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料理が壊滅的だった
しおりを挟むそれはアーチェの弟子になって、直ぐの頃だった。
神宿は大きなため息を吐き、目の前に座るアーチェに告げる。
「お前、もう飯作るな」
その瞬間。
アーチェは口をあんぐり開けて、衝撃が走ったような顔をした。
「えー、と。トオル君? な、何でー?」
「そのままの意味だよ。アンタも薄々気づいてると思うけど、飯作るの下手すぎなんだよ」
というのも、弟子になった神宿は今、アーチェと共に森の中に立つ木造の一軒家に住んでいる。
そのため、家事やら魔法の勉強やらと色々させられている毎日でもあるのだが、何故か料理に関してはアーチェは自分でやると言って聞かないのだ。
「そ、そんなことないよー? 気のせいだよー?」
「いやいや、壊滅的にアウトだからな」
「ぅ、ぃや、でもー」
「この前、塩と砂糖間違えたし、その前だって調味料とかいってわけわからん変な粉入れて料理が爆発しただろ?」
「…………」
「それに、そのその前だって」
「トオルの意地悪ー!! そんなに私をいじめて楽しいの!? まだあの時毒飲ませたこと怒ってるの!?」
「当たり前だろうが!! ってか、それ以前にアンタはもう料理作るの諦めろって言ってんだよ!? 毎食ビクビクしながら食事する俺の身にもなれよ!?」
共に意見をぶつけ合い、両者引かない神宿とアーチェ。
すると、眉間にシワをよせたアーチェがある提案をしてきた。
「だ、だったら料理対決しよう! それでどっちの料理が上手いかで料理当番決める! これでどう!」
「ああ、いいぜ! もう殆ど勝ちは決まってるけどな!」
そうして、師弟同士の料理対決の幕が開いたのであった。
「で、これはどういう事なんだ?」
神宿たちは今、森の一角。
モンスターたちがよく立ち寄る休憩場所を茂みの中から覗き込んでいた。
「だから、モンスターたちに実食してもらって」
「いやいや、何でそこでモンスターが出てくるんだよ? 普通は人だろ?」
「っ……それはあれだよー? ほら、モンスターって危険察知とか上手だし」
と、隣で座るアーチェがそんな誤魔化し方をしていたが、神宿はしばらくしてある事に気づく。
「あ、そっか。アンタ、友人がいないぼっ」
「トオル君ー? それ以上言うと、二度と口が開けない魔法掛けちゃうよー?」
など、無毛な争いをしていた。
そんな時だった。
『ガルルゥウ!』
休憩場所に、ライオンのような姿をしたモンスターがやって来たのだ。
そして、モンスターは見つめた先には二つの皿があり、それぞれ料理が添えられている。
「ふふふっ、私の実力を見せてあげるよー?」
「…何か、アンタが言うと別の意味に聞こえるよな。本当に」
ライオンはクンクンと鼻をひくつかせ、そして、最初に神宿の作った料理に近づいた。
だが、フイっと視線を変えるとライオンはアーチェの作った料理に真っしぐらに突撃して、有無言わさずして料理を食べ始めたのである。
「う、うそー」
「よっし! ほら、トオル君見たー? 私の料理の方が美味しいみたいだねー? ふふっ!」
勝ち誇った笑みを浮かばせるアーチェに心底カチンとくる神宿。
だが、そんな時だった。
『グニャん!?!?』
と、珍妙な悲鳴が聞こえてきたのだ。
神宿とアーチェは互いに顔を見合わせ、視線をモンスターがいた所へと向ける。
すると、そこにはーーーーー
イナバウワー的な格好をして、失神するモンスターの姿があった。
後、口からもれなく泡までついていた。
「というわけで、今後。俺が料理を作るからな? いいな?」
「………はーぃ」
そうして、料理担当を勝ち取った神宿の言葉に頬を膨らませるアーチェなのだった。
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