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9.便利どころの話じゃない。
しおりを挟む碧に抱きついたまま話をしている双子を見て、フィーとむいが驚きを隠せないままこちらに歩いてくる。
「…この人達が話してた人っすか?」
「ミドリのおともだちー?」
「うん。この2人が話してた輝璃と雪だよ」
「…碧。この人たちは?」
「えっと…話すと長くなるから家に行こうか…2人とも、いいかな?」
「もちろんっす。ミドリくんのお友達なら大歓迎っすよ」
「むいもいいよ!」
2人が笑って了承してくれたので再びフィーにみんなを家の前まで“転移”してもらう。
フィーにお礼を伝えてから、初めての転移に驚き固まっている輝璃と雪に、碧が両手を出すと2人とも手を取ってくれたのでそのまま手を引いて家の中へ入る。
話をしやすいようにソファーに座るよう進めようとしたが、少し大きめの2人掛けと1人掛けのソファーが1つずつしかなかったので【傲慢】で新しく2人掛けのソファーを創る。
また2人が驚いているがとりあえずソファーに座らせる。
テーブルを挟んで輝璃達の正面にフィー達が座る。碧は余った1人掛けのソファーに座った。
「えっと、こっちの2人がフィーとむい。俺の事を助けてくれた恩人なんだ。」
「…恩人?」
「うん」
それから碧は一昨日の夜に輝璃達と別れてからフィー達に会うまでの経緯を話す。
話すにつれて雪の顔がどんどん青くなっていくのを見たら“やっぱり話さない方が良かったかな“と少し後悔した。
沈黙が気まずくて視線を彷徨わせていたら輝璃の表情がみえて“あ、これはまずい”と思った。
輝璃が本気でキレている。普段ぽやっとしていて温厚な輝璃だが怒ると本当に怖いのだ。
前に輝璃と間違えられた雪が喧嘩に巻き込まれた時も、キレた輝璃に相手が泣き出していた事もあった。中学生相手に大の大人が、だ。
このままだとまずいと思った碧はなんとか気をそらそうと輝璃に話しかける。
「あ、あのさ輝璃…?ここに来た時は動物の姿だったけどどうやったの?」
「…言霊使った」
質問には答えてくれるが怒っているからかいつもより声のトーンが低い。
どうすれば…と碧が焦っていると不意に2人が無言で立ち上がるのを見て恐る恐る問いかける。
「え、えっと輝璃さん、雪さん…?急に立ち上がってどうしたの…?」
「…少し、出かけてくる」
「私も、少しだけ出かけてきますね」
“すぐ帰ってくるから”と、2人が笑って答えてくれるがその笑顔が怖い。目が全く笑ってない。これから向かう場所が容易に想像できてしまい、碧は慌てて立ち上がりドアへ向かおうとしてる2人を止める。
「待って2人共落ち着いて…!フィー達のおかげで怪我も治ってるし俺なら大丈夫だから!」
ほら!と腕をブンブン振ったりして、もう痛い所はないとアピールする。
2人は納得いかなそうな顔をしてたが碧が必死に説得すると渋々承諾してくれた。ホッと胸をなでおろしていると輝璃がフィー達に頭を下げた。
「…碧を助けてくれて、本当にありがとう」
「はいっす!」
「どういたしましてー!」
2人がそれに笑って応えた事で和やかな雰囲気が流れる。
それからお互いに自己紹介をしたり、フィーとむいの狼の姿を見て雪が物凄く興奮してもふもふを堪能していた。輝璃もモフモフの毛並みを堪能できて嬉しそうにしていた。
他にも碧の新しく得た【傲慢】の事を話しステータスを見せると2人とも驚いていた。
「…だから、急にソファーがでてきたんだね」
「じゃあこのいっぱいあるスキルも創ったんですか?…便利ですね…」
雪が何気なく発した言葉で碧とフィーの動きがピタリと止まる。そのままギギギギ、とぎこちなく顔を見合わせる。
「…ミドリくん。まさか、出来たりしないっすよね?」
「さすがにそれは…」
それが出来たら便利どころの話じゃない、と思っていると目の前に【創造可能】の文字が出てきた。その文字に碧が頬を引き攣らせる。
「…できる、らしい」
ふふふ…と遠い目をしながら伝える。便利だとは思ってたがそんな言葉で収まる代物ではなかったらしい。
「スキルが作れるって…もうそれ魔王すら勝てないっすよ…」
「うん…俺もそんなにやばいスキルだとは思ってなかったよ…」
「私何か変なこと言っちゃいました…?」
「…大丈夫だよ雪。たぶん今碧達は驚きすぎてちょっと現実逃避してるだけだと思う」
「それって大丈夫なのお兄ちゃん…?!」
「ミドリー。それいいスキルだねぇ」
ニコニコしながら隣に来たむいを見て碧はその頭を撫でることで心を落ち着かせた。他の3人も碧の後に続きむいの頭を撫でていく。むいは嬉しそうに目を細めていた。
「…そうだね。別に悪いものじゃないしね」
ーー頷きながら碧とフィーは“この事は深く考えないようにしよう”と思った。
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