【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria

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出産編

対面

「ほら、お連れしましたよ」

ボロボロ泣く2人に構わず、ベイカーがおくるみに包まれた我が子を抱っこして近づいてきた。

「リリアナ、抱っこできるか」

「はい」

ベイカーはリリアナの胸におくるみごとそっと乗せ、両手で受け取ったのを見届けてから手を離した。

2人してまじまじと顔を眺める。

さっきまであんなに泣いていたのに、今は抱っこされて大人しい。

「小っちゃいな…」

髪は産毛程度だが、白っぽい金に見える。

左目はまだ開かないのか、右目だけうっすらと開いて、その瞳は綺麗な紫水晶アメジストだった。

俺とリリアナの子だ・・

愛おしさで胸がいっぱいになる。

「セイ様も、抱っこしてあげてください」

抱っこしたい。

でも、こんな小さくてふにゃふにゃの頼りない存在を、下手な抱っこで壊してしまいそうで怖い。

「俺は、後でサフィに習ってからにする。」

「殿下がお抱きにならないと、他の者が抱っこできないのでは?」

ベイカーに指摘されて、俺は周りを見回した。

感涙しているヒルラ、期待した様子でこちらを見る侍女長と侍女2名。

確かに、ヒルラには抱っこさせてやりたい。

「ほら、妃殿下は後産が控えているので早くしてください」

事務的なベイカーに不本意ながら指南されて、怖々と抱っこする。

その軽さに益々驚かされる。

人というのは、生まれた時にはこんなにも小さく儚いものなのか。

落としてしまわないか心配で、抱っこしたままピクリとも動けなかった。

「フフ・・セイ様、カチコチすぎます」

クスクスと笑うリリアナに続き、侍女たちからも笑われる。

「べ、ベイカー、受け取ってくれ。」

「もういいですか。よろしいですね。ではご退出を。」

「わかった・・リリアナ、待ってるな。」

「はい。あ、セイ様。陛下にご報告をお願いできますか?」

「もちろんだ」

額に口付けて、部屋を退出した。




上着を羽織り、会議中の父上の元へ向かう。

折しも、今は第114回母子保健会議の最中だ。

会議室の前で大きく息を吸う。

「王太子殿下がお見えです!」

ノックの後、近衛がドアに向かい大声で呼びかけ、開扉する。

「陛下、ご報告があり参りました」

「セイラム!」

国王は思わず席を立ち叫んだ。

「生まれたのか!?」

皆が固唾を呑んでこちらを見ている。

この報告を出来ることが、どれほど幸せなことなのか、セイラムは知っている。

「我が妃リリアナが、先ほど無事に男児を出産いたしました!」

会議室は途端に沸いて、「おめでとうございます!」のお祝いの嵐となった。

気が抜けてヘタリ、と椅子にもたれかかる国王。

慌ててレダー長官が支えに向かう。

笑顔が弾けるジェスが、むせび泣く父のヴァイスの肩をたたく。

「王子だ!各所に伝令を!」「早馬を出せ!」と早速手回しを始める、仕事の早い王太子執務室文官たち。

狂喜しながら胴上げしようとやってくる厚生府・労務府・法治府の面々と、それを阻止しようとする近衛たち。

もみくちゃにされながら、セイラムは屈託のない笑顔で幸せを噛みしめたのだった。

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