【完結】モブは乙女ゲームにツッコミたい

airria

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影025

報告

「…ということがございまして、報告させていただいた次第です。」

王太子の執務室で報告を終えると、俺は跪いたまま、指示を待った。

先程まで聞こえていた、ペンを走らせる音は途絶えたままだ。

「その娘の情報を。」

「は。名はモリー。トワンク子爵のひとり娘で今年18歳になります。レジーナ学園の3年生。生育歴、交友歴に特筆するようなものはなく、デビュタントを終えてすぐ、ティダー子爵令息と婚約しています。」

「その娘、最近、他に変わったことはなかったか」

「変わったこと、でございますか」

「言動や趣味嗜好、性格、何でもいい」

そう言われても、3年目でようやく認識したような令嬢だ。

あ、でもあれがあったな。

「変わったことと言えば、成績、でしょうか」

「成績?」

「先日の学年テストで、総合8位を取りました。」

「普段は?」

「40位から50位くらいでした。前回の学年末テストが48位です」

殿下が立ち上がる気配がした。

「確認する」

「はい?」

思わず声が漏れた。

「その、モリーとやらを直接確認したい。できるだけ早急に日程を調整してくれ」

「殿下、御自らいらっしゃるのですか?」

殿下が特定の人物に興味を示すなど、今までなかった。

ましてや、自ら調査に行くなど。

「学園に行くのは、卒業して以来だな。やはり変装するとなると教師か?カフェ店員も捨てがたいが…」

なんか殿下、ウキウキしてないか?

「でもカフェ店員だと自由に動けないか…ベタだが、やはり教師が無難だな。年齢的に、教育実習でやってきた教師見習い、の設定が妥当だろう。」

何やらブツブツと呟く殿下。

俺は跪いたまま、何かしらの指示が下るまで待つ。

「よし、決めた。新米教師の線で行こう。衣装を用意するよう手配してくれ」

「はっ。」

「あぁそれと、レジーナにある温室サロンをその日予約しておいてくれ。モリーは甘いものは好きかな?」

知らんがな。

咄嗟に出た脳内ツッコミを飲み込んで言葉を紡ぐ。

「昼食に蜂蜜がけのワッフルを食べていたので、嫌いではないかと存じます」

「なら良かった。その日のお茶の準備はこちらでしよう。サロンには場所のみの使用と伝えておいてくれ」

え?てっきり温室サロンは控え室として使うのかと思ったが、モリー嬢とお茶するつもりなのか?

「報告ご苦労だった」

言外に下がれと言われ、俺は疑問符を残したまま、御前を去るより他なかった。




"早急に"の言葉通り、翌週には予定が組まれ、殿下がレジーナ学園にやってきた。

「ご案内します」

「その前にどうだ、この格好は」

殿下が期待した目でこちらを見ている。

新米教師をテーマにしたらしい衣装はわかった。

だが、顔が良すぎる。

新米教師はそんなに垢抜けてない。

俺は口を開いた。

「殿下、影012も真っ青の出来です。さすがでございます。お見事です。」

そうか、と殿下が頬を緩ませる。

主を喜ばせるのも部下としての大切な役目だ。

上機嫌の殿下と共に、俺はモリー嬢を尾行する影012の元へと急いだ。
















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