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新しい魔法の暴走
しおりを挟む神宿は今、手汗を握る思いでそれに集中していた。
見つめる先にあるのは宙を浮く水の塊。
まん丸いそれは自身で回転するように、クルクル、と回っている。
そして、それが延々と続くように、
「はい、そこでストップ」
と、背後にいたアーチェの声と同時に神宿の集中が途切れた。
すると、水の塊は形を崩壊させ、弾けるようにしてその場に跳ね飛んでしまう。
「うん、今回は長い時間魔法の維持が出来たみたいね? うんうん、昨日より今日。確実に成長してるよー?」
「うはぁー! 疲れたーっ!」
「ほらほら、もうそろそろ、お昼の時間だよー? 昼ごはん、よろしくー?」
料理担当を獲得したせいもあって、魔力を使って疲れている中でも動かなくてはいけない。
神宿は溜息をつきながら、昼食を作るためにキッチンへと向かうのだった。
「ところで、あの修行いつまで続けるんだよ?」
「うん?」
昼食を食べつつ、そう質問してくる神宿に首を傾げるアーチェ。
「いつまでって、ずっとだけど? もしかして、飽きちゃった?」
「うっ」
「まぁ、男の子だもんねー? そろそろかなーって思ってたんだけど」
「わ、悪かったな……」
異世界でのファンタジーを期待して来た身ではない神宿。だが、男の子ということもあって、多少は凄い魔法なども使ってみたいと、そう思っていたのだ。
「でもねー? あれは基礎中の基本だから、大事な事だしー?」
「………」
「うんー、よし。それならちょうどいい頃合いだし、あれ試してみようかなー?」
「…え?」
アーチェはそう言うと手のひらから魔法で水の塊を作り出す。
そして、神宿が見つめる中でその水を操り、長い蛇のような姿を作り出した。
「これ、造形の魔法なんだけどー? 覚えてみるー? 慣れれば何でも思い通りに作れちゃうよー?」
「……な、慣れれば」
「うん、剣だったりー? 槍だったりー? もしくは命令をつき加えた魔法人形も作れたりしちゃうかもねー?」
剣などと言った言葉を口にしたアーチェ。
男の子を心を刺激する、その単語は物の見事に神宿の興味を際立たせ、
「そ、それなら、やってみてもいいけど」
「ふふっー?」
こうして、神宿は初の新しい魔法でもある、造形魔法に取り掛かるのだった。
そうして、時間が経って夕方頃。
「もうギブアップー?」
「はぁーはぁーはぁーっ!」
結果。神宿はバテていた。
というのも造形魔法には実のところ多量の魔力を有する。
しかも、コントロールが十分に出来ていないと余分に魔力量の喪失が激しくなる。
「まぁ、今ぐらいだとこれぐらいかなー? 君が扱えるサイズだとー?」
そう言ってアーチェが手でつまんだのはミニチュアサイズの水蛇。
昼から夕方にかけ、神宿が唯一できたのはそれぐらいのサイズでの造形魔法だった。
「まぁ、この分だともうそろそろコントロールが切れちゃうからねー? ってトオル君? 聞いてるー?」
「………」
「ありゃりゃ、もしかして寝ちゃった? もう仕方がないなぁー?」
気を失って寝てしまった神宿に優しく笑みを向けるアーチェ。
よいしょと、立ち上がりそんな彼を部屋まで背負って運んであげようとした。
そんな時だった。
「あれ? さっき蛇は?」
つい気をそらしてしまったため、神宿の作った蛇を離してしまったアーチェ。
どこだろー? と周りをキョロキョロと見渡そうとした。
その時だった。
「うひゃ!?」
その場所はアーチェの背筋。
冷たいものがその肌をスルリと撫でるようにして、通り過ぎたのがわかった。
だから、アーチェも可愛らしい悲鳴を上げたのだが、
「も、も…もしかして、トオル君の蛇っ、ぼ、暴走して」
と会話が続く前に、スルリと。
「うひゃ!!」
またスルリと。
「ウニャ!!」
そして、スルスルと。
「そっ!? そそこは入っちゃダメっーーー!!」
こうして、神宿が初めて覚えた魔法は師匠に一泡吹かせることに成功したのであった。
そして、その後日。
みっちり怒られた上、神宿の修行が少し厳しくなったのだった。
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