19 / 52
19 ひと月ちょっとぶりの再会です!
しおりを挟む朝日に照らされ現れたるは、銀糸のごとき髪を半分束ね、黒きくわがねを編み込んだ上衣を纏った、まれなる美丈夫。
リューバの背に乗ったサユだった。
「さ、さ、サユーッ!!」
「タクト…!」
サユはリューバから飛び降りて、駆け寄る俺を抱きとめてくれた。
「ロアに聞いたら、ここに越したと聞いて…」
「かくかくしかじかでそうなんだよお…!」
れいによって、リューバの背には首が引っ掛けられている。
俺はサユの胸に顔をうずめて言った。
「サユの匂いがする…」
「あ…血なまぐさいだろう…湯屋に寄ってくれば…」
「でも、サユの匂いする…」
血の匂いの奥に、不快でない汗の匂いと、あの石鹸の匂いがした。
「お湯、沸かして体拭いてあげる」
「いや、しかし…」
「来て」
生首片手にぶら下げたサユをひっぱって館に入ろうとすると、オーナーに止められた。
「朝から客とは…!景気がいいね!」
「えっ、いや、その客じゃなくて…」
「客じゃなきゃ部屋には入れられないよ」
「あの…友人…なんです…」
サユがチャラチャラと音を立てる革袋をとり出した。
「一日…、いや、明日の朝まで買おう。いくらですか?」
「さ、サユ…」
「今から、明日の朝まで?そうだね…」
結局、サユはいい値を出して俺を買った。
部屋に入ると、俺はさっそく風呂場に行き、昨日の湯を捨てる。
「ちょっと、待ってて」
「うん」
井戸から水を汲んで桶で運んでいると、階段の途中でサユが現れ、ひょいと片手でそれを持ち上げ持って行った。それから井戸まで行き、桶二つ持って二階へ。三往復くらいでたらいをいっぱいにしてしまった。
「わあ…すごい…」
「水くらい、運んでやるのに」
「でも、サユはお客さんなので、そういうわけには…」
暖炉の石を水の中に入れて湯を作ると、サユの重い上衣と汚れた服を脱がせてやって、体を拭いた。
血の匂いがすごい。小さいたらいで頭から湯を浴びせて、髪を梳く。
「サユは怪我してないの?」
「うん、無傷だ…それより…」
「うん?」
「タクトは平気か…仕事はつらくないか?」
遠慮がちにサユは聞いてきた。
「うん、まあ…慣れたよ!」
「慣れたか…」
平気なのを装ってみたが、サユは複雑そうな顔をした。
体を拭いて終わると、サユは仮眠させてくれと言って、寝台に横になるとすぐに眠りに落ちた。
隣に寝て、寝顔を見る。
疲れのにじんだ顔だが、それでも、というかそれゆえに美しい。銀色のまつ毛が長くて見惚れてしまう。
安らかな眠りには見えない。眉根が寄って、少し険しい寝顔だった。
小一時間程した後、ふっとサユが目を覚ました。
「んん…どのくらい寝てた?」
「そんなに…まだ、昼前だよ」
「そうか…」
サユが俺を抱き寄せて、ああ、キスをするのかなと思ったら、額にされた。
「タクト…していい?」
「いいよ…俺も…したい…」
次は唇にされた。熱っぽいキスに体が熱くなる。
18
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる