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影025
殿下到着
「あぁっ!」
捨てた!今、手紙渡されたことに気づいたのに、捨てた!
折角クレープと一緒にうまく紛れ込ませることができたというのに、モリー嬢が意図的に手紙を捨てる場面を見てしまった。
次のクレープを焼きながら、俺は頭を抱えたくなった。
モリー嬢は決めてたんだろう。
殿下からの接触は受け付けない、とか、もう関わり合いにならない、とか。
「バターレーズンクレープ1つ!お待ち!」
くそっどうする!
どうすればいい!
「シナモンシュガークレープ2つ!お待ち!」
客が切れない!
なんで俺に変わった途端、盛況になっているんだ!
「トリプルベリークレープとキャラメルクレープのナッツトッピング、お待ち!」
わらわらとクレープ屋の周りに人だかりが出来ている。
見てみて!とか、ママ、あそこでクレープ買いたい!とか声が聞こえる。
何故だ・・何故こんなに・・・人が集まるんだ・・
人々の視線の先を追い、やっと気づいた。
鷹・・お前、いつから肩にとまってたんだ・・
そして、カウンターの端の方から、071の梟がこちらを覗き込み「ホー ホー」と鳴いている
「ママ~!梟と鷹がいるよ!」
「なにこの店!バードカフェ?ウケるー」
察するに、影071が俺に梟を飛ばしたところを鷹が気づき、俺の肩に梟がとまらないように先回りしたとみた。
所在なさげな梟から手紙を受け取り、071の元へ帰ってもらう。
手紙によると、予定よりだいぶ早く"王子の会"が終わったらしい。
各国王子の見送りが終わってから、殿下が急ぎこちらへ向かう、との事だった。
よし、モリー嬢が一切手紙を受け付けないつもりなら、こっちはご本人様に登場していただこう。
早ければ、あと1時間ほどで殿下も来れるんじゃないか?
残りわずか。気合いを入れてモリー嬢の影を務めねば!
「クワトロチーズとハムのクレープ、チーズ倍量お待ち!」
・・・・・まずいぞ。この、どんどん伸びる行列を止めないと…
客引きとなっている鷹を持ち場へ帰らるのが先決だ。
「ほら、梟は帰ったから。俺の肩にはお前以外はとまらせないから。もう大丈夫だ。持ち場に戻れ。な?」
鷹は疑い深そうな目でこちらを見て、プイッと顔を逸らした。
全く飛び立つ様子がない。
くっ…
結局、鷹が持ち場に戻ったのはその10分後。
クレープ屋は大繁盛。
手刀で眠らせた店主との切り替わりのタイミングを逸して、俺はしばらくクレープ作りに忙殺された。
「いないっ!」
ようやく客をさばいて、店主にうまいこと言ってバトンタッチした頃には、夕暮れが迫っていた。
クレープトンボを回し過ぎて腱鞘炎になりかけた腕を摩り、指笛を吹く。
その合図で、鷹が移動遊園地から少し離れた場所で旋回を始めた。
いつの間にか、モリー嬢は移動遊園地から離れていたらしい。
あそこにいるということは…丘に登るつもりか。
あの丘の上からは町が一望できる。
ロニーめ…口説くつもりであの場所を選んだな!
影071が追い掛けているとは思うが、木立も多く、見失うと厄介だ。
すぐさま後を追いかけようとしたその時、馬の嘶きが聞こえて、ハッと振り返る。
ドウドウと土煙を立てながら、立派な白馬を操り現れた我が主、王太子殿下は、移動遊園地の入り口で馬から降りると、真っ直ぐに俺の方に駆けてきた。
「モリーは!?」
あぁ、やっと来てくれた。
俺は不覚にも、泣きそうになった。
「殿下、こちらです。一緒に参りましょう」
殿下。
今日の俺、全然殿下のお役に立てなかったよ。
クレープ屋の記録的売上にしか貢献できてないんだ。
モリー嬢は、殿下じゃなきゃダメなんだよ。
俺は、2人を応援してるんだ。
2人に上手くいって欲しいんだよ。
徐々に藍が深くなる空に急き立てられるように、俺と殿下は丘に向かって駆けて行った。
捨てた!今、手紙渡されたことに気づいたのに、捨てた!
