白銀の王

春乃來壱

文字の大きさ
10 / 20

10.みんなでお昼寝。

しおりを挟む




傲慢スキル騒動がむいの可愛さで解決した後、碧はソファーに座り直しフィーが用意してくれた紅茶を飲もうと手を伸ばした時、そういえばまだデザートを出してなかったことを思い出した。

せっかくフィーが紅茶をいれてくれたので今出してしまおう、と“傲慢スキル”を使用する。

「創造【ケーキ】」

机の上に碧が想像したままのお皿にのったケーキがでてくる。ちゃんとフォークも一緒に出てきていた。

輝璃の前にはモンブラン、雪の前にはフルーツタルトと2人の好きな物を出した。フィーとむいはわからなかったので碧と同じショートケーキを出した。

輝璃と雪は少し驚いてから嬉しそうに笑っていたがフィーとむいはケーキを初めて見る様できょとんとしていた。

「…碧、食べてもいい?」

「もう食べれないと思ってたから嬉しいです!」

輝璃に食べていいよと伝え、嬉しそうにこちらを見てくる雪の頭を撫でながら笑い返す。

2人が食べ始めたのを見て心做しかソワソワし始めたフィーとむいにも食べるように勧める。
フィーとむいが美味しそうに食べるのを見て自分もケーキを食べ始めた。

食べてる途中に輝璃から、碧が国の金を盗んだ者として国に既に広まっているかもしれない事、藍染達はそれを信じている事などを聞かされた。

「…ごめんね。藍染達を説得するのは時間をかければ出来たかもしれない。でも俺は、」

下を向きながら謝る輝璃に、きっと自分の為に怒ってくれたんだろうなぁ、と想像ができて少し頬が緩む。

「輝璃、俺ね。もういいんだ。確かに藍染達にそう思われてるのは少し悲しいけど…龍斗と奈那さんに救われて。フィーとむいにも出会えて。俺のことを信じてくれる輝璃と雪がいる。こんな幸せなことってないと思うんだよね」

どこか吹っ切れたように微笑む親友を見て、輝璃は少しだけ泣きそうになった。

人に嫌われることを恐がって、時折何処か寂しそうに笑っていた碧が本当に幸せそうに笑っているのだ。立ち上がり勢いよく抱きしめる。
他の3人も嬉しかったのか碧に抱きつき始めた。

「わ…?!ちょ、重…」

ソファーに座ったまま抱きしめられているので身動きが取れない。それに気づいた輝璃が体を離しながら碧の頭を撫でる。
フィーと雪も碧の頭を撫でてから立ち上がり、むいは碧の膝の上に座って上機嫌に足をプラプラさせている。

「…それで、これからどうするんすか?」

フィーにそう尋ねられ、碧は今の自分がしてみたいことを口にする。

「俺は輝璃達とも会えたしこの世界を旅してみたい、かな。せっかく違う世界に来たんだ。いろんなものを見て見たい」

「私達はみーくんと一緒ならどこへでも。ね、お兄ちゃん」

「…碧と雪が、したい事をやりに行こう」

雪と輝璃は笑って賛同してくれたが、フィーとむいはずっと災厄の森ここに住んでいたのだ。思い入れだってあるだろう。
一緒に行きたいと思うのは碧のわがままでしかなくて、それでもお別れは嫌だ、と膝に座るむいをぎゅっと抱きしめた。

腕の中のむいがもぞもぞと動きフィーの方に顔を向ける。

「ボールも持って行っていいー?」

「それはいいっすけど使わない時はちゃんと“ボックス”にしまうんすよ?」

2人があまりにも自然について行く前提で話していたのでポカンとしてしまう。

「……え?ついてきて、くれるの?」

「…?もちろんっすよ?僕らも別にここに留まらなきゃいけないわけじゃないっすし、ミドリくん達と一緒に旅もしてみたいっす」

「いっぱい遊ぼうね!」

2人が着いてきてくれると聞いて碧は嬉しくて顔が綻ぶ。輝璃が“よかったね”とまた頭を撫でてくる。それに笑って応えながら、5人でこれからの話をする。


「ここから行くとしたらベアルト王国か獣人国っすかね?」

ベアルト王国は帝国の隣にある国で行商が盛んな国らしく、王都には色々な国から商人達が来て珍しい商品や出し物をすることが多いので観光客も多いんだそうだ。

獣人国はその名のまま、国民のほとんどが獣人や亜人の国だ。その中には元奴隷だった人達もいるそうだ。


帝国は数百年前から人間至上主義を謳っていて、獣人や亜人は人間のなり損ない、欠陥品として差別の対象だった。

人としては扱われず、使えなくなったらゴミのように捨てられる。そんな行為が繰り返されていた中、何十年か前に1人の獣人の青年が立ち上がり奴隷を解放していった。
怒り狂った人間に攻撃され血を流しながらも青年は必死に抵抗し獣人なかまを助け続けた。

その助けられた者達が青年を中心にして抵抗軍レジスタンスとしてまた他の奴隷を助けていき、獣人達が誰にも支配されないで済むような理想国家を作り上げ今の獣人国となったらしい。

