21 / 52
21 ここらで身の上話でも!
しおりを挟む次の日も、その次の日もサユは俺を買った。
毎日、一緒に寝て、一緒にごはんを食べたり、買い物したりして、俺はサユにぶらさがるみたいにくっついて街を歩いた。
実際、サユの腕にぶら下がることは出来る。一度片腕で力こぶを作るみたいに、腕を突き出してもらって、そこにつかまって足を曲げてみたら、俺の体は難なく浮いた。
セックスする晩もあったし、しない時もあった。
「別に俺を買わなくても、サユならロハでいいのに。外で会えばいいじゃん」
と、俺が言うと
「そういうわけにはいかない」
と、やけに真面目な顔でサユは言って、とりなすようにニコっと一瞬微笑んだ。
三十万カイスも返そうとしたが、固辞された。
「何があるかわからない。金は持っていた方がいい」
「うん…」
今更ながら、サユの実家の話も聞いてみた。
「片田舎の領主だよ…」
と、つまらなそうに言う。
「それって、すごくない?なんで家を出たの…」
「別にすごくない…俺は三男だし、姉や妹を嫁に出すにも金がいるし、ごくつぶしになっちゃ肩身が狭いから、出てきちゃったんだ」
「でも、お城に住んでたんじゃない?」
「まあ…それはそうだけど。広いばっかりで不便だよ。それより、タクトは学校へ行ってたんだろう。学校って面白い?」
「サユは学校に行ったことないの?」
「家庭教師がついてたから」
なるほど。
学校が面白いかと言われると、答えるのは難しい。成績は中の上で授業についていくのに困りはしなかったし、クラスの中で浮いているということもなかった。つるめる友人は何人かいた。
でも、いじめを見て見ぬふりをしたこともある。自己嫌悪に苛まれて、でも誰にも相談せずに波風を立てないようにしていたような気がする。
「学校は…どうだろう。別に勉強するだけだし…。人によるんじゃないかな…。同じ年の友達はできるけど」
「ふうん…。何を勉強するんだ?」
「えっ!数学とか、古文とか…あっ、美術や音楽もやるし…」
サユは俺の話を楽しそうに聞いていた。
サユが領主の息子というのは納得だった。どうりで庶民臭くない、いやに上品なかんばせをしているわけだ。
ある朝、サユは一人で街に出ていって、果物やタパスチー、酒などたくさん食べ物を買い込んできて言った。
「今日は、一日部屋にいよう。いい?」
「うん。いいよ」
「じゃあ、食べよう」
「うん」
朝食に二人で果物を食べて、くつろぐ。
二人でベッドに並んで座っていると、サユが軽くキスしてきた。
額に。
次に頬に、まぶたに…。なかなか唇にしない。
俺をゆっくりベッドに押し倒して、やっと唇と唇を合わせた。合わせるだけ。
「ん……」
深く口づけようとすると、離れてしまう。
互いに見つめ合って口づけるのを繰り返す。
「ん…サユ…」
首に手を回して、引き寄せようとするが、サユはびくともしない。
何度も軽いキスをしてから、やっと舌を差し入れてきた。この緩慢さはなんだろう。
18
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる