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18 シャボン玉のプレゼントと煙草の味!
しおりを挟むヨノイはそれから日を空けずに、何度も訪れた。もう、常連だ。
オーナーのおばあさんもほくほくしている。金払いがいいのだろう。俺もチップを貰っている。
そして、来るたびに、花束や、小さな絵画や、本を持って来てくれる。
娯楽の少ない…元の世界に比べると俺には娯楽の少ないこの世界では、小さなことがいちいちうれしい。
以前は、花なんて興味なかったのに、きれいな色の様々な形の花が美しく見え、風景画にわくわくした。
俺の部屋は瞬く間に華やかになっていく。
ヨノイは面白い男だった。ある時などは、シャボン玉のおもちゃを買ってきた。それに対して俺はめちゃくちゃはしゃいでしまった。なんて、懐かしい!この世界にもこんな子供のおもちゃが!もしかしたら、さまよえる者が伝えた遊びなのかもしれない。
ヨノイが帰った後、部屋で遊んでたら、せっかくの壁掛けの絵画につきそうになって、慌てて外に出ることにした。
ついでに、隣の部屋にいる同僚のメイジュに声をかける。客が帰るところだった。
「メイジュ、おいでよ」
「なあに?」
メイジュは俺よりずっと幼い。自主的にこの仕事についたというわけでなく、売られてきたのではと俺は憶測している。見た目より、中身がずっと幼い。
「ほら、見て」
メイジュの前で、ひとつ、ふたつシャボン玉を拭いて見せた。
「わあ!きれい!ジレイさん、見て!」
「ああ、本当だ」
メイジュの客ものぞきこんできた。
「ちょっと、外で遊ぼう」
「ぼくもやっていいの?!」
「うん」
メイジュの客も一緒に、館の外に出て、道端でシャボン玉を拭いた。いくつもの円がくりぬかれた、平べったい内輪のような道具もある。
「えいっ!」
平皿にシャボン液を出して、それを漬けてブンッと腕を振った。あっという間に大小さまざまのシャボン玉が現れる。
「すごーい!ぼくもやりたい!」
「いいよ、ホラ」
メイジュにそれを貸してやって、俺はまたストローでシャボン玉を吹いた。
「これは、どうだ?」
「ん?」
メイジュの客が、煙草を取り出し…これって煙草なのかな、大麻みたいな麻薬じゃないのかなと俺は疑っているのだが、マッチで火をつけ、それを吸って、ストローでシャボン玉を吹いた。
すると、煙を包み込んだシャボン玉が出来上がる。
「おお」
「わあ!」
メイジュが喜ぶ。
面白いけど、煙草はけむい。そういえば、サユもヨノイも吸わないし、他の客もあまり吸っているものはいない。
でも、好んで吸う人間がいるということは、何かしらの快さ、酩酊効果とかがあるのかもしれない。
「ジレイさん、あのう…一本くれませんか?」
「えっ?うーん。一本だけだぞ」
割と高級品なのかもしれない。
「火をつけるから、咥えて吸って」
「ん…」
息を吸い込むと、火が付いた。たちまち煙が肺に入ってくる。うわ…。
「げほっ!げほっ…!!うえっ…!」
気持ち悪い…!クラクラする。
「何これっ!うえっ…!げほっ!」
「あーあー、吸えなかったのか。もったいない。返してもらうぞ」
俺の唾のついた煙草を、いったん地面に押しつけ火を消してから、大事そうにポケットにしまう。
やはり、高価なのだろう。馬鹿なことをした。胸が苦しいだけじゃなく、頭痛までしてきた…。
「あー、気持ち悪い……」
俺が煙草の後味に苦しんでいると、思わぬ人物が現れた。
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