【完結】モブは乙女ゲームにツッコミたい

airria

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見張られてます?

その後、モリーは本当に覗きをやめた。

やはりモブは生きている世界が違うのだろう。

同じ学校にいるのに、ヒロイン達を見かけることすら殆どなくなった。

モリーとして生まれ変わって3ヶ月が過ぎており、元の世界に戻るのはかなり厳しいんじゃないか、と思っている。

いつまでもお客様気分では居られない。もうここが自分の世界ホームなのだ。

王太子とお茶をした翌月のある日、家に、差出人不明の、モリー宛の不審な手紙が届いた。

開封すると、綺麗な文字で

【元気かな?明日行くからよろしくね 君の先輩より】と書いてあった。

「うん、元気じゃないことにしよう」

仮病を使うことに決めたモリーだったが、翌朝、朝食を食べていると、速達で手紙が届いた。

【モリーが元気一杯だって報告は受けているからね?今日、楽しみにしているよ 君の先輩より】

「ヒィッ!」

思わず手紙を投げ捨てて、後ろを振り返った。

え・・ばれてる?まさか、見張られている!?

バクバクと心臓が音を立てる。




「あぁ、モリー久しぶりだね、やっぱり元気そうだ」

放課後、下駄箱にメモが入っていた。

【温室サロンにおいで】

そこにはニコニコと笑顔の王太子がいた。

また美味しそうなスイーツが並んでいる。

モリーはモンブランを頼んだ。

「学校生活はどうかな?特に問題ないかな?」

「はぁ、特には。」

「覗きもちゃんとやめたみたいで、安心したよ」

「あの、もしかしてなんですけど」

「うん?」

「私、見張られてます?」

王太子は目を見開いた。

「そんな、見張るなんて、そんなことしないよ」

「そ、そうですよね、すみません、こんな小娘を見張るなんて発想、おかしいですよね!私…なんか自意識過剰みたいで恥ずかしい」

王太子は笑顔でうんうんと頷いた。

「大切なモリーを見守らせてるだけだから安心して」

「それ見張ってるやないかい!」

その後、見守りをやめてほしい、と必死に懇願したが、王太子はニコニコと笑顔のままで、取り合ってくれなかった。




その翌月、またもや手紙が届いた。

【元気そうだね。明日君と一緒に食事をしたいな。迎えに行くね !君の友人より】



もはや恐怖だわ、恐怖。

迎えに行くとはどういうことか。

迎えとすれ違った風を装えば、逃れられるかもしれない。

その日は学校にいる間中、いつ現れるのかと警戒していたが、結局放課後になってもそれらしき動きはなかった。

下駄箱を開きたくなくて、外履きを教室のロッカーに置いておいたのが良かったのかもしれない。

それか、忙しくて来れなくなったのかもしれない。曲がりなりにも王太子だし。

迎えが来なかったから帰った。

よし、完璧な理由だ。

安堵の息を吐いて、学校から出ている乗合馬車の停車場の最後尾に並ぶと、馬も車体も何もかもが黒い怪しい馬車が、モリーの前に停まった。

御者が降りて扉を開き、恭しく礼をする。

扉の中にはこれまた黒いカーテンがかかっており、中は全く見えない。

「・・・」

列に並んでいる人からの視線を受けたが、モリーは知らないふりをした。

「あの、あなたの馬車でなくて?」「違います」

微動だにしない馬車に居た堪れなくなり、3歩横に移動した。

すぐさま御者が馬車に乗り込み、目の前まで移動し停車する。

トントン、と馬車の中から合図がして、御者が馬車に耳を寄せて何事かを聞いて頷いている。

御者は再び馬車から降りて、扉を開くと咳払いして口を開いた

「10!」

モリーはギョッとして顔を上げた。

「9!8!7!6!」

怖い怖い怖い!

モリーは馬車に飛び込んだ。



「モリー、会いたかったよ!君も待ちきれなかったんだね?飛び込んでくるなんて!」

勢いをつけて飛び込んだせいでバランスを崩しかけたモリーは、王太子に抱き止められていた。

飛び込む前、散々無視した経緯も見ていたくせに、これだ。

王太子にギューギュー抱きしめられながら、モリーは思った。

「これは厄介な相手に気に入られてしまったようだ」と。





「モリーと居ると退屈しないな」

「お陰様で、私はお手紙をいただく度に、恐れ多くて寿命が縮まっております」

「ハハハ、モリーは本当に面白いな」

だめだ、話が通じない。

モリーはため息をついて食事に手をつけた。

さすが王太子の利用するレストランなだけあって、とても美味しい。

「そういえば、今度テストがあるんだって?」

「あ、はい」

「楽しみだなぁ。この間は総合8位だったよね?さすがモリーだ。次はもっと上を狙うつもりだよね?」

「あ、この間のは、まぐれと申しますか…」

「手を抜いたりしちゃ、ダメだからね?」

ビックゥ!とモリーの肩が跳ねる。

「モリーが頭がいいこと、皆に教えてあげないとね」

怖いよぉ・・・涙目でモリーは頷いた。





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