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第四章 犯罪者共は学をつける
66.共通の敵
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「おいユン、頼むから助けてくれ。」
「やだ!だって今のガジュ、超面白いもん!」
ユンという人間は基本的に悪辣である。他人の不幸を喜び、人の感情が揺さぶられるのを最高に楽しむ。そしてどうやらその性質は、ガジュに対しても作用するようであった。
「ガジュ……?ガジュ様って言うんですかぁ?ふふふっ、男らしくていい名前ですねぇ。」
「ひっ、止めろ!腕にまで抱きつくな!お前は一体何者なんだ!」
「私ですかぁ?私はノア。ガジュ様のお嫁さんでーす!」
ガジュの太い腕に抱きつき、なんやかんやと喚き散らすノア。それを必死で振り払い、ガジュは彼女を睨みつける。キュキュにユンにクルトにシャルル、周りに女しかいないガジュではあるが、眼前のノアはそのどれとも違う容姿をしている。
綺麗に染め上げられたピンクの髪はふわふわに巻かれ、そこからは香水の匂いが振り撒かれている。加えて体型も豊か。胸もお尻も大きく、キュキュとは全く別の方向性でスタイルがいい。何年も檻に閉じ込められていたからか知らないが、基本的に貧相な体つきの身内らとは大違いである。
「ノア……。あぁ、貴方が例の行方不明者ですか。無事で安心しましたが、取り敢えずガジュから離れてください。嫁入り前の女性が無闇に男性に抱きつくなど、言語道断です。」
「え~?何ですかそれ~?よく分からないけど、抱きつく理由ならあると思いま~す!私はガジュ様に助けられたんですよ?それって理由にならないんですか~?」
「なりません。見た所傷も負っていませんし、頭ひとつ下げて感謝すれば完結する話でしょう。不純異性交遊の理由にはなりません。」
「ぷっ!ガジュさ~ん、この子怖~い!」
性根がふざけている人間はユンで見慣れているが、明らかにこちらをおちょくっている人間は見慣れない。ユンはあくまで万物を面白がっているだけだが、ノアは相手を怒らせるために言葉を並べている。
シャルルの眉間の皺はノアが喋る度に増えていき、今にもノアを【投獄】しようとした所で、その混沌とした場所にキュキュが現れる。そして何とも間の悪いことに、帰ってきたキュキュはローブを脱いだ状態であった。
「が、ガジュさん。オーガにトドメを刺してきました。こ、これ、討伐の証拠にへし折ってきた角です。」
「え?あぁありがとな。シャルル、受け取っておいてくれ……」
「えぇ~!!!その耳、もしかして獣人!?信じられない!ガジュ様、こんな汚らしい化け物と一緒に行動しているんですかぁ?心が広いんですねぇ~!」
「き、汚らしい化け物……。そ、そうですよねすみませんすみません。私のような愚か者が何を普通に働いているんでしょうね。駄犬は駄犬らしく駆け回っておきますね……。うー!ワンワン!」
久々にキュキュのネガティブスイッチが掘り起こされ、立派に歩いていたはずの彼女が馬鹿みたいに地面を走り回る。近頃はしっかりと獣人要素を隠してステルスしているか、クルトを筆頭に寛容な環境下で生活していたから忘れかけていたが、そういえばキュキュは生まれながらの犯罪者。圧倒的被差別人種の獣人であった。
とはいっても、被差別人種を差別するかどうかは結局個人の問題だ。ガジュも獣人に蔓延る差別は知っているが、特に気にしていなかった。シャルルもユンも、生まれや人種程度で差別するような価値観はしていない。
だがしかし、目の前にいるノアは差別する側の人間。ノアはあまりにも、『クリミナル』にとって異物である。
「ガジュ……いち早くこの人を学校まで送り届けて、縁を切りましょう。この人は、シャル達と一緒にいてはならない人間です。」
「同感だ。俺も仲間を差別されるのは腹が立つし、そもそも俺はこういうタイプの女がとても苦手だ。」
「ガジュはただ女の子に耐性がないだけでしょ?僕らはあんまり女の子っぽくないから平気なだけで、ルウシェやキュキュと話すときは割と緊張してるもんね!二十五年も生きてるのに、パワー馬鹿すぎて女の子に耐性ないとか笑っちゃうよ!」
「黙れユン。単に長年荷物持ちをさせられてきたから、そういうのに縁遠かっただけだ。」
無駄に観察眼の鋭い身内を睨みつけつつ、ガジュは歩き始める。行方不明者は確保、オーガも討伐。シャルルの言う通り、ここに残る意味はない。とっとと帰るが吉。そう判断すると、ガジュの耳にポンと手を叩くような軽い音が響く。
「どこかで聞いたことがあると思ったら~!ガジュ様ってあのガジュ様ですかぁ?うちのお兄ちゃんとパーティを組んでた、ガジュ・アザッド!」
「うちのお兄ちゃん?」