「はい!はい!私、獣人国に行きたいです!」

動物や可愛いものが大好きな雪が期待に目を輝かせる。

「獣人国かぁ…俺も行ってみたいな」

「…俺も」

「獣人国っすか、僕らも行くのは初めてなんで楽しみっす」

「むいもたのしみ!」

「これで行先は決まったね。後はいつ出るか決めた方がいいよね」

「特にやらなきゃ行けないこともないっすし、なんなら明日とかでいいんじゃないっすか?」

なんて事ないようにさらりと言ってのけるフィーに碧は動揺する。

「え、いいの?だってこの家」

「…いいんす。早く出ないとなんだか変に名残惜しくなっちゃいそうっすから」

寂しさを隠すように笑うフィーを見て碧が言葉に詰まっていると、むいが碧の袖をひく。

「ん?どうしたの?」

「ミドリのスキルでおうちもっていけないの?」

「…あ、そっか。みーくんの【傲慢スキル】で家を運べるスキルが新しく作れれば」

むいと雪の言葉を聞いてすぐに作れるか試し始めた。

「【スキル作成】」

ーー【スキルの内容を提示して下さい】ーー

「…“大きな物を運べるスキル”」

ーー【既存のスキルに該当するものがあります】ーー
       【転送・運び屋・収納】


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


転送︰自身が指定した場所にモノを瞬間的に送る。
           消費する魔力は質量と距離に比例する。

運び屋︰魔法袋の中に荷物を入れ持ち運ぶことが出来る。
              入る量は使用者の魔力量に依存する。
              魔法袋の重さはいくら入れても重くならない。

収納︰手で触れた物を亜空間“狭間”に収納し持ち運べる。
           入れる物の質量が多いほど魔力消費が多い。
           魔力は収納する際と取り出す際に使用する。
           “狭間”に収納したものは出すまで
           収納した時のまま保存される。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ーー【既存スキルを習得しますか】
       【  YES  /  NO  】



どうやら作りたいスキルに既存の該当するスキルがある時はそのスキルを習得、該当するものがない時は新しく作ることが出来る仕組みらしい。
碧は「YES」を選択した。

ーー【習得するスキルを選択して下さい】
       【転送・運び屋・収納】

「スキル選択【収納】」

ーー【収納スキルを習得しました】

その文字が出てきた途端体からごっそり何かが抜ける感覚がして体が重くなるのを感じながら碧はステータスを開く。

「“ステータス”」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
Lv.24
名前:小鳥遊 碧
性別:男
年齢:18歳
種族:人類種
体力:15700/15700
魔力:8500/12500
攻撃力:6400
防御力:4850
命中率:Lv.5
回避率:Lv.1
幸運力:Lv.Max
状態:ー

役職:怪盗 Lv.Max
【⠀効果 】あらゆるモノを盗むことが出来る。

〖 ライト 〗〖 鎌鼬 〗〖 風詠 〗〖 結界 〗〖 ファイヤ 〗〖 ウォーター 〗〖 氷柱 〗〖 氷翼 〗〖 水破 〗〖 炎舞 〗〖 縛 〗〖 ボックス 〗〖 転移 〗〖 浄化 〗〖 ヒール 〗〖 捕縛 〗〖 飛行 〗〖 身体強化 〗〖 煉獄 〗〖 神楽 〗〖 領域 〗〖 影渡 〗〖 結界 〗〖 疾風 〗〖 星詠 〗〖 火弾 〗〖 竜巻 〗〖 黒雷 〗〖 雷神 〗〖 鑑定 〗〖 天撃 〗〖 念話 〗〖 硫酸 〗〖 跳躍 〗〖 糸操 〗〖 収納 〗


【大罪スキル・傲慢】
【 効果 】
無から有を作り出す。モノとモノを掛け合わせて作ることも可。
ただし、作る際には魔力を消費する。消費する魔力は作るものに比例する。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ちゃんと新しく【収納】が増えていた。ただ、今のスキル作成だけで魔力が4000ももっていかれた。これからは既存のスキルは緊急時以外はできるだけ作らないようにしよう。

碧の顔色が少し悪くなったことで4人が心配そうにこちらを見つめているのに気づき、問題ないことを伝える。

「家ごと運べそうなスキルはとれたよ。でも作る時に魔力を結構消費しちゃったから試すのは夜になってからでもいいかな?」

「もちろんっすよ!無理はしないで欲しいっす」

「ミドリ、おひるねしよ!そしたらきっとげんきになるよ!」

「ふふっ…そうだね、じゃあみんなで寝ようか?」

「…碧、寝るって、平気なの?」

フィーとむいは碧が寝れなかった理由を知ったのでみんなで寝ようと言ってくれてるが、輝璃と雪はそれを知らないので不安そうな顔をしていた。

改めて理由を伝えるのもなんだか気恥ずかしくて顔を赤くしたまま黙っていると気を利かせてくれたフィーが輝璃と雪に理由を話してくれた。2人は驚いた顔をしていたがすぐに笑みを浮かべる。

「…そういうことなら、みんなで寝よっか」

「この人数だったらここが1番寝やすいっすかね」

輝璃がそう言うとフィーが寝るのに邪魔になるので机を“ボックス”にしまって、ブランケットを出してくれた。

2人掛けのソファーに雪とむいが、床では碧を真ん中にして輝璃とフィーの3人で寝っ転がって寝ることになった。

他愛もない話をしているとだんだんウトウトしてきて、碧は温かい気持ちのまま眠りについた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...