折角クレープと一緒にうまく紛れ込ませることができたというのに、モリー嬢が意図的に手紙を捨てる場面を見てしまった。
次のクレープを焼きながら、俺は頭を抱えたくなった。
モリー嬢は決めてたんだろう。
殿下からの接触は受け付けない、とか、もう関わり合いにならない、とか。
「バターレーズンクレープ1つ!お待ち!」
くそっどうする!
どうすればいい!
「シナモンシュガークレープ2つ!お待ち!」
客が切れない!
なんで俺に変わった途端、盛況になっているんだ!
「トリプルベリークレープとキャラメルクレープのナッツトッピング、お待ち!」
わらわらとクレープ屋の周りに人だかりが出来ている。
見てみて!とか、ママ、あそこでクレープ買いたい!とか声が聞こえる。
何故だ・・何故こんなに・・・人が集まるんだ・・
人々の視線の先を追い、やっと気づいた。
鷹・・お前、いつから肩にとまってたんだ・・
そして、カウンターの端の方から、071の梟がこちらを覗き込み「ホー ホー」と鳴いている
「ママ~!梟と鷹がいるよ!」
「なにこの店!バードカフェ?ウケるー」
察するに、影071が俺に梟を飛ばしたところを鷹が気づき、俺の肩に梟がとまらないように先回りしたとみた。
所在なさげな梟から手紙を受け取り、071の元へ帰ってもらう。
手紙によると、予定よりだいぶ早く"王子の会"が終わったらしい。
各国王子の見送りが終わってから、殿下が急ぎこちらへ向かう、との事だった。
よし、モリー嬢が一切手紙を受け付けないつもりなら、こっちはご本人様に登場していただこう。
早ければ、あと1時間ほどで殿下も来れるんじゃないか?
残りわずか。気合いを入れてモリー嬢の影を務めねば!
「クワトロチーズとハムのクレープ、チーズ倍量お待ち!」
・・・・・まずいぞ。この、どんどん伸びる行列を止めないと…
客引きとなっている鷹を持ち場へ帰らるのが先決だ。
「ほら、梟は帰ったから。俺の肩にはお前以外はとまらせないから。もう大丈夫だ。持ち場に戻れ。な?」
鷹は疑い深そうな目でこちらを見て、プイッと顔を逸らした。
全く飛び立つ様子がない。
くっ…
結局、鷹が持ち場に戻ったのはその10分後。
クレープ屋は大繁盛。
手刀で眠らせた店主との切り替わりのタイミングを逸して、俺はしばらくクレープ作りに忙殺された。
「いないっ!」
ようやく客をさばいて、店主にうまいこと言ってバトンタッチした頃には、夕暮れが迫っていた。
クレープトンボを回し過ぎて腱鞘炎になりかけた腕を摩り、指笛を吹く。
その合図で、鷹が移動遊園地から少し離れた場所で旋回を始めた。
いつの間にか、モリー嬢は移動遊園地から離れていたらしい。
あそこにいるということは…丘に登るつもりか。
あの丘の上からは町が一望できる。
ロニーめ…口説くつもりであの場所を選んだな!
影071が追い掛けているとは思うが、木立も多く、見失うと厄介だ。
すぐさま後を追いかけようとしたその時、馬の嘶きが聞こえて、ハッと振り返る。
ドウドウと土煙を立てながら、立派な白馬を操り現れた我が主、王太子殿下は、移動遊園地の入り口で馬から降りると、真っ直ぐに俺の方に駆けてきた。
「モリーは!?」
あぁ、やっと来てくれた。
俺は不覚にも、泣きそうになった。
「殿下、こちらです。一緒に参りましょう」
殿下。
今日の俺、全然殿下のお役に立てなかったよ。
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モリー嬢は、殿下じゃなきゃダメなんだよ。
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徐々に藍が深くなる空に急き立てられるように、俺と殿下は丘に向かって駆けて行った。
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