7 / 17
餌にならずに済んだみたいです
目の前まで来た白虎は鼻を近づけて、しばらく私をフンフンと嗅いでいた。
「・・・」
餌かどうか訝しんでいるのだろうか。
私の首元を念入りに嗅いだ後、頭やお腹にまで鼻先を近づけてフンフンと嗅ぎまわる。
・・私、お風呂入ったよね?
命の危機だと言うのに、何か侮辱された気がしてスンッとなった。
しばらく嗅ぎまわってようやく満足したのか、白虎は最後に私の顔をひと舐めして、その場に座った。
いや、座るその前に、フルリと震えてその輪郭が溶けていく。
パチパチと瞬きをしているうちに、大きかった体がぼやけながらどんどん小さくなっていって、そして目の前にー
今まで見たことないがないほどの美形が現れた。
所々黒のメッシュが入った真っ白な長髪。
頭頂部に並ぶ、2つの大きな虎の耳。
吸い込まれそうな紫の瞳。
細面の、モデルのように美しい顔には微笑が浮かんでいる。
成り行きを見守っていた群衆から細波のように騒めきが起こり、やがてそれは歓声になった。
「顕現された!」
「顕現されたぞ!」
「何と・・!ようやく」
阿王なんてボロ泣きしてたらしいけど、私は何が起こってるんだかわからず目の前のイケメンを見上げてポカンとしていた。
(この人・・もしかしてさっきの白虎?)
気づいた時にはそのイケメンに横抱きにされていて、物凄く焦る。
イケメンは愛おしげに私を見つめると、そのまま回れ右をして洞窟に向かって歩き出した。
え?え?
背を反らして振り返ると、何やら手の甲で目元を拭っている阿王が見えた。
松明からどんどん遠ざかっていく。
「んんー!」
リアルお持ち帰りされてるんだけど!気付いてよ!
側近が何やらこっちを指差しながら阿王の肩を揺らしている。
それでようやく気づいたらしい。
「ちょっ!ちょっ待っ!し、神獣様!神獣様、お待ちをー!」
阿王の声が聞こえるが、イケメンは歩みを止めない。
阿王はズザザッ!と走り込んでくると、必死の様子でこう訴えた。
「神獣様!我が名はこの国を統べる王、阿王 遵景と申します。此度は番様とのお巡り合わせ、誠におめでとうございます!我が国は神獣様と番様の幸せな生活をお支えすべく、宮を準備しております。つきましては!どうぞ宮までお越しください。宮での快適な生活はきっと番様にも喜ばれることでしょう!」
阿王の必死の呼びかけも構わず、イケメンは阿王を素通りして洞窟に向かっていく。
「お、お待ちを!宮には!宮には快適にお過ごし頂くための最新の換気設備はもちろん、充実の水回り、人目を気にすることなく入れる屋外温泉に・・・専用の庭園、執事が常駐し、24時間体制でお二人の快適な宮生活をお支えします!」
・・この人、国王より不動産の営業担当の方が向いているのでは?
イケメンは"屋外温泉"のくだりあたりから歩みを止めて、じっと阿王の言うことを聞いているようだ。
「ほら、洞窟には番様が苦手な虫が・・ゲジゲジとか蜘蛛とかおりますし、番様も宮住まいを望まれるのでは?」
ヒィッ!虫!
阿王の提案に乗るのは癪に障るけれど、虫嫌いの私は何度も頷いた。
「もちろん、番様を飾り立てる美しい装飾品も衣装もすぐに準備させましょう!」
イケメンが微笑んで頷き、そっと頭を撫でてきた。
優しそうではある。
私の扱いも丁寧だ。
でもこの猿轡を先にとってくれないことで、全て台無しだ。
「・・宮はどこにある?」
喋った・・!喋れるんだ!
「お連れします!ささっ!」と、いつの間にか用意されていた輿に誘導する阿王。
お祝いムードの中、イケメンに抱かれたまま乗せられた輿は、ゆっくりと宮に向かって進み出した。
「・・・」
餌かどうか訝しんでいるのだろうか。
私の首元を念入りに嗅いだ後、頭やお腹にまで鼻先を近づけてフンフンと嗅ぎまわる。
・・私、お風呂入ったよね?
