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魔法使いの弟子になる
しおりを挟む汚れたテーブルの上を掃除しながら、アーチェは口を動かす。
「私もちょっと有能なスキル持ちでね。鑑定スキルっていうのを持ってるんだけど、それがあると結構便利なのよ。相手の力量なりスキルとかも丸見えになるから」
目に見えるゴミを落とした後、手のひらに魔法で水を作り出すとそれをテーブルに添わす形でさらに汚れを取っていく。
「それにしても、自害阻止スキルに自然治癒スキルなんていうのは私も初めて見たかな。…でも、効果を読んでみたけど、普通に考えても自殺防止のためにつけられたスキルに見えるんだけど」
そして、粗方掃除をし終えたアーチェは視線を動かし、
「そろそろ、こっちに来ない?」
「こっち来んなーっ!!」
神宿は若干トラウマを植え付けられ、部屋の端でブルブルと震えているのだった。
「……………」
「もう、そんなに拗ねないでよ。ちょっと試したかっただけなんだから」
「試しで、人を実験動物扱いにすんなっ!」
結構時間が経って、何と落ち着きを取り戻した神宿はある一定の距離をとりつつアーチェの話を聞いていた。
いつでも逃げ出せるよう、出入り口を意識しながら、
「でもね、これ私みたいな魔法使いに見つかったからよかったものの、ほかのひとたちに見つかったら色々とマズイと思うの」
「いや、アンタみたいなよりマズイやつなんていないだろ」
まさに今やってくれた事をそのまま問いただしたくなる神宿だったが、
「本当よ? 私の場合は軽いイタズラですんだけど、下手すれば最悪、牢屋にぶち込まれて一生地上の光も浴びれないほどに体を弄られちゃうわよ?」
「…………え、マジで?」
「うん、マジで」
最初は冗談で言っているのかと思った。だけど、最後の言葉だけはわりと本当なのか
、真剣な顔で言ってきたのだ。
「「…………」」
一瞬、その場に沈黙が落ち、
「も、森で一生住むから! 俺には関係ないっ!!」
「無理よ、だって君を探しに冒険者たちが今も色々やってるみたいだし」
「えっ!? まだ諦めてないのか、アイツら!?」
「だって、この森一応は進入禁止領地だもの。魔族とかもよく出没するから、多分君が魔族かなんかだと勘違いされたんだと思うよ?」
「いやいや、横暴すぎるだろ!?」
だけど、今更言っても遅いだろうし? と言ってくるアーチェに頭を抱え、悩みこむ神宿。
このままでは居場所がゼロになってしまう。
せっかく生活が落ち着いてきたの!
どうする、逃げるか? いや、もう一層諦め覚悟で命乞いでも、と考え込んでいた神宿。
すると、そんな彼にアーチェはニッコリと笑いながら、ある提案を持ち込んできた。
「ねぇ、どうする? もしよかったら、君。私の弟子になってみない?」
「…………は?」
「私の元で魔法を体得すれば、色々とやれることが増えるだろうし、後この森にも入られるよ? 一応、私。森滞在の許可とかもらってる身だし」
どうする? と顔を覗かせるアーチェ。
その提案は割といいものなのだろう。
ただ、さっきの一件もあるため中々素直にウンと頷けない気持ちで一杯の神宿。
だが、しかし…
「後、ご飯とか寝床とかも貸してあげれるよ?」
あのまま男たちに捕まって、牢屋に連れていかれるよりマシだ。
もう、腹をくくるしかない。
神宿はどっと疲れたように溜息をもらし、頭をうなずかせ、
「ふふっ、それじゃあ、よろしくね? カミヤド、トオル君?」
そうして、神宿 透はこの日。
魔法使いアーチェの弟子になるのだった。
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