「はい!私のお兄ちゃん、ハクア・ドムっていいます!」
最早忌み名とも呼ぶべきその名を聞き、今度はガジュの眉間に皺が寄っていた。
「やだ!だって今のガジュ、超面白いもん!」
ユンという人間は基本的に悪辣である。他人の不幸を喜び、人の感情が揺さぶられるのを最高に楽しむ。そしてどうやらその性質は、ガジュに対しても作用するようであった。
「ガジュ……?ガジュ様って言うんですかぁ?ふふふっ、男らしくていい名前ですねぇ。」
「ひっ、止めろ!腕にまで抱きつくな!お前は一体何者なんだ!」
「私ですかぁ?私はノア。ガジュ様のお嫁さんでーす!」
ガジュの太い腕に抱きつき、なんやかんやと喚き散らすノア。それを必死で振り払い、ガジュは彼女を睨みつける。キュキュにユンにクルトにシャルル、周りに女しかいないガジュではあるが、眼前のノアはそのどれとも違う容姿をしている。
綺麗に染め上げられたピンクの髪はふわふわに巻かれ、そこからは香水の匂いが振り撒かれている。加えて体型も豊か。胸もお尻も大きく、キュキュとは全く別の方向性でスタイルがいい。何年も檻に閉じ込められていたからか知らないが、基本的に貧相な体つきの身内らとは大違いである。
「ノア……。あぁ、貴方が例の行方不明者ですか。無事で安心しましたが、取り敢えずガジュから離れてください。嫁入り前の女性が無闇に男性に抱きつくなど、言語道断です。」
「え~?何ですかそれ~?よく分からないけど、抱きつく理由ならあると思いま~す!私はガジュ様に助けられたんですよ?それって理由にならないんですか~?」
「なりません。見た所傷も負っていませんし、頭ひとつ下げて感謝すれば完結する話でしょう。不純異性交遊の理由にはなりません。」
「ぷっ!ガジュさ~ん、この子怖~い!」
性根がふざけている人間はユンで見慣れているが、明らかにこちらをおちょくっている人間は見慣れない。ユンはあくまで万物を面白がっているだけだが、ノアは相手を怒らせるために言葉を並べている。
シャルルの眉間の皺はノアが喋る度に増えていき、今にもノアを【投獄】しようとした所で、その混沌とした場所にキュキュが現れる。そして何とも間の悪いことに、帰ってきたキュキュはローブを脱いだ状態であった。
「が、ガジュさん。オーガにトドメを刺してきました。こ、これ、討伐の証拠にへし折ってきた角です。」
「え?あぁありがとな。シャルル、受け取っておいてくれ……」
「えぇ~!!!その耳、もしかして獣人!?信じられない!ガジュ様、こんな汚らしい化け物と一緒に行動しているんですかぁ?心が広いんですねぇ~!」
「き、汚らしい化け物……。そ、そうですよねすみませんすみません。私のような愚か者が何を普通に働いているんでしょうね。駄犬は駄犬らしく駆け回っておきますね……。うー!ワンワン!」
久々にキュキュのネガティブスイッチが掘り起こされ、立派に歩いていたはずの彼女が馬鹿みたいに地面を走り回る。近頃はしっかりと獣人要素を隠してステルスしているか、クルトを筆頭に寛容な環境下で生活していたから忘れかけていたが、そういえばキュキュは生まれながらの犯罪者。圧倒的被差別人種の獣人であった。
とはいっても、被差別人種を差別するかどうかは結局個人の問題だ。ガジュも獣人に蔓延る差別は知っているが、特に気にしていなかった。シャルルもユンも、生まれや人種程度で差別するような価値観はしていない。
だがしかし、目の前にいるノアは差別する側の人間。ノアはあまりにも、『クリミナル』にとって異物である。
「ガジュ……いち早くこの人を学校まで送り届けて、縁を切りましょう。この人は、シャル達と一緒にいてはならない人間です。」
「同感だ。俺も仲間を差別されるのは腹が立つし、そもそも俺はこういうタイプの女がとても苦手だ。」
「ガジュはただ女の子に耐性がないだけでしょ?僕らはあんまり女の子っぽくないから平気なだけで、ルウシェやキュキュと話すときは割と緊張してるもんね!二十五年も生きてるのに、パワー馬鹿すぎて女の子に耐性ないとか笑っちゃうよ!」
「黙れユン。単に長年荷物持ちをさせられてきたから、そういうのに縁遠かっただけだ。」
無駄に観察眼の鋭い身内を睨みつけつつ、ガジュは歩き始める。行方不明者は確保、オーガも討伐。シャルルの言う通り、ここに残る意味はない。とっとと帰るが吉。そう判断すると、ガジュの耳にポンと手を叩くような軽い音が響く。
「どこかで聞いたことがあると思ったら~!ガジュ様ってあのガジュ様ですかぁ?うちのお兄ちゃんとパーティを組んでた、ガジュ・アザッド!」
「うちのお兄ちゃん?」
「はい!私のお兄ちゃん、ハクア・ドムっていいます!」
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