命の危機だと言うのに、何か侮辱された気がしてスンッとなった。
しばらく嗅ぎまわってようやく満足したのか、白虎は最後に私の顔をひと舐めして、その場に座った。
いや、座るその前に、フルリと震えてその輪郭が溶けていく。
パチパチと瞬きをしているうちに、大きかった体がぼやけながらどんどん小さくなっていって、そして目の前にー
今まで見たことないがないほどの美形が現れた。
所々黒のメッシュが入った真っ白な長髪。
頭頂部に並ぶ、2つの大きな虎の耳。
吸い込まれそうな紫の瞳。
細面の、モデルのように美しい顔には微笑が浮かんでいる。
成り行きを見守っていた群衆から細波のように騒めきが起こり、やがてそれは歓声になった。
「顕現された!」
「顕現されたぞ!」
「何と・・!ようやく」
阿王なんてボロ泣きしてたらしいけど、私は何が起こってるんだかわからず目の前のイケメンを見上げてポカンとしていた。
(この人・・もしかしてさっきの白虎?)
気づいた時にはそのイケメンに横抱きにされていて、物凄く焦る。
イケメンは愛おしげに私を見つめると、そのまま回れ右をして洞窟に向かって歩き出した。
え?え?
背を反らして振り返ると、何やら手の甲で目元を拭っている阿王が見えた。
松明からどんどん遠ざかっていく。
「んんー!」
リアルお持ち帰りされてるんだけど!気付いてよ!
側近が何やらこっちを指差しながら阿王の肩を揺らしている。
それでようやく気づいたらしい。
「ちょっ!ちょっ待っ!し、神獣様!神獣様、お待ちをー!」
阿王の声が聞こえるが、イケメンは歩みを止めない。
阿王はズザザッ!と走り込んでくると、必死の様子でこう訴えた。
「神獣様!我が名はこの国を統べる王、阿王 遵景と申します。此度は番様とのお巡り合わせ、誠におめでとうございます!我が国は神獣様と番様の幸せな生活をお支えすべく、宮を準備しております。つきましては!どうぞ宮までお越しください。宮での快適な生活はきっと番様にも喜ばれることでしょう!」
阿王の必死の呼びかけも構わず、イケメンは阿王を素通りして洞窟に向かっていく。
「お、お待ちを!宮には!宮には快適にお過ごし頂くための最新の換気設備はもちろん、充実の水回り、人目を気にすることなく入れる屋外温泉に・・・専用の庭園、執事が常駐し、24時間体制でお二人の快適な宮生活をお支えします!」
・・この人、国王より不動産の営業担当の方が向いているのでは?
イケメンは"屋外温泉"のくだりあたりから歩みを止めて、じっと阿王の言うことを聞いているようだ。
「ほら、洞窟には番様が苦手な虫が・・ゲジゲジとか蜘蛛とかおりますし、番様も宮住まいを望まれるのでは?」
ヒィッ!虫!
阿王の提案に乗るのは癪に障るけれど、虫嫌いの私は何度も頷いた。
「もちろん、番様を飾り立てる美しい装飾品も衣装もすぐに準備させましょう!」
イケメンが微笑んで頷き、そっと頭を撫でてきた。
優しそうではある。
私の扱いも丁寧だ。
でもこの猿轡を先にとってくれないことで、全て台無しだ。
「・・宮はどこにある?」
喋った・・!喋れるんだ!
「お連れします!ささっ!」と、いつの間にか用意されていた輿に誘導する阿王。
お祝いムードの中、イケメンに抱かれたまま乗せられた輿は、ゆっくりと宮に向かって進み出した。
あなたにおすすめの小説
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
竜喚び聖女は捨てられた竜騎士を救いたい!
待鳥園子
恋愛
喚んでも来ない竜を一年ほど待ち続けて、それが原因で婚約者にも捨てられた竜騎士ジェイド・ロンバルディ。
そんな彼の竜を喚ぶことが出来れば『竜喚び聖女』を辞めて良いという約束を取り付けたラヴィ二アは、なんとか喚び出すために双方とも服を脱ぎ接触面を増やし、自らの竜喚びの能力を高めたいとジェイドに提案する。
しかし、真面目で堅物な竜騎士ジェイドは、これをすぐには無理と拒否。二人の目的のためにはどうしてもこれが必要だと、聖女を辞めたいラヴィ二アは、なんとか彼を説得しようとするのだが……。
普通の貴族令嬢に戻りたい訳ありセクハラ聖女と真面目堅物な不憫竜騎士の脱ぐか脱がないかのギリギリ攻防戦ラブコメ。
【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?
篠月珪霞
恋愛
「…え」
まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。
私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。
いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。
過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。
【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。
地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます
白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。
特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。
だがある日、突然の婚約破棄通告――。
「やはり君とは釣り合わない」
そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。
悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。
しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。
「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」
「よければ、俺が貰ってやろうか?」
冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!?
次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには
「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」
――溺愛モードが止まらない!
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。