずか数秒の間だった。彼女の元に聖魔剣が飛んで来た、リーミアは自分の手元に飛んで来た短剣を受け止める。

 「しばらくぶりね、戻っきてくれてありがとう。早速だけど……お願い私に力を貸して」

 リーミアは鞘に軽く唇を押し当てる。

 力の聖魔剣が、ドクンドクンと脈打ち鼓動する。力の聖魔剣を手にした彼女は右側の腰に携えると、左右両方の手で剣の柄を握り締める。

 (我に力を……)
 
 そう心の中で呟くと、スッと両方の剣から研ぎ澄まされたかの様に凄まじい銀色に輝く長剣が抜き出される。

 二つの聖魔剣の刃からは眩い程の光が灯されていた。

 「さあ……お遊びの時間は終わりよ。覚悟しなさい!」
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