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影025
打ち上げ
王太子殿下が側妃を娶ったという一報は、瞬く間に国内に広がり、巷はお2人の馴れ初めの噂で持ちきりだ。
シーク王子の様子を見にお忍びで学園に来ていた王太子が、偶然モリー嬢と出会い一目惚れ。
モリー嬢に婚約者がいたため叶わぬ恋、と一度は諦めたが、やむを得ぬ事情でモリー嬢の婚約が白紙となり、それを機に王太子が自らの正体とモリー嬢への想いを告げ、密かに愛を育んだ、と。
王太子と子爵令嬢のロイヤルラブストーリーは一気に広まり、国民の間では、ほぼほぼ好意的に受け取られている。
それもこれも、悪女と誹られる正妃の不人気さのせいだろう。
ティファナ妃は父である宰相のゴリ押しで正妃の座におさまったくせに、未だに閨を共にしない傲慢さと性格の悪さを併せ持つ、とんでもない悪女だ、というのが世間の認識なのだ。
あの卒業パーティから、1週間が経った。
休みとは言っても、ゆっくりしたのは1日で、その後は身体を鈍らせないために、毎日森に行ってトレーニングをして過ごしていた。
こういう時、趣味があればいいんだろうけどな。
坂道でのワーク30セットを終え、少し汗でも流すか、と近くの滝に向かっていると、鷹が俺の肩に降り立った。
あ、俺の鷹じゃん。
「よぅ、久しぶりだな」
卒業パーティと共に鷹は回収されていったから、1週間ぶりの再会だ。
肩にとまったまま、俺の首筋にグリグリ頭を押し付けてくる。
甘えてんのか?
鷹にグリグリされながら、脚の筒から紙を取り出した。
『明後日の5時から、蝶の間で打ち上げをする。配属発表もそこでするので必ず来るように。会費は気にするな。追伸 苦手なものや食べられないものがあれば、書いて鷹に持たせてくれ』
俺はにんまり笑って、早速返信を書いた。
「セロリみたいな香りの強い野菜はちょっと苦手です、楽しみにしてます、と」
鷹が相変わらずグリグリしてきて邪魔だったので、仕方なく頭を撫でてやると、頭を下げたままジッとしている。
こいつ、寂しかったんだな…
伝書筒に手紙を入れても鷹は動かなかったが、しばらく撫でていると気が済んだのか、翼を広げて飛びたっていった。
「それではモリーの卒業と皆の働きに感謝して、乾杯」
「「「ご結婚おめでとうございます!」」」
唱和して杯を煽る。
ここ、王城内の蝶の間で、楽しみにしていた打ち上げが始まった。
俺と012、071、そしてやたらツヤツヤした王太子殿下の4人で卓を囲んでいる。
目の前には高級そうなご馳走の数々。
彩りも完璧だ。
「うわー!めっちゃ美味しそう!」
「だな!これ、本当にご馳走になっちゃっていいんですか?」
「シェフに言って、適当に作らせた」
いやー、この料理を前にすると、場違い感すごいな。
俺は買ってきた包みを背中側に隠した。
「あら?025の持ってきたこれは?」
隣に座っていた071が、隠した包みを取り上げる。
おい!何すんだよ!
「あ!マルチョーの袋じゃん!025、並んだの?」
「マルチョー?」
だよな。殿下は知らないだろうな。
マルチョーの串焼きは庶民に大人気で、特に人気の、この厚切り牛タンの串焼きと白レバーの串焼きは開店と同時に売り切れる。
開店1時間前から並んで買ってきたけど、普通に考えれば殿下がこんな庶民の食べ物なんて召し上がるわけないし、俺、今にして思えば、なにいい歳してはしゃいでんだよって、なんか恥ずかしい…
「いや、あの、俺のおすすめの串焼きなんすけど、ちょっと殿下に出すには庶民的すぎるなって反省してたとこで…」
「食べたい。」
「え?」
殿下は鈴を鳴らして皿を持って来させた。
071が、串を塩とタレに分けて並べる。
「どれから食べるのがおすすめなんだ?」
「ええと…牛タンと白レバーが人気で、俺はいつも白レバーのタレから…」
「タレだな?」
「私もタレー!」
「じゃ私もタレにするわ」
俺は何だか緊張して、串焼きを頬張る殿下を見つめてしまう。
「これは…なんという美味さだ」
あっという間に食べ終え、2本目に手を伸ばす殿下。
あれ?おかしいな。
俺、もう酔っ払ってんのか?
嬉し過ぎて泣きそう。
「塩もヤバいー!とろける!」
「ここの串焼きはハズレがないわね」
「私にも塩をくれ」
俺の買ってきた串焼きは次々と皆の胃袋におさまっていった。
シーク王子の様子を見にお忍びで学園に来ていた王太子が、偶然モリー嬢と出会い一目惚れ。
モリー嬢に婚約者がいたため叶わぬ恋、と一度は諦めたが、やむを得ぬ事情でモリー嬢の婚約が白紙となり、それを機に王太子が自らの正体とモリー嬢への想いを告げ、密かに愛を育んだ、と。
王太子と子爵令嬢のロイヤルラブストーリーは一気に広まり、国民の間では、ほぼほぼ好意的に受け取られている。
それもこれも、悪女と誹られる正妃の不人気さのせいだろう。
ティファナ妃は父である宰相のゴリ押しで正妃の座におさまったくせに、未だに閨を共にしない傲慢さと性格の悪さを併せ持つ、とんでもない悪女だ、というのが世間の認識なのだ。
あの卒業パーティから、1週間が経った。
休みとは言っても、ゆっくりしたのは1日で、その後は身体を鈍らせないために、毎日森に行ってトレーニングをして過ごしていた。
こういう時、趣味があればいいんだろうけどな。
坂道でのワーク30セットを終え、少し汗でも流すか、と近くの滝に向かっていると、鷹が俺の肩に降り立った。
あ、俺の鷹じゃん。
「よぅ、久しぶりだな」
卒業パーティと共に鷹は回収されていったから、1週間ぶりの再会だ。
肩にとまったまま、俺の首筋にグリグリ頭を押し付けてくる。
甘えてんのか?
鷹にグリグリされながら、脚の筒から紙を取り出した。
『明後日の5時から、蝶の間で打ち上げをする。配属発表もそこでするので必ず来るように。会費は気にするな。追伸 苦手なものや食べられないものがあれば、書いて鷹に持たせてくれ』
俺はにんまり笑って、早速返信を書いた。
「セロリみたいな香りの強い野菜はちょっと苦手です、楽しみにしてます、と」
鷹が相変わらずグリグリしてきて邪魔だったので、仕方なく頭を撫でてやると、頭を下げたままジッとしている。
こいつ、寂しかったんだな…
伝書筒に手紙を入れても鷹は動かなかったが、しばらく撫でていると気が済んだのか、翼を広げて飛びたっていった。
「それではモリーの卒業と皆の働きに感謝して、乾杯」
「「「ご結婚おめでとうございます!」」」
唱和して杯を煽る。
ここ、王城内の蝶の間で、楽しみにしていた打ち上げが始まった。
俺と012、071、そしてやたらツヤツヤした王太子殿下の4人で卓を囲んでいる。
目の前には高級そうなご馳走の数々。
彩りも完璧だ。
「うわー!めっちゃ美味しそう!」
「だな!これ、本当にご馳走になっちゃっていいんですか?」
「シェフに言って、適当に作らせた」
いやー、この料理を前にすると、場違い感すごいな。
俺は買ってきた包みを背中側に隠した。
「あら?025の持ってきたこれは?」
隣に座っていた071が、隠した包みを取り上げる。
おい!何すんだよ!
「あ!マルチョーの袋じゃん!025、並んだの?」
「マルチョー?」
だよな。殿下は知らないだろうな。
マルチョーの串焼きは庶民に大人気で、特に人気の、この厚切り牛タンの串焼きと白レバーの串焼きは開店と同時に売り切れる。
開店1時間前から並んで買ってきたけど、普通に考えれば殿下がこんな庶民の食べ物なんて召し上がるわけないし、俺、今にして思えば、なにいい歳してはしゃいでんだよって、なんか恥ずかしい…
「いや、あの、俺のおすすめの串焼きなんすけど、ちょっと殿下に出すには庶民的すぎるなって反省してたとこで…」
「食べたい。」
「え?」
殿下は鈴を鳴らして皿を持って来させた。
071が、串を塩とタレに分けて並べる。
「どれから食べるのがおすすめなんだ?」
「ええと…牛タンと白レバーが人気で、俺はいつも白レバーのタレから…」
「タレだな?」
「私もタレー!」
「じゃ私もタレにするわ」
俺は何だか緊張して、串焼きを頬張る殿下を見つめてしまう。
「これは…なんという美味さだ」
あっという間に食べ終え、2本目に手を伸ばす殿下。
あれ?おかしいな。
俺、もう酔っ払ってんのか?
嬉し過ぎて泣きそう。
「塩もヤバいー!とろける!」
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